概要
ローズを助けた礼として、婚約者のキャルからその翌日の一等客のディナーパーティに誘われたジャック。
当日、彼はモリーから貸与された礼服に身を包みディナーに参加する。
そこでジャックはキャルから本来はこの場に相応しくない三等客であることを暴露された挙句、ローズの母・ルースからは「根無し草の生活はどう?」と質問され庶民であることを遠回しに揶揄されてしまう。
しかし彼はたじろぐどころか、寧ろ自身のお世辞にも豊かとは言い難い現状を誇らしげにこう返答する。
「とても満足しています。生きるのに必要なものは全て揃っていますから。健康な体と絵を描く紙があればそれでいい。毎日新しいことが起き、出会いがある。それが楽しいんです。橋の下で寝ることもあれば、このように世界一の豪華客船で皆さんとシャンペンを飲むこともある」
続けてジャックはこう述べる。
「人生は贈り物だと思っています。だから無駄にしたくない。どんなカードが配られようが、それもまた人生。毎日を大切に生きたいです」
それを聞いたモリーは「その通り」、グレーシーからは「全くだ」と讃えられた。
そしてローズが「今日に乾杯」という掛け声と共に、そのテーブルに座っていた皆が今日という一日に感謝して一斉に乾杯するのであった。
解説
ジャックのこの台詞は本作に於ける最大のテーマになっている。即ち、「今あるものは全て"与えられたもの"なのだから目一杯感謝しよう」ということである。
そもそもジャックがタイタニックに乗船出来たのはポーカーに勝利したためで、本来彼は乗客ですらなかった。ローズも名家の生まれで、一度は没落の危機に瀕しながらもキャルとの婚約でそれを免れることができ、世界一の豪華客船であるタイタニックに乗船することが出来、そして運命の人であるジャックと出逢えたのである。
正しく、本作の登場人物一人一人の今があるのは、先祖からの継承、そして運による"贈り物"によって齎されたのであり、それは現実の我々にも同じことと言えよう。
尚、監督の過去作である『ターミネーター2』の未公開シーンでも、主人公の一人であるサラ・コナーがこれと似通った台詞を述べている。そのため彼のこの名言は、結果として公開できなかった台詞を転用していると思える。
このことから、この台詞はキャメロン監督の人生観の可能性もある。
氏もまた駆け出しの頃は初監督作品が失敗したことが起因しホームレスになり心身ともに追い詰めらる程のドン底に陥るも、ある日見た悪夢で『ターミネーター』のアイディアを思いつき、そこから各映画会社への売り込みや、キャストとスタッフの手配といった苦節の末製作に漕ぎ着け大ヒットし一気に世界的名監督にのし上がったことから、この経験がこの価値観を生んだのかも知れない。
因みに上記のようにジャックが庶民であることを小馬鹿にしたルースだが、当の彼女は家計が火の車状態で経済的に余裕がなく、そもそもタイタニックに一等客として乗船したのもキャルの恩恵であって本人の実力ではないことから、完全にブーメラン発言だったりする。