概要
アイヌ民族の言語。
いわゆる共通語に相当するものが定められていない。初学者には日高地方あたりのアイヌ語が教えられることが多い。
北海道の地名にはアイヌ語由来の名称が多い。北東北にもアイヌ語由来と思しき地名が散見される。日本の地名には由来不明のものが多いため、語源をアイヌ語に結びつけられることがしばしばある(例えば、『富士山はアイヌ語の「フチ(火)」から来ている』などと言われる)が根拠薄弱な決めつけが多く、アイヌ語の知識があれば間違いだと判断できる信用できない俗説がほとんどである(この場合、火の神「アペフチカムイ」の「フチ」は「老婆」という意味である)。
北海道の地名の多くがアイヌ語由来だからといっても、その語源解説はでたらめであることがしばしばである(実は北海道の地名には、日本語由来かアイヌ語由来かよく分かっていないものも多い)。
名詞には日本語と似たものも多くあるが、その大半は明らかに日本語由来のものである(「ペコ(牛)」「シロカネ(銀)」など)。それ以外の「トチ(栃)」「カリンパ(桜の樹皮。桜と樺(カバ。古語で「かには」)は樹皮の用途が近い)」などは、どう関係しているのかよく分かっていない。
発音は似ていないほどではないが、文法は全く異なるので、日本語と類縁関係があったとしても、非常に古い時期まで遡らないといけないと考えられている。
発音
アイヌ語には、日本語の濁音に当たる発音や、中国語・韓国語の有気音・無気音に相当する子音が無い。
その代わりと言っちゃ何だが、日本語や韓国語に無い二重母音が存在する。
音節末が子音で終わることも多い。その場合、「表記」の項目にあるような専用のカタカナを使う。
表記
アイヌ語は近代になるまで文字表記を持たなかったので、世の趨勢によりローマ字かカタカナで表記されることになった。今はカタカナの方が一般に使用される。
日本語にはほとんど(あるいはまったく)使われないカタカナがある。
カ行の「ㇰ」、サ行の「ㇱ・ㇲ・セ゚」、タ行の「ㇳ・ツ゚・ト゚」、
ナ行の「ㇴ」、ハ行の「ㇵ・ㇶ・ㇷ・ㇸ・ㇹ・ㇷ゚」、
マ行の「ㇺ」、ラ行の「ㇻ・ㇼ・ㇽ・ㇾ・ㇿ」。
文法
アイヌ語は人称変化が非常にやかましい言語である。
動詞に一人称・二人称・三人称があるほか、名詞にも一人称・二人称・三人称がある。
ややこしいことに、人称変化は語末変化だけではなく、語頭にも接頭辞を付ける。
当然のごとく、単数形と複数形が存在する。
語順は、日本語と同様の「SOV」形式を基本とする。
物体そのものを表す「一般名詞」と、物体が行動の舞台になっているときに使う「場所名詞」が存在する。(英語のhouseとhomeのようなものと理解すると分かりやすいかも。)
アイヌ語由来の単語
オットセイ:アイヌ語から中国語経由で日本語に入ったとされる。
イタク 話す あるいは言葉。「祈る」がカムイタク(カムイ イタク)なので「「神に物申さく」というニュアンスの神聖な言葉」説がある。柳田國男先生はその説からイタコ、イチコ等の方の巫女の呼称起源説を取っていたが、フォロワー批判派全員しかとこいている。