概要
葬送のフリーレンに登場するシュタルクとフェルンのカップリングである。
魔物に怯えているシュタルクをフェルンが叱咤したり、シュタルクがフェルンに面白いことを伝えようとしたり(冷たい目で返され終わったが)お互いを何かと気にかけている様子。同年代であるからか距離も近い模様。
なお、仲間のザインからは「もう付き合っちゃえよ‼」と言われるほど。
解説
お互いに元戦争孤児という境遇、勇者パーティーのメンバーに育てられたという経歴など、年齢の近さ以外にも共通点が多い。基本的には(無意識ながら)シュタルクを意識しているフェルンと、そんなフェルンの振る舞いに振り回されながら向き合うシュタルク、という構図で進んでいく。
相手に感情を察してもらいたがるフェルンは、周囲に対して言葉で自分を主張することをせず、特に怒っているときは表情や視線で表現することが多い。シュタルクは相手の表情はよく見ているが、経験不足から察することができず、フェルンの当たりの強さによく怯えている。二人とも同年代の異性と接する機会に乏しかったことや生来の気質(ツンとヘタレ)から不器用な方であるが、それでも手探りですこしずつ関係を進めている、なんとも素朴で応援したくなるカップリングである。
なお、作中では明確に二人の進展や関係を描写する話も存在するが、合間合間のコマの端でさりげなく仲良くなっていく様子の描写が多い。話の本筋ではなく、二人が仲を深めていく様子を探すために読み直すのもいいだろう。総じて、本作における公式カップリングと呼んでも差し支えないものとなっている。
進展
以下、ネタバレを含みますので未読の方は注意されたし。初見の楽しみは大切に。
細かなものを挙げていくとキリがないので、主だったものを記載していく。
出会い
10話にて。紅鏡竜の討伐を試みて断念したフリーレンとフェルンは、リーゲル峡谷沿いの村で竜を追い払った英雄シュタルクと出会う。村の人々からは竜と睨み合いをした末に追い払ったと思われているが、シュタルク本人は恐怖で竦んでいたら竜が気まぐれを起こして帰っただけだと言う。村の人たちに慕われ、後に引けなくなっているシュタルクはフリーレンに対して泣きながら縋り付いて弱音を吐き散らかす始末。そんなシュタルクをフェルンは深い軽蔑の目で見降ろすのだった。「こいつは駄目です。他を当りましょう。」
だがその日の夜、シュタルクの修行(崖を斧ひとつで切り拓く)を見たフェルンは、彼に十分な実力があると知る。シュタルクの胸の内と村の英雄としての覚悟を聞いたフェルンは、初めて魔物と戦った日の黒歴史を語り、自分の学びから得たことをシュタルクに伝え、背中を押す。
翌日、無事紅鏡竜を倒したシュタルクは、フリーレン一行の仲間として以降の旅に同行するようになった。
初めての二人きり
12話にて。仲間になった直後、北方の関所で足止めを食らうフリーレン達。フリーレンは長居する気満々だが、時間の浪費を恐れるフェルンは不機嫌になってしまう。なんとか関所を抜ける方法を探すため、フェルンとシュタルクは二人で行動を始めるのだ。そんな中、自分よりも必死に行動をするシュタルクを疑問に思い、フェルンは問う。それにシュタルクは、師アイゼンとの思い出と、もう旅に出れない師に土産話をするのが自分の恩返しだと語る。
それは奇しくも、かつてフェルンが養父への恩返しのため、魔法の鍛錬を重ねた理由と重なるものがあったのだ。
シュタルクへの誕生日プレゼント
26話にて。朝になって突然、フリーレンからシュタルクの誕生日が今日であると知らされるフェルン。何も準備をしておらず焦るフェルンは、シュタルクに誕生日プレゼントを選ばせようと町へ出かける。その日彼女は、シュタルクが町中で人助けをしていることや結構ガキであること、そして彼の過去の傷を知る。なお、その日に贈られたブレスレットは、その後シュタルクの左手首にいつも着用されている。ふとした時に見つけてニヤニヤしよう。
フェルンへの誕生日プレゼント
29話にて。ザインが加入して少し経った頃、フェルンと喧嘩したシュタルクが泣きながら宿を飛び出してしまう。原因はフェルンの誕生日プレゼントをシュタルクが用意していなかったこと。それが悲しかったフェルンはいつも以上にシュタルクを責め立ててしまった。フェルンはザインに諭され、一緒にプレゼントを選んだ思い出が大切だったことを再認識する。
