概要
岩戸鈴芽が幼いころに母親に作ってもらった、背板に目の彫られた小さな黄色い子供椅子。現在は脚が1本欠けており、3本脚になっている。
鈴芽の部屋の隅に大切に置かれていたところを、彼女の部屋を訪れた「閉じ師」の青年・宗像草太の目に留まり、さらには突如現れた謎の猫・ダイジンの呪いによって草太がこの椅子の姿に変えられてしまったことから、3本脚で動き出すようになる。
もともとこの椅子は、鈴芽が4歳の誕生日を迎えた際に、彼女への誕生日プレゼントとして母親の岩戸椿芽が作ったものである。当時の幼い鈴芽に合わせたオリジナルの寸法で組み立てられ、彼女の好みの色(実際には椅子を作っていたときに庭を飛んでいたモンキチョウに惹かれていた)のペンキで塗られたその椅子は、それだけでも誕生日プレゼントとして申し分ない完成度だったものの、当時の鈴芽はその椅子に対して「何だかちょっとぴんと来ていない」などと、もっと劇的なものを期待していた。そんな娘の様子を察した椿芽は、彫刻刀を使って椅子の背板に瞳を彫ってみせ、その可愛らしい出来栄えによって鈴芽を大いに喜ばせている。
世界にひとつだけしかない自分専用の椅子を作ってもらった幼い鈴芽は、母親の椿芽に対して「ぜーったい、ずっと、いっしょうだいじにするからね!」と声高に宣言しており、その後もその椅子をかけがえのない宝物として肌身離さず持ち歩いている。また、マクドナルドのハッピーセットとして期間限定で発売されたスピンオフ(外伝)絵本『すずめといす』では、幼い鈴芽が自分専用の椅子を大事にしている様子がフィーチャーされている。
鈴芽は4歳の誕生日を迎えたその翌年に、突然降りかかった辛い出来事によっていっとき椅子を失くしてしまうものの、偶然経験した不思議な出来事によってふたたび椅子を見つけることができ(そのとき椅子の脚はすでに1本壊れて失われていた)、以降は叔母の岩戸環と二人で暮らすなかで、その椅子を「お母さんの形見」として大切にしている。
関連イラスト
関連タグ
岩戸鈴芽 - 九州の静かな町に暮らしている女子高生。この椅子の持ち主。
宗像草太 - 全国を旅して回っている「閉じ師」の青年。この椅子の姿に変えられてしまう。
ダイジン - 草太を椅子の姿に変えた、人間の言葉を話す謎の白い猫。
岩戸椿芽 - かつて鈴芽と一緒に暮らしていた彼女の母親。
小すずめ - 幼少期の鈴芽。
参考文献
- 新海誠『小説 すずめの戸締まり』 角川文庫 2022年8月24日発行 ISBN 978-4-04-112679-0