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迷路荘の惨劇の編集履歴

2022-05-13 11:52:38 バージョン

迷路荘の惨劇

めいろそうのさんげき

横溝正史の長編推理小説。 また、同小説を原作にした映像作品。

概要

元は『迷路荘の怪人』の題名で『オール讀物』1956年8月号に発表された短編作品。

その後長編作品として加筆・修正を施し、1975年に発表された。

長編化に際して人名やトリックの詳細などが改変されており、後日談も充実している。


あらすじ

時は明治、卓越した才覚で立身出世を果たし、華族となった古館種人(ふるだてたねんど)伯爵。

彼が富士山の裾野に建てた別荘「名琅荘(めいろうそう)」は、暗殺を警戒して邸内に様々な抜け道や仕掛けが施され、庭の植え込みも巧みに身を隠す事が出来るよう作られていた。

いつしか陰口のように「迷路荘」と呼ばれるようになったこの別荘では、20年前に陰惨な殺人事件が起きていた。


1930年(昭和5年)。

種人伯の息子・一人(かずんど)は、父と異なり凡愚の出来であった。身を顧みない放蕩の末に破産寸前となり、辛うじて財産として残った名琅荘にて、半ば隠居の身を余儀なくされる。

鬱々とした暮らしの中で、一人は次第に不満を募らせていく。種人伯の元妾であり、名琅荘の内々を差配するお糸は目の上のたんこぶであり、後妻に迎えた加奈子にいっこう子が生まれない事も手伝い、召使であり加奈子の遠縁にあたる青年・尾形静馬の仲を疑うようになる。

そして遂に狂を発した一人は、2人が居合わせている所に日本刀を持って襲いかかり、加奈子を斬殺。更に静馬の左腕を一刀のもとに斬り落としたが、その静馬に返り討ちにされて死亡した。

逃亡した静馬の血の跡は、名琅荘の裏手の崖にある洞窟「鬼の岩屋」に続いていた。洞窟は深く、また手負いの静馬が凶器を持って逃げた事もあり、当時居合わせた誰もが恐れた為に追跡する事はなく、警察の捜査もむなしく静馬は行方不明となった。


その後、一人と先妻の子である辰人(たつんど)が古館家の跡を継ぐ。

しかし古館家は戦後さらに財政が苦しくなり、遂に名琅荘も銀行の抵当に流れてしまう。これに目をつけた実業家・篠崎慎吾は名琅荘を手に入れ、更に辰人の妻・倭文子(しずこ)を寝取り、辰人に莫大な代償を支払う事と引き換えに彼女を後妻に迎えていた。

その後慎吾は名琅荘の複雑怪奇な構造を利用してホテルに改造し、開業準備を進めていた。


1950年(昭和25年)10月16日。

左腕のない男が「真野信也」を名乗ってホテルを訪れ、案内された部屋で姿を消す。その奇怪な行動や姿、更には慎吾からの紹介状を偽造していた事から、事件以来行方不明の静馬が何がしかの意図をもって乗り込んできたのではないかとも思われた。

