概要
アイヌ民族の伝承に登場する妖怪で、名前の意味は「湖の苔の心臓」である。
昔々、阿寒湖に棲むベカンベ(菱)たちが湖のカムイに仲間を増やしたいと相談したところ、「湖が見苦しくなり、アイヌが採りに来て騒がしくなるから駄目だ」と却下されたばかりか塘路湖へ追いだされてしまった。
理不尽であると怒ったベカンベたちが湖の中に、周囲の草をちぎって丸めたものを投げ入れたことで生まれたのがトラサンペで、アイヌは食料や生活用品にならないのに存在感だけはあるこの草を「湖の化け物」と呼んだ。
その後しばらくして、この地に訪れた和人に鞠のような藻「まりも」と呼ばれるようになり、さらに「恋マリモ伝説」で生まれたと創作され、天然記念物として崇められるようになったのは後の話である。
似たものに「湿地の苔の心臓」という意味の名を持つ、ニタッラサンペという妖怪がいる。