「五月革命」に身を投じた思想家。
著書として『初期革命評論集』全10巻がある。
一説によると、幻の11冊目『個別の11人』があるらしいが──。
クゼ・ヒデオによる紹介
パトリック・シルベストル著「個別の11人」。
インディビジュアリストの聖典。
それがなぜ素晴らしいのか。
それは、5・15事件を日本の能に照らし合わせ、その本質を論じたところにある。
能とは、戦国の武士たちがあらゆる芸能を蔑むなか、唯一認めてきた芸事だ。
それは、幾多の芸能の本質が決定された物事を繰り返しうるという虚像にすぎないのに対し、能楽だけが、その公演をただ一度きりのものと限定し、そこに込める精神は現実の行動に限りなく近しいとされているからだ。
一度きりの人生を革命の指導者として終えるなら、その人生は至高のものとして昇華する。
英雄の最後は死によって締めくくられる。
死によって永遠を得る。