広場で落ち込むシュタルクと仲直りしに行くと、シュタルクから一緒にプレゼントを選びに行きたかったと告げられる。つい察してもらいたがるフェルンと、気恥ずかしさから口にできなかったシュタルク。その二人が少し歩み寄れた出来事であった。ありがとうザイン。
なお、この回の見どころは広場で落ち込むシュタルクが、フェルンからもらったブレスレットを眺めている一コマである。彼もまた、一緒に選んだ思い出を大切にしているのだろう。
続く30話。フェルンがシュタルクから買ってもらったのは、鏡蓮華のブレスレット。早速左手首につけており、選ぶのには苦労したが「気に入ってもらえてよかった」と微笑むシュタルク。フェルンもその言葉に嬉しそう。ところで鏡蓮華の花言葉は「久遠の愛情」、なんと恋人への定番プレゼントだったのである。当然、そんなこと知らなかったシュタルクは弁明するが照れ隠しなのか何なのかフェルンから辛辣な言葉を飛ばされる。すっかり意気消沈したシュタルクは、買いなおしを提案するも「二度とそんなこと言わないで」とフェルンに怒られてしまう。このシーンのフェルンは比較的感情的になっており、珍しく敬語が崩れている。その後もフェルンはこのブレスレットを着用し続けている。ふとした時に見つけて(ry
まさかの社交ダンス
32話にて。北側諸国フォーリヒを訪れる一行。そこでシュタルクは、突然現れた貴族に無理やり連れていかれてしまう。どうやら貴族はシュタルクの親戚筋らしく、先日戦死した長男と瓜二つのシュタルクを、三か月後の社交界に影武者として参加させたいらしい。路銀が尽きていた一行は、シュタルクへの依頼という形で承諾。シュタルクの貴族作法の修業が始まる。が、「年頃の男子が一人で行くなどあり得るのか?」ということでフェルンも参加決定。二人でみっちり貴族作法を学んだ。そして社交界当日、高級そうな正装に身を包んだ二人は、せっかく練習したんだからと社交界で踊るのだった。
この回の見どころは何といってもダンスシーンのカラーイラストである。また、シュタルクに練習として手を触れられたフェルンが、その後自分の手を眺める一コマも非常に行間があってよろしい。
皆さんご斉唱ください
35話にて。ザインとの旅の分かれ道となる集落で、強烈な寒波により足止めをくらう一行。しばらく借りた小屋で生活を共にする。最初に、寒さで冷たくなったフェルンの手をシュタルクが握った場面があった。もはやフェルンに触れることをなんとも思ってないシュタルク。一方でフェルンはシュタルクの頬に冷たい手を押し付けて反撃する。どっちも距離感が近くてほっこりする。……かと思いきや、しばらくたった頃、シュタルクとフェルンが大喧嘩をしてしまう。仲裁を求められたザインが駆け付けると、怒ったフェルンと泣いてるシュタルクがいた。見かねたザインが個別に事情聴取をする。どうやらシュタルクは、頬にひんやり攻撃をされたことを覚えており、フェルンにやり返して怒らせてしまったらしい。一方、フェルンに話を聞くと触れられたこと自体は怒っていなかった。しかし、背後から掴まれた力が強くて恐怖を覚え、キツく当たってしまったのだ。その後、ザインに「シュタルクのこと嫌いか?」と問われたフェルンの返答は必見である。ザインの仲裁により無事二人は仲直り。若人二人を残して、フリーレンとザインは飲みに行く。そこでザインは伝説の一言を放つ。
ドンッ「もう付き合っちゃえよ!!!」
全く同感である。
フェルンはなかなか感情を言葉に出さないし、シュタルクも情緒が小学生男子くらいで察せない。が、フェルンはシュタルク関連での感情が結構表情に出るし、シュタルクはフェルンを大切にしているのが読者の我々にも伝わってくる。すぐ傍で共に旅をしてきたザイン的にはお似合いの二人なのかもしれない。なお、生活がダイジェストで流れるシーンではほとんどのシーンでシュタフェルが一緒にいるので確認すると幸せになれる。
尻に敷かれるシュタルク
