概要
UH-1汎用ヘリコプターに、僚機を援護するための武装を追加したものに端を発するが、これには搭載量の制約や追加武装で重くなった結果護衛対象についていけなくなるなどの問題があり、専用の機体として1から開発されたのが攻撃ヘリコプターである。
対戦車ミサイルを主武装として装備するようになっていったことから対戦車ヘリコプターとも呼ばれ、英語ではガンシップとも呼ばれる。
なお、上述のUH-1をはじめ、「本来攻撃用ではないヘリコプターに自衛あるいは支援用の武装を施したもの」は「武装ヘリコプター」と呼ばれ、純戦闘用の攻撃ヘリコプターとは似て非なる存在である。
上述したような欠点はあるが、攻撃ヘリコプターと比べると「既存の機体を流用できるため安価」「攻撃以外の用途にも使える」という利点があるため、一概に攻撃ヘリコプターより劣っているとは言えず現在でも一定の需要がある。
長所
NOE(Nap Of the Earth)飛行により地面すれすれで飛ばれれば地上のレーダーはおろかAWACSといった上空からの監視網でも発見は難しく、発見できたとしても地形によってはレーダーロストする事が多い為である。
飛行音も『地形に沿って飛ぶ』、『林や建築物等を遮蔽物にする』等をすると殆ど聞こえず、ブレードの形状を変更する等で音を抑える改良を施された機体も存在する事から、携行型地対空ミサイル(MANPADS)が発達した現在であっても、歩兵や戦車にとっては死神同然である(実際、湾岸戦争ではイラク軍が多数のMANPADSを保有していたにも関わらず、砂塵の影響でろくに位置を特定できないまま攻撃ヘリコプターに一方的にタコ殴りにされ、攻撃ヘリコプターを撃墜する事は遂に叶わなかった)。
また、敵味方が入り乱れた激戦中に航空支援を行う際には、戦闘機よりも低空・低速で飛べる事が誤爆の防止に有利に働き、戦闘機がうまくできなかった航空支援を攻撃ヘリコプターが成功させた事例もある。
現代の戦闘機はいくら低速で飛んでも航空機としては速い事に変わりはないし、止まる事もできない以上、比較的小さな目標を見つけ、正確かつ一撃で破壊するのは困難なのだ。その点ヘリコプターならば燃料の許す限りホバリングでその場に留まる事もできるので目標の確認がしやすく、より地上部隊に寄り添った支援(いわゆる直接協同)にはうってつけなのである。
何より、運用する陸軍にとっては空軍の航空戦力に頼らなくて済む、自前の航空支援手段を手に入れられる事が大きい(ただし国によっては空軍が運用する所もある。大体は陸軍が自前の航空隊を持っていない国だが、インドやブラジルのように陸軍が航空隊を持っているにも関わらず空軍が攻撃ヘリコプターを運用している国もある)。
短所
元より航空機は撃たれ弱いが、ヘリコプターは低速なうえ、滞空するだけでもエンジン出力の多くを使っているため固定翼機よりさらに脆弱であり、本格的な防空網にはほぼ無力とされている。ましてや攻撃ヘリコプターは攻撃が任務である以上、そのような危険と常に隣り合わせなのだから猶更である。
防弾装備に優れているAH-64でさえ、『12.7mmの直撃か、23mm砲弾片の数発分に耐える程度』(メーカー)とされている(本格的な対空砲となると20mm以上などざらにある)。
そんなAH-64もイラク戦争では31機による攻撃が対空砲火の待ち伏せを受けた結果、被撃墜1機、29機が全機被弾・大破して修理が必要になり事実上壊滅状態になるという憂き目にあった。
いくら重武装・重装甲であろうとも低速ではしょせんただの的にすぎないのだ。
他の機種との連携を欠き、攻撃の際に無防備にもホバリングし、巻き添えの期間から反撃も困難という極めて不利な条件下のことではあったが、AH-64が脆弱性を露呈させたのは事実であり、陸軍はその運用方法について考え直すことになる。