それから2日後、慎吾から依頼を受けた金田一耕助は、名琅荘を訪問。ホテルのお披露目会に招待されていた人物達と顔を合わせる。


館の元の持主・古館辰人

辰人の母の弟・天坊邦武

加奈子の弟・柳町善衛

慎吾と先妻の娘・篠崎陽子


金田一が先日の出来事について説明を受けている最中、第一の事件が起きる。

倉庫の中にある送迎用の馬車の座席の上で、辰人の絞殺死体が見つかったのだ。奇妙な事に、何故か辰人の左腕は体に縛りつけられていた。


翌日、自室のバスルームで、溺死させられた天坊の死体が発見される。

部屋の鍵はマントルピースの盆の上に乗せられており、いわゆる密室殺人の状況にあった。さらに、女中のタマ子が前夜から行方不明になっていた。


タマ子捜索のため、警察と金田一達は、地下通路と「鬼の岩屋」の二手に分かれて探索を行った。すると突如として女の悲鳴が聞こえ、金田一たちが駆けつける。

辿り着いた地下通路では無残なタマ子の死体が見つかり、さらに地下通路の出口で、瀕死状態の陽子が発見される。意識を失う直前、陽子は「パパが……」と言い残した。


果たして事件の真相は……


登場人物

  • 金田一耕助

ご存じ我らが名探偵。パトロンの風間俊六つながりで、慎吾からの依頼を受ける。

  • 篠崎慎吾

実業家にしてホテル「名琅荘」オーナー。肉づき豊かで逞しく、腕っぷしも強く度胸も据わっている。結構な女好きだが、本人はまるで気にせず堂々と振舞っている。

  • 篠崎倭文子

慎吾の後妻。元は辰人の妻だった。匂い立つような美女。過去には柳町善衛と婚約寸前だった所を辰人によって奪われており、実は今回のお披露目会の登場人物いずれとも関わり合いを持つ。

  • 篠崎陽子

慎吾と先妻の間に生まれた娘。不器量だが父譲りの肝力と義侠心を持つ。事件の真相を突き止めようとした結果命の危険に晒されるが、辛うじて一命をとりとめた。

  • 速水譲治

名琅荘の従業員。元は金田一のパトロンである風間俊六に拾われた日米混血の戦災孤児。慎吾を「親父さん」と呼んで尊敬している。タマ子を愛しているが、悲しい結末を迎える。

  • 戸田タマ子

名琅荘の女中。譲治と恋仲。強い近視だが、眼鏡を嫌ってつけていない。過去の事件を知らず、左腕のない男を警戒せず案内してしまった。不幸な偶然によって、第三の犠牲者になってしまう。

  • 真野信也

慎吾の紹介状を偽造し、名琅荘を訪問した上で姿を消した謎の客。左腕がない。その正体は……

  • お糸

上品な小柄の老女。種人伯の元妾で、年をとり引退した後で名琅荘の差配を託され、「ご後室様」と呼ばれて内々を取り仕切っていた。名琅荘が篠崎の手に渡った後も、引き続き差配を行う。過去の事件では家の名誉を守る為に捜査当局を煙に巻いており、担当した井川刑事からは敵視され続けている。

  • 古館辰人

元名琅荘の主。種人伯の孫で、一人と先妻の間に生まれた子。美形だが覇気に欠け、更に古館家が自分の代で本格的に傾いた所で慎吾に名琅荘ばかりか倭文子までもを奪われ、代わりに莫大な金を賠償として受け取った。第一の被害者として、左腕を縛りつけられた奇妙な死体となって発見される。

  • 天坊邦武

元子爵。辰人の実母の弟。なんとなくビリケンを連想させる、卵型の頭をしたちょび髭のチビ男。実はある秘密をもっており、これが原因で第二の被害者となる。

  • 柳町善衛

元子爵。加奈子の弟。フルートの名手。過去に倭文子と婚約直前まで行ったが、辰人に先を越された。芸術家気質で、繊細な神経をしている。


映像作品

1978年、『横溝正史シリーズII』としてテレビドラマ化。金田一役は古谷一行

尺の都合もあってか大幅な省略が目立つが、ストーリーはおおむね原作に忠実。

登場人物の何人かが登場せず、これに伴い第一の事件における複雑な目撃証言もオミット。犯人の最後が自殺に代わっている。


2002年のテレビドラマでは、上川隆也が金田一を演じた。

舞台が富士山麓から京都となり、祇園祭に合わせて名琅荘に関係者を招待したという設定。また原作では名前だけ登場していた等々力警部が、割と強引な形で事件に直接巻き込まれている。

その他にも多少の省略や改変はあるが、ストーリーは割と原作に忠実。ラストでは犯人は悲惨な死を迎える事なく、逮捕される。


関連タグ

小説 金田一耕助 横溝正史

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