46話にて。一級魔法使いの試験のため、しばらく一人で留守番をしていたシュタルク。夜更かししたり夜中にジュースを飲んだり、些細に自堕落に、そして幸せそうに過ごしていた。が、一次試験が終了し、一時休息で宿に戻ってきたフェルンに自堕落な生活がバレて(というか白状して)怒られてしまう。どうやら、常日頃からフリーレン共々生活をフェルンに管理されているようで、不摂生をすると怒られてしまうらしい。単行本にはシュタルクの寝癖をフェルンがブラシで直してあげようとする様子が描かれていたりもする。フェルンは近しい人を管理したがるところがあるようで、シュタルクは完全に尻に敷かれていた。二人の日常的なパワーバランスが垣間見えた、とても良い回である。なお、フリーレンとシュタルクはフェルンのご機嫌取りをすることとなった。
シュタルクのヘッドハンティング
62話にて。早朝、釣りをしようと川に出たシュタルクは、偶然そこで水浴びをしていたフリーレンとフェルンを目撃してしまう。おそらく女子二人の格好は現在の下着姿に該当するもので、そんな気はなかったものの朝からシュタフェルがちょっと気まずい空気になる。そんな様子を見たフリーレンが、二人は相性が悪いのではないか、シュタルクは無理してこのパーティーにいるのではないか、と考え始める。タイミングの悪いことに、その日にたどり着いた宿でシュタルクは、北部戦線維持の戦力としてヴィアベルからスカウトを受ける。スカウトに口を挟もうとしたフェルンだったが、フリーレンがスカウトの許可を出す。ヴィアベルのパーティーと共に食事をするシュタルクを見て、フリーレンは満足そう。一方フェルンは、食事もあまり喉を通っていない様子だった。
その日の夜、バルコニーで一人佇むシュタルクに、フェルンが声をかけに行く。開口一番、シュタルクはヴィアベルの話を断ったという。そしてシュタルクは、何故自分がフリーレンのパーティーに居続けるのかを語り始める。
フェルンが村の英雄だった彼と出会った頃、嘘と重責でシュタルクは既に限界だった。そんな彼の背中を押し、救ったのは他でもない、紅鏡竜討伐前夜にフェルンが贈った言葉だった。それをきっかけに彼は、一緒に旅がしたいと思ってここまで来たのだそう。「俺はどこにもいかないよ。」それが彼の出した答えだった。
伝説のデート会
66話にて。城塞都市ハイスでフリーレンは温泉に入り浸っている一方、シュタフェルはやることがなくて暇になっていた。明日の予定を話し合う中、暇だから構ってほしかったフェルンはいつものようにシュタルクにキツい言葉をかける。っていうか「構ってください」て。いつもそんなこと言ってるんですか?
さておき、シュタルクはフェルンに仕返しをしようと思いつく。
その一言が「そんなに構ってほしいなら明日デートしようぜ」
フェルンは読んでいた本をその場に落とし、無表情のまま数秒硬直し、デートを承諾して本も拾わずに部屋の外に出る。フェルンさん、明らかに動揺している。
今更後に引けないシュタルクは、デートプランをフリーレンに相談するのだった。一方、フェルンはフェルンで、フリーレンへ真剣にデートの相談するのだった。
続く67話。デート当日。
いつもと違う、花柄のワンピースに身を包むフェルン。シュタルクが服装について問うと、だってデートだから。と伏し目がちに返答する。シュタルクはそんなフェルンを見て、「フェルンってこんなに可愛かったっけ?」と自問する。既に最高。かなり可愛いよ。
さて、デートも終わりに差し掛かる頃、シュタルクはフェルンが楽しくなかったのかもと問う。なぜなら、今日一度も笑っていないから。それに対しフェルンは、シュタルクらしくないデートだったと肩を落とす。要は、シュタルクはフェルンに喜んでほしくてフリーレンに聞いたフェルンの好きな場所ばかりを選んだが、フェルンはシュタルクとのデートらしい過ごし方がしたかったようだ。けれどもフェルンは、相手が自分の為に考える時間を喜べる人。お互いに正直にそれを話し、笑顔で、穏やかにデートを終えることができた。
「デート」という言葉を二人とも大切に使って「デート」をする。という、二人が、二人の距離を意識的に縮めた日であった。作品に関わったすべての人に感謝である。