概要
『世にも奇妙な物語』2009年秋の特別編で放送されたストーリー。主演は伊藤淳史。
原作は泉昌之氏の短編漫画『最後の晩餐』。
ストーリー
まず牛脂を鍋一面に広げる。その上に薄切りの牛肉、そして肉の上に砂糖。
味付けは関西風。
砂糖の甘さが肉に染み付いてから醤油、酒を入れる。
肉60度、ネギ70度、焼き豆腐90度、シラタキ60度、しいたけ50度、えのき30度の角度で入れるのが好ましい。
シラタキは、カルシウムの成分が肉を固くしてしまうので肉から離して入れる。
その後春菊を入れてふたを閉め、野菜から水分がにじみ出るのを待って3分。
この3分間を神の時間と呼ぶ。
そして卵をかき混ぜる回数は9往復半。
食べる人数は最低でも3人は必要。4人なら最高。
主人公、西村和樹はすき焼きに強いこだわりがあり、具を入れるタイミング、入れる位置、占める面積、角度から蓋の閉め方、卵のかき混ぜ回数等など、独自のルールを持っていた。
そんなある日、彼は恋人の詩織との結婚を許してもらうために彼女の実家に来ていた。
実は彼、東京に出て5年間一度もすき焼きを食べていない。本人曰く一人で食べるすき焼きは寂しい、二人でも物足りないとのことだった。
彼女の家で、しかも彼にとって一番理想的な4人ですき焼きを食べられるということで舞い上がっていた。
調理法は関西風…高級肉…そして豆腐に白滝、野菜類とお馴染みの具材と理想的に見えたが、具材の中に場違いと思えるエリンギを見つけてしまい、「すき焼きに西洋の食材を入れるなんて!」と突っ込みたくなるがこれが各家庭の味なんだと堪える。
さらに、
「アレはどうする?」
「後で良いでしょ」
と言う両親の会話が聞こえてきて〆の話だなと期待を寄せる。
調理は詩織の父が担当することになったのだが、普段料理をしないということもあり「火が強い」「醤油を入れるタイミングが早い」とツッコミ所が出てくる。そこは和樹がこっそり火加減を調整したり、父の時計を褒めて時間を稼いだりして、影ですき焼きを操っていく。
「裏で操作するのも面白い」と思っていたが、蓋をしていないことに気付く。
自分でそっと蓋を閉めようにも、蓋の位置は遠い。
ここで指示してしまうと上機嫌な父の機嫌を損ねるであろうと、何も言う事が出来なかった。
しかし今回の目的は結婚の許可を得ることであるということを思い出し、冷静さを取り戻す。
こうしてすき焼きは完成。
彼は具を食べる順番にもこだわりがあり、まずは一番目立たないエノキとネギ、肉を最初に食べるなど愚の骨頂だという。意外にもこの一手を考えるのに一週間もかかったらしい。
しかし、母が先に肉の2/3を一気に持っていってしまった。
そして父は豆腐を箸で掴んで鍋の中で崩してしまう。
呆れながらも具を卵に付け口に入れると肉の味がしみ込んでいて美味い。
気になっていたエリンギも悪くない…いやむしろ良かった。
そろそろ肉に行こうとする和樹だが、気が付くと肉が無くなっていた。
家族全員が一気に残りの肉を食べてしまったのだ。
和樹は怒るが、結婚を支えに何とか抑える。
しかしその後も、
肉がやわらかくなると、飲みかけの酒を鍋に入れる、野菜を全部食べてから次の具材を投入すべきなのに、鍋に野菜が残った状態で入れられた、次の肉が安い肉なのをわかっていて高級肉を先に彼らで全部平らげる、食べごろではないネギを盛られた、彼の中では卵は一個まで、と言うルールなのに二個目を使った、使った卵を鍋に入れた、さらには詩織も卵を使わずにすき焼きを食していたことが判明。これは彼にとってはすき焼きの根本否定。卵を使わないすき焼きなど、ただの牛の甘辛鍋なのだという。
とツッコミどころ満載に彼らに「スキヤキ素人が!!」と対に怒りが爆発。こんな奴らとは家族に慣れないと断言した。
すると父が「そろそろ、アレ行くか?」と言い出した。
〆に入ると知った和樹は彼らに最後のチャンスを与えることにした。「うどんが来ればこの場に残り、おじやが来たらこの場から立ち去って二度と姿を現さない」と決めた。
彼曰く、おじやは味が濃すぎるということで〆はうどんが理想的だという。
しかし、彼の元に運ばれてきたのは、
「黒くてプルプルしたゼリー状の球体」
だった。
「これは一体なんだ!?」
困惑する彼をよそにスーパーで手に入れた天然物だというその物体が当たり前のように鍋の中に投入される。
どうやら彼らにとっては塩が理想的な味付けのようで、和樹の中で理想のシメであったうどんは家族曰く「気持ち悪い」らしい。
「これをすき焼きと呼ぶな!これはすき焼きじゃない!俺の信じてきたすき焼きはこんなんじゃない…!」
彼は家族の視線に葛藤しながら食べるかどうか迷っていたのだった…
それから数年後…
和樹は詩織と結婚し、二人の子宝にも恵まれていた。
そんな彼らの今日の夕食はすき焼き。調理するのは和樹。
基本的な調理法は昔の彼の主義に則っている…が、細かな拘りはなくなっていた。
そして煮えた具材をとっとと平らげ、「黒くてプルプルしたゼリー状の球体」を鍋に投入。
1分30秒後に楕円形になった後食すのが、一番美味しい食べ方と語る。
どうやら彼はこの物体が気に入ってしまったらしい。
余談
今作に登場した「黒くてプルプルしたゼリー状の球体」について、未だに正体が何なのか考察が行われているという。