「私は権力を持った人たちに常に問いかけていきたいのです。兵士たちを死地に送り込んであなたたちはどこで何をしているのかと?」
声優:小山茉美
概要
学生時代から、ヤン・ウェンリー、ジャン・ロベール・ラップの共通の友人であり、後にラップと婚約を果たす。ラップの戦死後は反戦運動に力を入れていた。ハイネセンスタジアムにおいて、クーデターを批判する平和集会の最中に割り込んできたクリスチアン大佐に対し、痛烈に反論した結果、逆上され銃床で殴殺されてしまう。
略歴
学生時代
ジェシカは、士官学校時代のヤンとラップとの交友を持っていた。この際ジェシカは密かにヤンに思いを馳せていたが、その気のないヤンと、情熱的なラップの態度によってその後を運命づけることになる。
ラップの殉死
ジェシカは、アスターテ会戦において婚約者であるラップに先立たれた事から、トリューニヒト国防委員長の演説中継に乱入する。トリューニヒトに対し「兵士たちに戦争を命じる、あなたはどこにいるのですか?」と質問を投げかけたのちに退場させられる。
その後、路上でタカ派の過激派グループ憂国騎士団に襲われるが、中継を見て事件を知ったヤンに助け出される。襲撃をトリューニヒトの差し金と考えたヤンは、トリューニヒトに借りを作る形でジェシカの安全を約束させた。
テルヌーゼン選挙出馬
ジェシカは反戦団体「反戦市民連合」に身を投じ、惑星テルヌーゼンの代議士選挙にジェイムズ・ソーンダイク議員を擁立する。しかしヤンがトリューニヒトへの借りを返すために、対立候補と握手したことから、ソーンダイク議員が劣勢に立たされてしまう。激怒した反戦市民連合の参加者たちはヤンを襲撃し暴力を振るうが、ジェシカがそれを制止する。ジェシカは、ヤンが仕事として対立候補の支持をしなければならない事に理解を示した。
この夜、ヤンが憂国騎士団とみられる暴漢に襲われていた反戦市民連合員のを助けた事から、二人は再び再会する。ジェシカは学生時代のヤンに対する思いを打ち明けた。
この際、反戦市民連合員たちはヤンとソーンダイク議員とが写った写真を「主戦論者に一泡吹かせるため」に利用しようとしたが、再びジェシカに制止された。
その後、ソーンダイク議員が何者かのテロによって倒れ、ジェシカが支持層を引き継ぐ形でテルヌーゼン補欠選挙に出馬した。ジェシカは、劇的なテロ によって支持率を一気に押し上げ、有効投票数の80%を獲得して当選した。テロの犯人は最後まで分からなかった。
ヤンはテロに関するのメディアの取材に対し「共和政治への冒涜であり、主戦論者のはねっ返りの仕業だろう」という旨の意見を述べている。しかしジェシカ圧勝の報道を見た際のヤンは、ドワイト・グリーンヒル統合作戦本部次長との会話で、誰の差し金かを訝しがっている。
スタジアムの虐殺
有権者がトリューニヒトなどを支持する状況に不満を抱き、このままで政治が腐敗してしまうのではないかと危惧した軍人たちが「救国軍事会議」を名乗り武装発起し軍事政権を立ち上げる。その際、ジェシカ・エドワーズら野党議員の呼びかけで、ハイネセンスタジアムにおいて平和と自由を回復する市民集会が開催される。参加者は20万人を超え、暴力によって社会を統制するクーデターを糾弾した。
救国軍事会議の首班ドワイト・グリーンヒル大将(査閲部長)は、集会を解散させるために向かったクリスチアン大佐に「くれぐれも穏便に」と念を押している。しかし会場に向かった大佐は、武器無き平和を否定し、「死ぬ覚悟もないのにデカい口をききやがって!」と叫び、クーデターを糾弾する市民を殴りつけた。命を賭して政治を正そうとする自負に基づくクリスチアンの発言に対して、ジェシカは痛烈な批判を投げかけた。
「死ぬ覚悟があればどんなひどい事をやってもいいと言うの? 信念さえあればどんなひどい事もどんな愚かなこともやっていいと言うの? 暴力によって、自ら信じる正義を他人に強制する人間は後を絶たないわ。銀河帝国を作ったルドルフも。そして大佐、あなたも!」
この反論に激怒したクリスチアン大佐は観衆の前にも関わらず、銃床を使ってジェシカの顔を何度も殴打、殴殺してしまう。これを機に、民衆は不満を爆発させ、世にいうスタジアムの虐殺が展開することとなる。
後にヤン・ウェンリーはこうした"信念"について考えを述べている。
「固い信念なんてもんはかえって信用おけんね。だいたい戦争なんてものは固い信念を持った者同士が起こすんだから」 - ヤン・ウェンリー
「あなたは今どこにいますか?」
「私は権力を持った人たちに常に問いかけていきたいのです。兵士たちを死地に送り込んであなたたちはどこで何をしているのかと?」 - ジェシカ・エドワーズ
この言葉は死地に赴く兵士やその家族の立場から、戦闘を指示する政治家を批判したものである。自らを死地に置かない人間に戦争を行う資格はないとしたもの。
平和主義的な立場から発せられた思想ではあるが、しかし作中でこの思想を実践したのは、時に私的な感情から戦争を仕掛ける専制君主ラインハルトや、ジェシカを殺害した救国軍事会議であった。
ジェシカは、兵士とともに死地に身を置く救国軍事会議に対し「死ぬ覚悟さえあればどんなひどい事をやってもいいの?」と述べている。
ジェシカが厚い信頼を寄せていたヤン・ウェンリーでさえ、軍事力と政治権力の剥離、シビリアンコントロールの重要性を常に訴えており、自らが政治権力を手にすることはついになかった。ジェシカとヤンの思想の行き違いが、結果としてイゼルローンの政治代表となったフレデリカ・グリーンヒル・ヤン夫人を助ける事になるのは、ジェシカの女としての奇運である。