「拙者の名はザンギル。お主と話がしたい」
DATA
概要
『ウルトラマンブレーザー』第17話「さすらいのザンギル」に登場する宇宙人。
右腕の剣が武器の宇宙侍で、劇中では地球人の男性に姿を変えている。
地球の文化を一通り学んだらしく、その過程で知った侍文化とコーヒーが特にお気に入りで、「美味しくなーれ……」と嗜んでいる。
街の小さなカフェの常連らしく、店主である老婦からは「いつもありがとうね」とコーヒーゼリーをサービスで付けて貰っていたりと感謝されており、本人も「かたじけない」と感謝している。
かつては星から星へ飛び回り、強者を倒すことに生きる喜びを見出す危険な人物(本人曰く「命知らずの愚か者」)だったが、ある時途轍もない剣の達人に敗戦したのを契機に、彼から与えられた「成仏できず彷徨う怪獣達の108の魂を救う」使命を遂行するため地球にて活動していた。
なお、その際に剣の達人から後述の結晶を手渡されており、この結晶により劇中では以前ブレーザーに倒された怪獣達の幽霊が相次いで出現する事件が発生していた。
本来の宇宙人としての形態は、尖った頭部を持つ痩せ型のシルエットで、胸部には肺のような形の黄色い発光体がある。
戦闘の際は片腕の肘から先の全てを刀身に変質させることができ(もしくは刀身状態がデフォルトで、平時の際に通常の掌にしている可能性もある)、これは人間態でも使用可能。
また、頭部も鋭い刃となっており、こちらを用いた攻撃もできる。
なお、宇宙から来たのは確かであるが、正式な種族名や出身の星は不明。
顕現石
彼をかつて打ち破った剣の達人から手渡された謎の石。
大きさは手の平サイズで、複数の白い結晶体が融合したような見た目をしており、緑色の光を放っている。
目に見えない怪獣の魂に仮初の姿を与え、曖昧ながらも実体化させる力を持つ(曖昧と記載したのはビルに居座れたが、人間や自動車を踏み潰せなかったため)。実体化した怪獣達は捕食や破壊をするわけでもなく、ただかつて倒された地域を徘徊している。
SKaRDに目撃された件では茨城県沓波市ビルの上に居座るタガヌラー、ノヴァイオ社跡地ではレヴィーラ等を実体化させて斬っている。
他にもモニター越しの目撃情報ではあったが、池袋にてバザンガ、先美湾にてゲードス、小丘市にてデルタンダルを実体化させ、物語開始前に成仏させている。
ただし、相手の力が強いと逆に力を吸い取り、姿どころか肉体まで得て怨霊と化してしまうらしく、後述の通り事件を引き起こしている。
実はザンギル自身も肉体が死亡しており、本エピソードの怪獣達と同様に幽霊の状態だった。
そのためこの石の力を使い、仮初の肉体を作り出して現世に留まっている状態である。
活躍
剣の達人からの使命に従い、亡き怪獣達の鎮魂の儀を続けるザンギルは地球でもそれを行っている最中、現れた怪獣の魂と共にGGFとSKaRDに認知されてしまい、彼らに「本件の最重要人物」としてマークされてしまう。
ザンギルはその直前に残る107体の怪獣の魂の鎮魂に成功していたのだが、3日前に最後の108体目の怪獣の魂と遭遇するも余りにも強かったため、結晶の能力を悪用し怨霊と化してしまうアクシデントが発生。自分1人では手に負えない上、SKaRDも魂に直接介入できないのもあり、ザンギルは彼らと協力するために敢えて姿を見せていた。
その後、ザンギルの思惑通り彼を捜索するヒルマ・ゲントと接触し、カフェで上記の経緯を伝えた上で(半ば強引に)ゲントと共に最後の怪獣の魂の鎮魂を行うべく行動を開始。
現れた怪獣の魂はニジカガチ(怨霊態)で、元が「神」と評せられるだけに高い戦闘能力に加え、怨霊態となったために実体化と霊体化を任意に切り換えられる能力まで獲得したそれに対し、ウルトラマンブレーザーと共に立ち向かうも苦戦を強いられる。
しかし、戦いの最中にザンギルはブレーザーのチルソナイトソードに霊体にも攻撃が通るようになって形勢逆転、見事な連携によってニジカガチを追い詰め、頭部の刃によってニジカガチが纏っていた炎を斬り、そのままブレーザーに一刀両断された。
……が、ニジカガチのすさまじい怨念は尚も治まらず、着地した隙を突かれたザンギルは両断された体に挟まれる形で憑依され、その肉体を操られてしまう事態に陥る。
ニジカガチの憑依によりザンギルはブレーザーに襲撃してしまうも、ほぼ同時に事態の推移を監視・警戒していたテルアキ副隊長とヤスノブ隊員両名がその光景を目の当たりにしたため、搭乗するアースガロンでブレーザーを支援すべくザンギルへの武力行使を決意し介入を受ける。
