概要
哺乳綱食肉目イタチ科カワウソ亜科ラッコ属に分類される哺乳類。
海棲のカワウソで、北半球の寒冷な海に棲息している。英語ではそのまま「sea otter(海のカワウソ)」と呼ばれる。漢字でも「海獺(=海のカワウソ)」または「猟虎」となるが、前者は「うみうそ」という読みを宛ててアシカを指すこともある。
群集性があり、住処となるジャイアントケルプと言う海藻が繁茂する、波の穏やかな海域を好む。通常は人間で言う「背泳ぎ」のスタイルでぷかぷか浮いている。
食性は肉食で、ウニやカニ、貝類が主食。魚や海鳥を捕食することもある。摂食行動の際、腹に石を置いて貝やウニを撃ちつけ砕いて食べたり、岩についたアワビを捕らえる為に石をぶつけるなど、簡単な道具を使う習性がある事で有名。
個体ごとにお気に入りの石があり、同じ石を使い続ける。脇の下辺りにポケットがあり、普段はそこに石をしまう。
1980年代から各地の水族館での飼育がスタート。その愛らしい姿から人気があったが、非常に大食いで餌代が高く付く上に神経質な面があるため、飼育・繁殖は難しいのが難点。またその繊細な神経、ミルクの調整の難しさ等から人工哺育の成功例も極めて少なく、青森県の浅虫水族館で母親の急死により人工哺育された個体は、夜間飼育員が不在になった際の寂しさによるストレスで意識不明になった事もある。
上記の点に加え、飼育個体の高齢化や、繁殖能力の低下によりピーク時には全国で122頭いたラッコは2022年5月時点で3頭にまで激減。アメリカからのラッコの輸入が禁止されていることもあり、水族館で今後見られなくなる可能性が高い。
- 一応、2016年ごろから北海道南東部の襟裳岬などで野生個体の繁殖が確認されている(後述の通り、日本列島では一時期絶滅したとされる)ため、そこで保護されたラッコを水族館で飼育できないかと現在検討中だが、それでもそこまでたどり着くのに20年~30年はかかるのではないかとされている。
前述の通り大食いで、北の冷たい海で体温を維持するエネルギーを得るため、一日あたりの食事量は体重の4分の3にも達する。北海道のオホーツク海沿岸では養殖していた貝やウニを食べ尽くしてしまう事もあり、漁業関係者との軋轢が絶えない。
反面、昆布を根こそぎ食い荒らすウニを片端から退治してくれるため昆布漁業者を含む昆布業界からは有難がられている。
ラッコがいなくなった地域では、いずれ中身のないウニがのさばり昆布も貝類も消えてしまうという。
ステラーカイギュウの絶滅の原因の一つにラッコの乱獲によるウニの激増があるともいわれる。
""アワビの大量採取による影響を無視して、ラッコが増えればアワビが減るという因果関係でこの状況をとらえる向きもある。しかし、生態学者の視点で見れば、ラッコはむしろアワビの一番の味方だ。(中略)ラッコがいない海ではウニが猛然と繁殖し、ケルプの消滅でアワビは打撃を受けるのだ。””
毛皮が優良で密猟の被害にも晒されている。
日本でも戦前までは高級毛皮の代名詞だったが、絶滅が危惧され始めたことで早くも明治時代から保護運動が始まり、密猟を取り締まるようになっていった。というか、一時期は日本沿岸では絶滅したともされていた。
(宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のジョバンニのあだ名「ラッコの毛皮」は当時のこの世相を反映しており、“密漁者の息子”という悪口を意味する)
昨今は上記に加えてタンカーから漏れた重油汚染による被害も被っているようだ。
亜種
- チシマラッコ
アジアラッコとも言う。主に千島列島やカムチャッカ半島沿岸に生息し、時折北海道にも現れて漁場を荒らし問題になる。本亜種は日本近海に棲む唯一のラッコであり、単にラッコと言う際は本亜種を指す。体格は3亜種の中で最も大きく、かつ鼻が一番小さい。
- アラスカラッコ
アラスカ沿岸やアリューシャン列島に生息。体格は3亜種の中では中間に位置する。見た目からは分からないが、3亜種の中では下顎が最も長い。日本で飼育されているのは全て本亜種である。
- カリフォルニアラッコ
カリフォルニア州沿岸に生息。3亜種の中で最も南方に棲む。体格は3亜種の中で最も小さく、かつ顔がとても細長い。
外部リンク
ワールド・イズ・ブルー 第4回 海のシステムを支える生き物たち
ライブカメラ
関連タグ
カリフォルニアラッコ(けものフレンズ) アラスカラッコ(けものフレンズ)
ビーバー…混ぜるな危険