※単行本未読の方はネタバレ注意
概要
志村菜奈の実子であり、志村転弧(死柄木弔)の父親。劇中では既に故人。
志村転弧が「死柄木弔」へと変貌する直接の原因を作った人物。
幼少期に父を亡くし、また自分の家族がオール・フォー・ワンに危害が加えられることを危惧した菜奈により里子に出されたため、幼くして両親と別れる事となる。しかし、この菜奈による母の愛ゆえの決断は、のちの成長した彼に深い心の傷を残すこととなった。
その後は若くして実業家として成功し、妻と2人の子供、1匹の愛犬に加え妻の両親を自分の家に招いて暮らしていたが、自らの過去からヒーローに対しては「他人の幸せのために自らの家族を不幸にする」(人間が一番守らねばならない人間を犠牲にして赤の他人を守っている)と嫌っており「ヒーローの話はしてはいけない」というルールを家に設けていた。
母・菜奈は里子に出す前に息子に詳細を綴った手紙を託していたが、当の弧太朗は母の真意を理解しつつも、それを受け入れる事ができない歪んだ大人へと成長してしまう。母の愛を理解する半面で、自らの寂しさによる苦しみを癒す術は得る事ができずにいた。
成長の中で、その二律背反は如何ともしがたく、常に彼を苛み続けていた。成長する中で彼は母の愛情溢れていた手紙に対して「せめて何も言わずに憎ませてくれた方が楽だった」と人知れず慟哭と独白をし続けていた。
結果無感情と苛烈さが分かれた極端な性格となり、ヒーローごっこといった子供の遊びすら許さず、子供たちに菜奈の写真を知られた時は「あれはお祖母ちゃんじゃない」と言い放ったり、特にヒーローになりたいという夢を持っていた幼い転弧に対して妻の制止を聞かず暴力を振るうまでに至ってしまう。
息子の個性が発現した後、変わり果てた家族の惨状を目の当たりにした彼は、母の言葉を思い出し、自らの過ちに気付くのだが、息子を恐れたあまり防衛反応から偶々手にした枝切り鋏で息子を殴ってしまい、激昂した彼から蓄積した自分への憎悪をぶつけられ、最期には実の息子の手によって非業の死を遂げた。
その後、身寄りを失った転弧はオール・フォー・ワンの元へと引き取られ、悪の道を突き進むこととなる。
作中では「志村菜奈の息子」であること以外に彼の素性を示すものは一切描かれておらず、彼が母との別れから家庭を持つまでにどのような人達と関わり、何を想って家族と接していたのかは、ほとんど明らかになっていない。
そんな彼の真意については、単行本幕間の人物紹介にてその一端を窺い知ることができる。
作中には彼が家族に対して笑顔を見せたり、愛情を表現するようなシーンはほとんど無かったものの、そのプロフィールの中には彼の「好きなもの」として彼の妻と子供達、義理の両親、そして志村菜奈の名が綴られていた。
志村家の消滅に至るまでの一連の流れで重要なのは、家族の死が引き起こされるまでの直接の経緯に、オール・フォー・ワンを含めた敵の存在が一切関与していないということだろう。
(この事件の裏でAFOらが手を引いていた可能性は排除できないが)このような不幸な事件は、超人社会においては決して起こり得ないことではなく、「次世代のオール・フォー・ワン」はこの社会のあらゆる場所で誕生する可能性があることが示唆されている。
死柄木弔という怪物を生み出したのは、ある意味ではヒーロー社会の抱える歪みそのものだったのかもしれない。
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里親制度:諸事情により家族と生活することができなくなった子供を公的な認可を受けた一般家庭で預かり、養育する制度。子供を施設内ではなく家庭で養育する点で児童擁護施設と異なり、また育ての親と法律上の親子関係を結ばないという点で養子縁組とも異なる。欧米では広く普及した制度で、日本においてもかねてより注目されているものの、養育環境の管理の難しさや文化的な要因等があり、現状は一部の運用に留まっている。