概要
メソポタミア神話最大の英雄譚『ギルガメッシュ叙情詩』に登場する野人。
英雄王最大の親友であり、横暴だったギルガメッシュを名君へと導いた良き相棒でもある。
まだ若く横暴だったギルガメッシュを諌めるべく神々が生み出した存在で、生まれた当初は毛むくじゃらで野獣同然の存在であった。
その後、神殿の巫女との出会いを経て人間らしさを身につけ、ギルガメッシュと死闘を繰り広げ、その果てに互いに実力を認めあい、親友として絆を紡いでいくことになる。
その人生
誕生
神々はまだ若く暴力的なギルガメッシュを諌めるべく、エンキドゥを生み出す。
しかしエンキドゥは有り余るエネルギーゆえに野獣そのものとなり、地上に解き放たれてからは森で獣たちと暮らすようになってしまう。
そこで神々は一人の神殿の巫女に神託し、エンキドゥを誘惑するよう言い渡す。巫女はエンキドゥが獣たちと暮らす森へ向かい、彼を見つけてを誘惑して六日七晩ものあいだ床を共にする。過剰なエネルギーを巫女との交わりですべて吐き出したエンキドゥは、体の毛が抜け落ち、人間と変わらない姿へと変貌したという。
エンキドゥは獣たちが自分から逃げ、その言葉も聞こえなくなったことから、自分が別の存在になったことを悟る。その後、巫女から様々な知識を教えてもらい、自身の使命であるギルガメッシュとの対決へと向かった。
ギルガメッシュとの出会い
町で暴れていたギルガメッシュと出会ったエンキドゥは、彼に決闘を申し込む。
しかし三日三晩に及ぶ死闘の末にも決着せず、結局は互いにくたびれて引き分けとなった。
このことで自分より強いものがいることを知ったギルガメッシュは、自分の傲慢さを顧みるようになり、それに気づかせてくれたエンキドゥを友として迎え入れた。
その後、二人は王国の民を苦しめる魔人フンババの退治に向かい、その道中の多くの苦難を共に乗り越え、遂にフンババの討伐に成功する。
イシュタルの姦計とエンキドゥの最期
この活躍を見ていた豊穣の女神・イシュタルは、ギルガメッシュに惚れこみ、彼を自分の恋人にしようと誘惑する。しかしイシュタルの放埓さを聞き及んでいたギルガメッシュは、彼女を相手にせずにそっけなく振ってしまう。
これに腹を立てたイシュタルは、報復とばかりに「天の雄牛」を他の神々に黙って地上へ解き放ち、王国の市中で大暴れさせる。そのときに市中で雄牛と居合わせたエンキドゥは、これを見過ごすことができずに雄牛と戦い、のちに援護に来たギルガメッシュとともに雄牛を斃してしまう。
二人が神の所有物である雄牛を斃したことで、イシュタルはこれ幸いにとばかりにギルガメッシュとエンキドゥを断罪するよう他の神々に訴える。
結果、神々はギルガメッシュの命を奪うことを決めたが、それを聞いたエンキドゥはギルガメッシュの身代わりとして死ぬことを申し出、神々もそれを受け入れる。
神々の呪詛で日々弱っていくエンキドゥの元に、かつて自分を人間にした巫女が現れ、エンキドゥは彼女を責めてしまう。しかし彼女はエンキドゥにギルガメッシュという"親友"の存在を示し、その一生は幸福ではなかったかと説いたのだった。
死の間際、エンキドゥはギルガメッシュとともに生きた時間を誇りに思いながら、人生最大の友にみとられこの世を去った。