「このレッドノアをネモの墓標にしてくれるわ」
概要
アダムスキー型円形全翼宇宙船。基部に3つの突起がある。
全体が赤く塗装されており、本艦の名もそれにちなむ。
アトランティスの象徴ともいえる目玉らしい意匠が施されており、シンプルなデザインとなっている。
船内は、作中に登場しただけでも人工知能の部屋、玉座の間、宇宙港、指令室、人間の博物館、バベルの塔の基部などの様々な区画に分かれている。
地球より277.5光年離れたM78星雲から飛来した宇宙人、アトラス人の3つの宇宙船で衛星都市のひとつ。
直径12kmもありエクセリヲン(Nノーチラス号)と同じオルフェウス型縮退炉を主機関とし、壁面に設置されたレーザー砲、照射中も射角を自由に変えて敵を追跡するアクティブレーザー、光線・物質の両方を弾く1億ボルトの電磁バリアなどの攻撃・防御装備に加え内部に宇宙船の港湾を備えた宇宙母艦になっているなど桁違いの重武装を誇る。
ネオアトランティスの首領、ガーゴイルによって再稼働し、Nノーチラス号と戦うも宇宙で爆散する。
作中の活躍
アトランティス人の祖先であるアトラス人の乗って来た3つの宇宙船の一つ。
(アトランティスとは、”アトラスの娘たち”という意味である。)
アフリカに着陸し、のちにナディアの故郷、タルテソス王国となったブルーノアとは、同型船だが大西洋上に沈降し、アトランティス大陸となった超大型船アトランティスの随伴護衛船でアトランティスは、この二隻より遥かに大きい。
ハッキリしたことは分からないものの、アトランティスが海底に沈没した後も大西洋上を遊弋していた。
本艦をガーゴイルは、「神聖大要塞」と呼んでたり、3つの宇宙船の大きさなどから推察するにレッドノアは、アトランティスの護衛艦としての役割を与えられていたと考えられ、アトランティスの周囲を飛び回っていたらしい。
長年の間に塵が積って小島のようになり、木々や動物まで生息していたのだが、この無人島に流れ着いたジャン、ナディア、マリー、キングがしばらく生活していたのが通称『島編』である。
この『島編』においてレッドノアの人工知能は、ナディアを船内に迎え入れ、アトランティスに彼女を送り届けると告げると猛スピードで大西洋に向けて巡航した。
しかしナディアが「あそこはもう誰も住んでない」といってレッドノアからジャンと共に降りてしまう。
ところがレッドノアがナディアを迎え入れたことで機能が再稼働し、それをキャッチしたガーゴイルは、宿願のレッドノア復活に乗り出す。
『島編』に次いで『アフリカ編』が始まるとナディアは、ようやく生まれ故郷のタルテソス王国に辿り着く。
そこはかつてガーゴイルの野望が始まり、それを阻止すべくバベルの塔を破壊したネモによって一夜で住民が焼き尽くされた死の大地であった。
この地に眠っているブルーノアもやはりナディアを迎え入れたがナディアは、恐ろしい兵器を満載した船が自分を求めていることに恐怖を訴えた。
「やはりあのがらくたの上に沈降していたか」
「がらくたじゃないわ。あそこはお墓よ。神聖な場所だわ」
「墓など生きている者には何の役にも立たん。つまりがらくただよ」
―ガーゴイルとナディアの会話
『アフリカ編』を経て再びガーゴイルに捕えられたナディアは、ブルーウォーターを奪われ、レッドノアの再浮上に協力させられる。
またネオアトランティスの最高指導者(実際は、ガーゴイルの操り人形)ネオ皇帝が自身の兄であることを知らされた。
レッドノアは、アトランティス王家の末裔であり、賢者の石トリスメギストス=ブルーウォーターの継承者の超能力によってコントロールされており、ネオ皇帝は、ネモとナディアから奪ったブルーウォーターを一つに結合させ、その力でレッドノアを復活させた。
「さあ、お連れしましょう。もうひとつの”ノアの箱舟”へ」
―ナディアに対するガーゴイルの台詞
内部には、人類に至るまでのアトラス人の下僕となる生物を作った生産工場があり、その実験作たちが保管されていて(ガーゴイル曰く「人間の博物館」)非常に気味が悪い。
