概要
百鬼夜行絵巻の末尾には「夜が明け太陽が昇るとともに妖怪が去って行く」という場面がある。
この太陽を百鬼夜行の終わりに出現する強大な妖怪と見なしたのが、妖怪「空亡(そらなき、くうぼう)」である。
妖怪に分類されてはいるが、フィクションとして創造されたキャラクターであり、民間伝承的な側面は無い。
容姿・特徴
百鬼夜行絵巻の太陽をモチーフとして、闇と黒雲、炎をまとった巨大な球体として描かれることが多い。
闇と妖怪達を支配する非常に強大な存在であるとされる。
誕生の経緯
キャラクター化の発端となったのは2006年にカプコンより発売された和風アドベンチャーゲーム『大神』。
赤い紋様のある無機質な黒色球体の姿で描かれた、まさに「暗黒の太陽」といったイメージのラスボスとして登場する。
ゲーム中では「常闇ノ皇」という名前だが、初期案では「空亡(くうぼう)」というネーミングだったことが『大神絵草子 絆 ―大神設定画集―』で明かされた。
さらに同設定資料集で「実在の妖怪」「百鬼夜行絵巻の最後に登場してすべての妖怪を押し潰す最強の存在」などと誤った解説がなされたことから「空亡」という妖怪の解釈が一人歩きし始めた。
ここから三次的に生まれたのが現在の「空亡」であり、「そらなき」という読みはこれ以降に付け足されたもの。
(そのため、三次的に生まれたものを区別するために「そらなき」と呼ぶ場合が多い)
名前の由来
「空亡(くうぼう)」とは、本来は干支におけるある期間を意味する用語。
干支を構成する十干と十二支を組み合わせたとき、数が噛みあわずあぶれる二支のことを、不安定な期間として空亡と呼ぶ。
算命学での天中殺という呼称がよく使用される。
空亡と絵巻の太陽を引き合わせたものは、『大神』の発売より以前の2002年発売のフィギュア『陰陽妖怪絵巻』に同梱されたトランプ『陰陽妖怪絵札』である。
大徳寺真珠庵所蔵『百鬼夜行絵巻』(室町時代に制作)に姿のみ記された妖怪達に名前と設定を与えフィギュア・カード化するという企画であり、監修・主要執筆者である荒俣宏氏(博物学者、小説家、神秘学者、妖怪評論家、タレント)により、太陽が「空亡という時期」を利用して夜明けをもたらすという設定が加えられた。
>空からころがり落ちてくる火の玉のような太陽は、まさに闇を破る万能の力といえる。
>太陽は、夜の闇を切り裂いて夜明けをもたらすとき、空亡という「一日の暦の切れ目」を
>ついて、夜の中に割りこんでいく。この空亡の隙間は、どんな妖怪にも塞ぐことができない。