概要
単行本39巻収録の番外編。元ネタは遊星からの物体Xと思われる。
クレしんホラー劇場には含まれていないがラストがとてつもなく後味が悪い終わり方をしている。
ストーリー
ある日、宇宙を飛行するUFOに隕石が衝突し、何かの種が2個地球へと落下していく。
その頃野原家では、みさえの口紅で壁に落書きをしていたしんのすけが突然の大きな音の原因を見に庭の方へと向かう。
そこに何かの種が埋まっているのを発見するしんのすけ。その直後、イタズラの罰としてみさえにおもちゃを捨てられそうになる。それを見たしんのすけが悪態をつくと、まるで種がそれを聞いたかのように芽を出す。
するとひろしが起きてきたが、もうすでに昼になっていたためいつまで寝てるのとみさえと喧嘩してしまう。
しんのすけはその隙におもちゃを隠そうと庭に向かうと、かなりの大きさに成長した植物Xがいた。
その後も植物Xはひろしとみさえの口論を聞いてすくすくと育っていき、とうとう花が咲く。成長した植物Xはシロを蔓で叩き、しんのすけを絡め取る。
異変に気づき、みさえとひろしが助けようとするも、みさえが鎌で誤ってひろしの髪の毛を切ってしまいまた喧嘩になってしまう。
隙をついて脱出したしんのすけとみさえが植物Xを引っこ抜き、しんのすけのカンチョでー一度はダウンするが直後植物Xに脚が生え、自立して動けるようになる。そこでしんのすけがひろしとみさえが喧嘩していた時に成長していたことを思い出し、ひろしは植物Xが人間の負の感情を栄養にして成長していると気づく。ぎこちないながらもみさえとしんのすけがお互いを褒め称え、ひろしとみさえもクサいセリフでお互いを誉め合うと、みるみるうちに植物は弱り、しんのすけのセリフが止めとなりついに植物Xは枯れ落ちた。
そしてひろしと野原一家は「こんな化け物を生み出さないように、俺達はもっと愛を示し合おうと」誓うのだった。
しかし…
某国のとある場所では民族間紛争が起きていた。辺りに転がる死体の横にはもう一つの植物Xの種が発芽していた……。
余談
某国で発芽した植物Xがどうなったのかはその後作中で一切描かれていないが、民族間紛争は野原家の諍いとは比べ物にならない程根深く苛烈な物であるので、野原家で育った個体よりも強力に成長してしまった可能性が高い。野原家が和解して植物Xを撃退する事に成功した事の対比もあり、読後感に後味の悪さを残すものとなっている。(さらにラストのコマでは植物Xの横に流血した死体が横たわっている等、『クレヨンしんちゃん』では珍しい凄惨な場面がある)
この話が連載されていた頃から民族間紛争が国際問題となっていたので、ひろしの「俺達はもっと愛を示し合わなければならない」という台詞も合わさって、本エピソードは中々巧みな社会風刺をしていると言えるだろう。