電源を切っても内容の消えない不揮発性メモリの一種。一般的にはUSBメモリやコンパクトフラッシュ、
SDカード、メモリスティックなどのメモリカードに用いられる。
概要
一つ一つの記憶素子が電荷を蓄えられるように作られた特殊な電界効果トランジスタでできており、
電荷を蓄える・蓄えないという形で情報を記憶する。データを沢山入れるために電荷を蓄える量を
何段階かに分けることもある。この構造はEEPROMと同じであり、フラッシュメモリもEEPROMの
一種であるが、フラッシュメモリは書き込みや消去がEEPROMと違い、ある単位で一まとめになって
いる。蓄えられた電荷は残念ながらごく僅かずつ漏れてゆくので数十年以上たつと記憶内容が消えて
しまう。特に、高い温度や放射線にさらされる環境下では過酷であればあるほどその現象が顕著になる。
また、書き込み・消去時に(メモリICとしては)高電圧をかけるので、書き込みを繰り返してゆくと
徐々に電荷を蓄えにくくなってしまい、最終的に寿命を迎えてしまう。しかし、一般的な実用途には
差し支えないのでパソコンのBIOSプログラム用ROMからUSBメモリ、各種メモリカードにいたるまで
広く使用されている。ただし、書き換えを全く行わない(又は行ってはいけない)用途については
従来どおりマスクROMやワンタイムROMが使用される事が今でもよくある。(大量生産時の価格が
安く、動作中の意図しない動作による書き換えが行われないため)
ちなみに近年はフラッシュメモリより高速で書き換え寿命も長いFeRAMというメモリが開発されている。
余談
フラッシュメモリを使って高速なHDDとして使用するSSD(SolidStateDisk)というものがある。
HDDに比べると高速で、省電力、衝撃に強いという利点があるが、その反面、高価なのとアクセスするに遵い
素子の劣化・寿命によりトリミングという処理が加わりアクセス速度が落ちていき、最後にはアクセス
できなくなってしまう。そのため、ネットブックなどにはその利点からもってこいの用途であるが、逆に
サーバー用途にはその欠点から不向きである。
ちなみに、高額品では高速アクセスするために一般的なSerial-ATA接続ではなくPCI Express×16接続
のものもある。(PCI Express×16はAGPとは異なりあくまでPCI Expressレーン数が16本のバスなので
接続するものはグラフィックボードに限らない。)
主に安物にて生ずる現象であるが、多数の少量データ書き込みの際(起動時のログや設定データ
書き込みなど)に素子劣化を均一にさせるためのデータ分散に時間がかかってしまい、一時的に
フリーズしたかのような現象が起こることがある(俗に言うプチフリーズ)ので素子へのアクセス
そのものはHDDより高速とはいえど注意が必要である。
またこれはSSD全般に言えることであるが、書き込みの仕組み上、素子へ最初に書き込むときは
書き込みのみ行われるが、2回目以降は一旦消去しないと素子へ書き込みが行えないので、初回は書き込みが
速く、それ以降は初回に比べ遅くなるという現象が起こる。その点も注意が必要である。
産業向け機器や公衆端末の様に機械的に動作する部分を減らしつつ高速アクセスしたいけど、データ
アクセスによって寿命が短くなっては困るという欲張りな用途にはOS本体を仮想ROMデータ化して
頻繁にアクセスするシステムデータを別の記憶媒体などに書き込めるように専用のソフトでOSを
カスタマイズしてSSDに格納するという方法を使い、SSDへのアクセスをできる限り無くしてSSDの
寿命を長くして使用する例がある。例→ROM-Win(どちらかいうと個人よりも法人向けのサイト)
昔のコンピュータ機器に使われていた俗に言う「窓付きROM」というものがあり、これはUV-EPROMと
いって電気的な書き込みを行い、紫外線を照射して消去を行うものである。これは、素子のその構造から
フラッシュメモリ(≒EEPROM)のご先祖様に当たる。しかし、書き込みの際にフラッシュメモリと同様に
素子へ負担がかかることと使用用途などから分散書き込みをしないため書き込みは数十回程度しかなかった。
運用時は外来光による誤作動や紫外線によるデータ消失を防ぐため、窓に専用のシールを貼って目隠しをする。
ちなみに、フラッシュメモリでも書き込み寿命はどんどん長くなっているとはいえ、頻繁な書き込みを
想定していないもの(マイコン内蔵プログラムROM用フラッシュメモリなど)は書き込み寿命が大体数百回
程度しかないものもある。