概要
「ライラプス」とは、ギリシャ神話に登場する犬。
狙った獲物は決して逃さないという運命に定められた猟犬である。
ゼウスから愛人のエウロペに贈られたとも、女神アルテミスが猟犬として従えていたともいうが、いずれにせよめぐりめぐってアテナイ王子ケパロスのものとなった。
そして、テーバイの国を荒らしていたテウメッサの狐を退治するために貸し出されることになる。これは家畜や田畑を荒らすばかりか人間の子供まで襲う化け狐で、人間たちは捕まえようとどんな策を講じても無駄であった。それもそのはず、この狐は「何ものにも捕まらない」運命を神々から授けられていたのである。この狐を退治するための切り札としてライラプスの出番となった次第である。
「狙った獲物は決して逃がさない」犬に「何ものにも捕まらない」狐を追いかけさせたらどうなるか……という、とある故事成語のギリシャ神話版ともいうべき状況が出現したのだった。それぞれの運命にしたがい、犬が捕まえることも狐が逃げ切ることもかなわず、追いかけっこが永久に続くかと思われた。
だが、これを見かねたゼウスが両者を石に変えた。どちらの運命にも逆らわぬ仕方で追いかけっこの状況を固定したのであった。
なお、ライラプスの方はおおいぬ座として天を飾ることにもなったという。