概要
国鉄C10形蒸気機関車(こくてつC10がたじょうききかんしゃ)は、1930年(昭和5年)に製造された、日本国有鉄道(国鉄・製造時は鉄道省)のタンク式蒸気機関車である。
特に決まった愛称はなく、シージュウと形式どおりに呼ばれる事が多い。
誕生までの経緯
第一次世界大戦終結後、日本は深刻な不況に陥った。その最中の1920年代になると、明治時代製のタンク機関車の性能不足と老朽化が著しくなり、これらの代替車が必要となった。しかし不況のため、経済性や効率性が求められていた。そこで、都市近郊旅客列車用として製造されたのがこのC10形である。軸重がやや大きく、地方線区での使用に難があったため、以後の増備は軽量化を施したC11形に移行している。
運用
当初、東京・名古屋・大阪に配置されて東海道本線などで近郊列車の牽引に従事していたが、後に熊本・奈良などにも配置された。これらの区間は早々と電化されてしまったため僅かな期間で稼動機会を失い1961年末に全車廃車となった。
保存機
8号機が動態保存されており、1997年から大井川鐵道で保存運転を行っている。この機関車は、岩手県宮古市のラサ工業宮古工場専用線で使用されていたもので、廃止後、宮古市内で「SLしおかぜ号」として保存運転が行われていた。しかし専用線は海沿いを走るとはいえ、実際には堤防沿いを走るので海はほとんど望めず、その後運転休止となった。その後、適当なタンク機関車を探していた大井川鉄道(現・大井川鐵道)と譲渡先を探していた宮古市と意見が一致したため1994年に譲渡されたものである。外観はC11形・C12形と同様のタンク機関車だが、リベットを多数使用しているので、古典的な雰囲気が出ている[3]。2008年現在、同機は大井川鐵道で一番調子の良い蒸気機関車として頻繁に使用されている。なお、同機の大井川鉄道への譲渡話は、ラサ工業時代から度々あったというが、最後までなかなか結論が出なかったという経緯を持っている。
他のC10形はすべて廃車解体されているため、このC10 8が現存する最後のC10形である。