なおこの場面で「最初の人間アダムだよ」の台詞が登場する。これはのちに『新世紀エヴァンゲリオン』でも出てくるフレーズなのだが、このレッドノアに格納されていた実験作が後にエヴァの使徒となったという没設定がある。
人間が完成したことで創造主(神=アトラス人)から用済みとなった使徒たちがリリスとの融合によって完全な生命体になろうとするという物語の骨子は、この頃に試みられていた。
またエルトリウム級宇宙船を多数格納している宇宙港がある。
まるで洋服ダンスのように宇宙船がぶらーんと並んでいる様子は、本艦がいかにスケールが大きいかを示す場面だ。
物語は、いよいよ最終決戦に突入する。
ガーゴイルは、レッドノアをパリ上空に移動させると全人類に対して宣戦布告する。
投射装置を使い世界中にネオ皇帝のホログラムを放映するとバベルの光(衛星反射レーザー砲)を放って全てのしもべの星(人工衛星)によってレーザー光線を屈折させ、地球を一周させてみせた。
これで自分たちが地球のいかなる場所も自由に攻撃できることを誇示し、人類にエッフェル塔に白旗を上げて降伏するよう迫る。
しかし人類は白旗を上げる様子はなく、愚かなプライドで抗戦を考えていると見たガーゴイルは、攻撃を開始しようとする。(実際には単に逃げ散ってしまったのと考えがまとまらなかっただけで抗戦など考えていなかった可能性が高い)
しかししもべの星ミカエルが爆散し、Nノーチラス号が姿を現して最終決戦が始まった。
「どこまでもワシの邪魔をする気か、ネモ君」
―モニターのNノーチラス号を認めたガーゴイルの台詞
戦いは、パリ上空から成層圏、宇宙へと移行し、ネオ皇帝が死ぬことでレッドノアは、コントロールを失う。
制御不能になったレッドノアをガーゴイルは、復旧させようとするがネモは半生半死、ナディアにも拒絶されたため、エレクトラを電撃で甚振り、それでも協力を拒むナディアの目の前でジャンを転落死させ、執拗に復旧を迫った。
しかしナディアはレッドノアを復旧させるどころか、ネモ、エレクトラ、グランディスの後押しもあってジャンを蘇生させるべくブルーウォーターの力を使い切ってしまい、レッドノアを復旧させる手立てが永久に失われてしまう。
こうしてレッドノアは、成層圏に再突入し始める。
本来であれば宇宙船であるレッドノアの性能をもってすれば突入には何の問題もないのだが、制御を失った上にN-ノーチラスとの戦いで損傷していたレッドノアは、猛スピードのまま危険な角度で成層圏内で超高温に達して爆散した。
余談
レッドノアをはじめとする3つの宇宙船の天辺には、ガーゴイルが建設したバベルの塔のオリジナルがある。
これは本来は通信機でありM78星雲に向けて光線を発射する。
現在は、地球の静止衛星軌道にある12の”しもべの星”らによって光線を屈折させて地球の各地を攻撃できる。しもべの星は、ミカエル、ルシファーなどの名前が付けられているらしい。
これをガーゴイルは「世界をひれ伏させる神の光」、ネモは「世界を滅ぼす悪魔の光」とそれぞれ評した。
ナディアの終盤は、後のエヴァに繋がる要素がしばしば登場する。
レッドノアが成層圏で爆散するシーンでは、光の弾が飛び散っていくのだが、これが使徒という没設定がある。
またナディア、ガーゴイル、エレクトラだけが宇宙服になるのだがエレクトラの宇宙服は、エヴァのプラグスーツに似ている。
ナディアおまけ劇場によると直掩機となる戦闘機のようなものも格納していたが使用不能になっていた。
またほとんどの武装が死んでおり、本来の戦闘能力を発揮できていないらしいが、それでもN-ノーチラスの優に50倍の火力が生きているという。
レッドノアのバリアの効果音は、後に『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』にて、第十の使徒(ゼルエル)のATフィールドに流用されている。
また専用BGM『バベルの光』は、新劇場版ヱヴァンゲリヲンにもアレンジ版が採用された。