何より高価であり、最新の機種は下手をすると戦車どころか戦闘機並の値段がするのである。
そのため、中小国の軍隊では武装ヘリコプターで妥協している所も多い。
将来
国家同士の大規模戦争の可能性が大きく減った現在は、
- 重要な任務である対戦車戦闘が減り、偵察や火力支援任務に就く事がほとんどである
- 装備が貧弱なテロ組織相手には武装ヘリコプターでも十分役に立つどころか攻撃ヘリコプターでは攻撃力が過剰すぎる場合もある(例えばよく装備される30mm機関砲は市街地戦だと建物を数軒分貫通してしまい無用な被害を出してしまう恐れがある)
- UAVが発達した事で、人命を気にせずに偵察が行える上に、その情報を元に戦闘機や火砲による正確な支援が可能になった
事もあって、
「攻撃ヘリコプターは脆い割にオーバースペック過ぎる。他の任務にも使えてコスパもいい武装ヘリコプターで十分じゃね?」
「火力が欲しいなら戦闘機呼べばいいし、アウトレンジ攻撃なら誘導砲弾使える火砲とかでもできるから、そもそも攻撃ヘリコプターいらなくね?」
という意見も多く出始めている。
既に戦場でのヘリコプターの限界を感じ始め「これからはスピードを出せる複合ヘリコプターとティルトローターの時代じゃあ!」と宣言しているアメリカ陸軍は、2028年までにAH-64の半分を長射程兵器を搭載できる新高速偵察ヘリコプターに置き換える方針を立てている。
とはいえ、以上の弱点を踏まえても攻撃ヘリコプターは依然として強力な兵器である事に変わりなく、懐事情が厳しい中小国はともかく、大国で攻撃ヘリコプター全てを手放す動きはまだ見られない。むしろ中国の脅威が増すアジア地域や、テロ組織との戦いに明け暮れる中東では未だ新規導入が続いている。
近接航空支援のリスクは他の航空機にも言える事だし、そもそも敵陣のど真ん中に真っ向から突っ込むのはどんな兵器でも危険という事を忘れてはいけない。
短所の項で触れたイラクの件も、2日後にF/A-18との連携下で再度攻撃が試みられた際には、空中停止を禁じて移動射撃に徹したことにより一切の損害を受けることなく、対空砲7基とレーダー5基他多数の目標を破壊することに成功している。
高度なセンサーを持つ現代の攻撃ヘリコプターは歩兵の探知能力さえも高い上に、UAVなど他の偵察手段から情報を受け取るなどのネットワーク戦術にも対応し始めている。
そもそも、ヘリコプターの護衛は攻撃ヘリコプターでなければ務まらないのも事実である。V-22の配備を始めたアメリカ海兵隊では護衛役の攻撃ヘリコプターがついていけなくなったという問題からV-22の武装化も検討しており、複合ヘリコプターやティルトローターという新たなフォーマットに攻撃ヘリコプターのコンセプトが受け継がれていく可能性もある(ちなみに、初めて攻撃ヘリコプターとして開発されたAH-56は複合ヘリコプターであった)。
いずれにせよ、攻撃ヘリコプターの将来のあり方は今まさに模索されている最中であり、世界の戦場からすぐにいなくなる事はないだろう。
各国の主な攻撃ヘリコプター
開発国 | |
---|---|
アメリカ | AH-1(通称コブラ),AH-1W,AH-64(通称アパッチ),AH-56(通称シャイアン) |
ロシア | Mi-24(通称ハインド),Mi-28,Ka-50,Ka-52 |
ドイツ | PAH-2 |
フランス | EC 665 |
イタリア | A129 |
中国 | 武直-10 |
南アフリカ共和国 | AH-2 |
架空の攻撃ヘリコプター
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