シェンムー
しぇんむー
概要
シェンムー(英:Shenmue)は、セガがドリームキャストで発売したアドベンチャーゲームシリーズ。
制作総監督は鈴木裕。元々は全11章で構成される予定の大作長編アドベンチャーであり、ドリームキャストを背負って立つ看板タイトルとしての期待をかけられ、ふんだんな予算と派手な広告宣伝を投入して開発・営業が進められた。
1999年、その第一作である『シェンムー 一章 横須賀』が満を持して発売。その制作費は70億円にも及び、一時期ギネスブックに「世界一制作費のかかったビデオゲーム」として記録されていた(現在は更新されている)。
ゲームそのものの評価は後述の通り高かったものの、肝心の売り上げは約60万本と、莫大な制作費に見合ったものとは言えず、商業的には失敗に終わった。
2001年には、ストーリーの2章を飛ばして3~6章を収めた『シェンムーII』が発売されるが(こちらも制作費は20億円強)、既にセガがゲーム機事業からの撤退を宣言した後のドリームキャスト末期の作品であり、これも15万本ほどの売り上げに留まった。
その後、『シェンムーオンライン』『シェンムーIII』等が企画されるが、遂に発売に至ることはなく、ストーリーは未完のままとなっている。鈴木裕のセガ退社後の2010年、モバゲーからソーシャルゲームとして『シェンムー 街』が配信されたが、約1年でサービスを終了した。
システム
基本パートは街中を探索してNPCに話しかけたり、オブジェクトを調べたりして情報収集を進める3Dアドベンチャーゲーム。『一章』では1980年代の横須賀、『II』では同じく香港の街がきわめてリアルかつ緻密に再現されている。街中を行き交うNPC達は全員がフルボイスで、かつ時間経過に合わせて生活し、ストーリー展開に合わせてセリフも変わっていく。街中のオブジェクトに関する小ネタも豊富であり、例えばゲームセンターの筐体を調べると、『スペースハリアー』『ハングオン』などの往年のセガの名作タイトルが実際に遊べたりする。また実在の企業とのタイアップも行っており、街中にコカ・コーラの自動販売機が並んでおり、実際に買って飲むことができたりする。今でこそGTAシリーズなど、こうしたリアルな街中で自由な行動が楽しめるゲームは珍しくないが、当時としては画期的なものであった。
ストーリーが進むと、突如一定時間内に決まったボタンの入力を求められるミニゲームや、バーチャファイター風の格闘ゲームに挑む場面もあり、謎を解き明かして進んでいく。
ストーリー
主人公芭月涼の父親である芭月巌が、かつて中国で手に入れた2枚の銅鏡「龍鏡」「鳳凰鏡」が物語の鍵となる。
一章
1986年の横須賀。主人公の芭月涼が自宅の柔術道場に帰ると、門人らがなぎ倒され、道場の奥で父親で道場主の芭月巌と、謎の中国人(藍帝)がにらみ合っていた。父親を助けに入ろうとする涼だが、逆に男に人質に取られ、父は殺され「龍鏡」が奪われてしまう。
一歩遅く芭月家に香港から、「鏡が狙われている。陳大人を頼れ。」との手紙が届く。復讐を誓った涼は、奪われずに残った「鳳凰鏡」を手に、横須賀の街を舞台に陳大人の消息を探し始める。
II
苦心の末に、香港にいるという桃李少老師を訪ねることになり、渡航する涼。様々な困難を経て父の敵である藍帝に近づいていくが、旅の途中で立ち寄った村で玲莎花(シェンファ)という少女と出会う。その姿は、横須賀時代から涼の夢に度々現れた不思議な少女そのものだった…。
評価
莫大な制作費を回収できず、ストーリーも未完のままと商業的には完全な失敗に終わった本作であるが、前述のような緻密に表現された街で繰り広げられる冒険の世界観は評価が高く、根強いファンも多い。文化庁メディア芸術祭デジタルアート部門優秀賞などを受賞した。海外でもその世界観の評価は高く、スティーブン・スピルバーグが本作を評価したことでも知られる。