アースガロンの砲撃を受けるザンギルだったが、ニジカガチが使っていた炎を纏った剣の攻撃でアースガロンを瞬く間に圧倒、再びブレーザーに襲い掛かるもすれ違い様にブレーザーに一閃され、地に伏してしまうザンギル。
その直後、ザンギルの身体から離れ逃げようとするニジカガチの魂だったが、ブレーザーと彼に倒されたはずのザンギルとの挟撃により遂に鎮魂される。
実はブレーザーに倒されたかに見えたザンギルは、チルソナイトソードが命中する寸前で峰打ちによって仮死状態に陥っていただけだったのだ。
晴れて「108体の怪獣達の魂を救う」務めを果たしたザンギルに、ゲントは再びカフェにてこれからどうするのか尋ねると、ザンギルは予想外の答えを返した。
「拙者にこれから……はない」
実はザンギルもまた既に死んでいた身であり、この鎮魂の旅はザンギル自身の鎮魂も兼ねていた(と推測される)。
長い旅の間、彼はずっと孤独であった。しかし最後にゲントとブレーザーという短い間ながらも共に戦う仲間に会えた事を誇りに思うと語る。
今際の別れと知ったゲントは、自らと自身に宿るブレーザーの名前を告げると、ザンギルは「ありがとう、ゲント殿。ブレーザー殿」と感謝を述べ清々しそうな空気を纏うも、ゲントは「注文したコーヒーがまだだぞ」と引き止める。
ゲントの指摘に店主のいる方に目をやると、ザンギルはバツの悪さを感じつつ「それだけが唯一……心残りじゃのう……」と微苦笑を浮かべつつ、光となって霧散していった……。
不意にザンギルがいなくなったのに気付き、店主が不思議そうに店内を見回すと、ゲントはただ「先に……帰りました…」と答えるしかなかった。
そしてザンギルのいなくなった席を前に、ゲントはどこか寂しそうな顔を浮かべ、運ばれてきたコーヒーを1人で頂くのであった……。
余談
- 名前の由来は恐らく「斬(ざん)」+「斬る(きる)」の組み合わせと思われる。
- 怪人態はプレミア発表会で先行登場していたが、この時は名前の公開はされていなかった。
- ソフビはウルトラ怪獣500シリーズで商品化。右腕が剣の状態で立体化されている。
- 演じる唐橋氏は、ウルトラシリーズに出演するのは『ウルトラギャラクシー大怪獣バトルNEO』に登場したキール星人グランデ以来となる。
- また、唐橋氏は過去に『仮面ライダー555』で海堂直也/スネークオルフェノク、『仮面ライダーゴースト』で宮本武蔵、『仮面ライダーセイバー』で富加宮隼人/仮面ライダーカリバーを演じており、『仮面ライダードライブ』にてハート/ハート・ロイミュード/仮面ライダーハートを演じたゲント役の蕨野友也氏とは、ライダーシリーズ出演俳優同士の共演となる。
- さらに唐橋氏は『侍戦隊シンケンジャー』にて腑破十臓を演じており、今回の出演により三大特撮を侍系キャラクターで制覇した人物となった。
- 第17話を担当する辻本貴則監督によると、「唐橋氏とは以前から仕事をしたかったが、スケジュールの都合等でなかなか撮る機会が訪れずにいた」らしく、今回満を持して実現した形となった。
- デザインは、前回のモグージョン同様に辻本監督が担当。「最初に2つ名の「宇宙侍」が浮かび、そこからデザインを起こしており、見た瞬間に切れ味を醸し出し、ボディは日本刀の柄巻のイメージ等を取り入れ、ひたすら刀剣に拘った」と語っている。
- 第17話が放送された11月11日は、一般社団法人・日本記念日協会により「サムライの日」と認定・登録されている。
- ザンギルの正確な死亡時期や、剣の達人がザンギルに石を与えた時期は正確には不明ではあるものの、仮に達人が件の彼と同一人物だった場合、彼の顛末を知る視聴者の一部からは、「彷徨う魂となっていたザンギルを救うために、石の力を使って一時的に復活したのではないか」という説が囁かれている。
関連タグ
戀鬼、ザムシャー、メカザム、紅蓮騎、メカムサシン:過去作における、侍・武士モチーフの先輩ウルトラ怪獣。この内ザムシャーは、劇中で過去に対面した可能性が示唆されている。また戀鬼及び紅蓮騎は、幽霊である点も共通する(ザンギルとは真逆の怨霊であるが)。また、メカムサシンとは時代錯誤の日本観が絡む点でも共通している。
錦田小十郎景竜:ウルトラシリーズにおける、人間型の侍キャラクター(かつ幽霊)の先輩。
ギロン:空中にいるニジカガチ(怨霊態)への高速頭突きを見て、少数の視聴者がこちらを連想した。
ツルク星人:こちらは両手に刀身を移植した凶悪な宇宙人。ザンギルも元は戦闘狂寄りの人物だったため、剣の達人との出会いと敗北がなければこうなっていた可能性もある。