概要
「モスラVSバガン」とは、平成ゴジラシリーズ時に執筆された、検討用台本である。
当時、84ゴジラの準備稿台本に登場していた、ゴジラの対戦怪獣「バガン」を、設定変更したうえで、当時はまだ復活していなかったモスラと共演・対戦させた内容である。
1991年公開「ゴジラVSキングギドラ」の大森一樹監督が、同作のクランクアップ後に、検討用として台本を描き下ろしている。
あらすじ
ヒマラヤで雪崩が発生。麓に居る住民たちの中に「この雪崩は、バガンが起こした」と言う者がいた。
バガンは、「国が乱れ、世界が汚れ、人々の心に悪があふれた時、地底から現れる」伝説の魔獣だという。
同じ頃。地球環境会議のスタッフである手塚雅子は、衛星軌道上からの撮影で、ボルネオ島奥地に巨大な卵らしきものを発見する。
雅子とTVディレクターの安東、現地スタッフの南垣らは、ボルネオ島へと向かう。
近隣の村の村長は、卵の衛星写真を見て「森の守り神・モスラ」の卵だと言う。そして安東たちは、モスラの卵を発見した。
が、卵の近くでは、小美人が歌を歌っていた。現れた現地人たちに凄まれ「卵が孵化するから帰れ」と言われ、安東たちは引き下がる。しかし安東は、小美人をこっそりと連れ去ってしまった。
安東が戻る途中、卵が孵化し、モスラが誕生した。
シンガポールへ、小美人を追い現れる幼虫モスラ。国軍が対処するが、モスラの糸の前に全滅する。市内へと入り込んだモスラは、小美人の姿を求め暴れまわり、やがて繭を作り自信を包み込んだ。
メーサー戦車で繭を攻撃するが、繭から成虫モスラが羽化。バンコク方面へと向かっていった。
バンコクに向かう列車には、南垣が乗っていた。それを追うモスラだったが、バガンが出現。角からの光線で暴れまわる。
モスラはバガンと対戦し、プリズム光線で海に追い払う。
この戦いに巻き込まれ、南垣は死ぬが、安東が小美人を奪い取り、バンコクへと運んでいった。彼は日本のTV局に、小美人を売り込む魂胆だったのだ。
そして、バンコクに出現するモスラ。
バンコクで暴れまわるモスラを止めるべく、雅子は安東に追いつき、彼から小美人を救い出す。
小美人は言う「モスラはもう暴れません。ですが、森の守り神であるモスラは、闇の神バガンと戦わねばなりません」。
モスラは太古の時代、バガンと戦いヒマラヤに封印していた。が、昨今の森林伐採や自然破壊によって、封印が解け蘇ってしまったのだ。
小美人を待つモスラに、バガンが復活。羽根を裂き、光線で焦がす。が、モスラの毒鱗粉で悶絶する。
しかしモスラは、戦うたびにその寿命を消耗する。死が近い事を悟ったモスラは、もう一匹のモスラが待つボルネオ島へ、バガンを抱えて向かっていった。
ボルネオ島で待つ幼虫モスラの糸を受け、成虫モスラからもプリズム光線を受け、バガンは光線で対抗。
成虫モスラは最後の力で、バガンに毒鱗粉攻撃を仕掛ける。そして幼虫モスラの糸が、バガンを完全に包み込んで繭にしてしまった。
静かになったバガンの繭を、成虫モスラは抱え、海底深くに封じるために飛んでいった。
バガンの最後を見届けた成虫モスラは、そのまま息絶え、舞う様に水面に落下。そのまま、静かに沈んでいった。
登場怪獣
- モスラ
本稿のモスラは、小美人が巫女的な存在として登場する点は同じだが、故郷はインファント島ではなくボルネオ島に変更。舞台も東南アジア(シンガポール、バンコク)となっている。
没の憂き目となった本稿ではあるが、モスラに関する部分は、92年公開の「ゴジラVSモスラ」に活用された。
成虫モスラは、プリズム光線を放ち、戦いに用いる事ができる。また、従来のモスラ同様に毒鱗粉も有する。
- バガン
本作のバガンは、三形態への変身能力は持たず、単なる怪獣として設定変更されている。光線を放つ能力を持つ。
かつてモスラにヒマラヤに封じられたが、近年の自然破壊の影響で復活したという設定。