自然も時々間違える
あらすじ
「フロー」と呼ばれる不思議な現象が普通に起き、当たり前の出来事として受け入れられている世界。
会社員 近藤智万は運悪く「フロー」に遭ってしまったことで、望まぬ若返りをしてしまう。
中身は経験豊富な大人とはいえ、見た目は子供。職場の人間関係が上手くいかなくなり、不本意の退職をしてしまう。
現状をなんとかしたいと考えていた彼女に、事故に遭った際に知り合った市役所員・辺見は「フロー」の起こした現象を専門に対処する業者「広田フロー」のアルバイトを紹介する。
概要
蟲師、水域を手がけた漫画家・漆原友紀の最新作。2018年6月号から2021年2月号まで月刊アフタヌーンにて連載された。
フローと呼ばれる超常的な現象が日常的に起こる世界で、それを処理する専門の業者「広田フロー株式会社」の面々の日常が描かれる。
登場人物
近藤智万
少しお節介な母親と共に暮らす三十五歳の女性。物語の主役の一人。眼鏡をかけている。
元々は会社員だったが、フローに遭ってしまったことで、見た目が十二歳にまで若返ってしまう。
その後暫くは会社員生活を続けるものの、見た目が子供になってしまったことで、仕事に支障が出てきてしまい退職。
しかし気真面目な性格であるため何もしないことに耐えられず、フローの一件で世話になった市役所員の辺見の紹介で、フロー業者「広田フロー」のアルバイトに応募する。
呑気な性格の雇い主 ヒロタを最初は諫めていたものの、徐々に彼のペースに巻き込まれていく。
ヒロタ
フローを専門に扱う「広田フロー」を営む男性。物語の主役の一人。智万のことをちまちゃんと呼ぶ。ラーメンが好物。
よく言えばおおらか、悪く言えばチャランポランな性格。いつも笑っているため、初対面の人にはなかなか信用されない。
しかしフロー業者としては確かな腕を持っている。特にフローがいつ終わるのか、その「期限」についてはかなり正確な予測を導き出すことができる。
予測の際には、その場所がどんな場所なのか、土地の歴史も込みで予測するものの、最終的にはある種の勘のようなものが重要らしく、ヒロタはこの点に関しては天賦の才を持っているとのこと。
たいていの不可思議な現象には慣れているくせに、幽霊の類がすこぶる苦手。橋の上で幽霊らしきものを見てしまった際には、案件にもかかわらず手を付けられないほど怯えていた。
物語の終盤に一時行方不明になるものの、しばらくして戻ってくる。しかしどうもいつもと様子が違うようで……。
しゃちょう
ヒロタの祖父の代から「広田フロー」に住み着いているオスの白猫。去勢済み
違う名前で呼ばれながら、方々で餌を貰っており、そのせいかかなり貫禄のある体つきをしている。
これでも歴とした「広田フロー」の一員であり、仕事のたびにヒロタたちと共に現場へ赴く。
これは、猫はフローに対して敏感に反応を示すためであり、実際作中ではフローの規模が大きい場所に来ると鞄を引っ掻く、壁に擦り寄るなどの行動をとる。
ヒロタの予測にはしゃちょうの反応も重要な要素であり、「唯一無二の相棒」と呼ぶほどに入れ込んでいる。そのため一時しゃちょうが行方をくらました際には、普段の昼行灯ぶりはどこに行ったのか、大いに慌てふためいた。
主人通しの仲が影響したのかは分からないものの、ヒロタのライバル的な人物 静河が飼っている黒王丸とは仲が悪く、会うたびに威嚇しあっている。
静河
長い歴史を持つ「浮動神社」の神主を務める女性。物語に度々登場する準レギュラー。
普段は神主らしく穏やかでクールな風を装っているが、本性は乱暴かつ意地悪である。
ヒロタとは旧知の仲らしく、フロー業者と浮動神社の関係も相まって、会う度に嫌味を交わす間柄でもある。
ただ、フローを解決するために共に協力し合うことは一度や二度ではないため、互いに本心からは嫌い合っていないらしい。「喧嘩するほど仲が良い」という諺の通りの関係である。
黒王丸という若い黒猫を飼っており、溺愛している。こちらは主人たちとは違い、「広田フロー」のしゃちょうとは会うたびに威嚇し合うほどに折り合いが悪い。
ヒロタに関するとある秘密を知っている。
工藤
警察官。ヒロタの先輩であり、良き友人でもある。物語に度々登場する準レギュラー。
一人息子を持つバツイチの父親。床屋を営む母親と同居しているものの、それでもキツいようである。
子育てと仕事の両立に悩む現代人らしい人物。
辺見
市の環境保全課フロー班に勤める女性。
何度も一緒に仕事をしてきたのか、ヒロタとは顔馴染みである。
フローの被害に遭った智万に「広田フロー」のアルバイトを勧めた人物でもある。
用語
「フロー」
浮動現象とも。空間の浮動化のことであり、それによって起こされる現象の総称。
この世界では全ての物質は、ごく細かに絶えず不安定に動いているため、時にバランスを崩して形を変えることがある。
小学生の理科の教科書に載っている程当たり前なものであり、役所にはフローに対応する専門の部署も存在する。
発生する際には、その前触れとして物や空間に靄の様な物がかかるという特徴がある。
静河曰く「人智の及ばぬ深遠なもの」の通り、フローに起因する奇妙な出来事が、いつも世界の何処かで起きている。
発生を防ぐ手段はまずない。しかしいつ収束するかはある程度の見通しは立つらしく、そういったことを生業とする人々がヒロタたちフロー業者である。
悩みや願望などといった「生きている者」の想念に引き寄せられることがあり、これらは「人因性」と呼ばれ、ヒロタたちが処理するフローも大半がこれである。
「人因性」のフローは起点となった人物の迷いを晴らしてやれば、解決はすることができるが、人が絡まないフローもあり、これに関しては自然現象同様人間がどうこうできるものではない模様。
フロー業者
「広田フロー」のように、フローによって引き起こされる現象の処理を専門に行う業者のこと。
基本自営業であるが、役所に委託されて案件を引き受けることもある。
多分に偏見が含まれているものの「予測を出すだけで何もしない」という批判の様に、多少なりとも胡散臭い連中として見られているらしく、特に高齢者の中にはフロー業者よりも長い歴史と実績がある「浮動神社」に信頼を寄せている者もいる。
「浮動神社」
鎮守の森に抱かれた八百年の長い歴史を持つ神社。静河が神主を務める。
浮動大明神なる神を祀っている。この神の名前は浮動現象の「浮動」から来ており、名前から読み取れるように彼らもフローについて造詣が深い。
同じ領域を扱うフロー業者とは商売敵の様な関係にあり、仲はあまり良くない。
作中世界では十二年に一度、大きな浮動現象が起こるとされ、その被害の減少を祈願する特別な祭り「浮動大祭」を執り行っている。
立地的にフローが発生しやすい場所にあるらしく、他では見られない、珍しい現象を引き起こすフローが発生することがある。