概要
今から200年前フランス、キュベロンのクローグ村外れの館に一人の男が住んでいた。
村とは交流もなく、村人も気味悪がって近づくこともなかった。
だがある日男はフランシーヌ人形と4体の動く人形を伴い村を襲撃した。
村人が人形たちに次々と惨殺されていく様を男は笑いながら見ていたが、フランシーヌ人形はただじっと惨劇を見つめているだけだった。
村を滅ぼしても結局フランシーヌ人形は一度も笑うことはなく、男はそれに失望し、フランシーヌ人形の首を絞めて去って行った。
フランシーヌ人形は男が残した研究を元に疑似体液を作り出し4体の人形に与え再び動かした。
そして自分が笑えなかったから捨てられたのならば、一緒に笑える方法を探してほしいと訴えた。
こうしてフランシーヌ人形と4体の人形たちは笑う方法を探して旅に出た。
旅の中新たに仲間を作り出して次第にその数を増やし、「真夜中のサーカス」と呼ばれる大集団にまでなった。
彼女は「真夜中のサーカス」の団長であり、アクア・ウイタエによって作られた唯一の人形で、ゾナハ病を止める方法を知る唯一の人形でもある。
頭には創造主によってモデルとなった女性が遺した毛髪が植毛されている。
「フランシーヌ人形を笑わせる」ことこそ自動人形が唯一存在する理由であり、彼らを動かす機構である。
それ故に自動人形たちは彼女を絶対的女神のように崇拝し、彼女の命令は絶対に逆らえない。
「しろがね」たちにとってこの人形を破壊することが最大の目標であり、「真夜中のサーカス」を壊滅させる唯一の方法だと考えている。
人間の生き血を啜り、ゾナハ病をばら撒く自動人形の首領であるため、いかにも邪悪な存在であるかのように思われているが、実は彼女自身は人間に対して悪意はない。
人間を苦しめているものの、それは創造主の男がそうやって笑わなかった彼女を捨てたためであり、それが笑う方法だと思い込んでいるに過ぎない。
物語中の「しろがね」と「真夜中のサーカス」の最終決戦にて、ついに鳴海が4体の人形をも退けフランシーヌ人形の前に立った。
この戦いで大多数の自動人形を破壊したが、同時にほとんどの「しろがね」も戦死してしまった。
志半ばで倒れていった多くの「しろがね」たちの無念と想いを背負い、自らも大きな代償を払ってやっとそこに立った鳴海。
だがフランシーヌ人形の最後の告白はその全てを無残に打ち砕くものだった・・・。
元ネタはおそらく、哲学者デカルトが夭折した愛娘を模したフランシーヌ人形。デカルトはこの人形を肌身離さず持ち歩いてかわいがったが、スウェーデン行きの船で水夫に悪魔の人形と間違えられて海に捨てられてしまった。
関連項目
ネタバレ注意
多くのしろがねが死に、自動人形が残骸を晒す死戦を経て自身の元へたどり着いた鳴海に、玉座に腰掛ける人形が真実を語る。
「わたしは…西暦1909年、フランシーヌ様によって造られた。」
「ワタシ ハ フランシーヌ サマ ニ ツクラレタ ニンギョウ デス」
真夜中のサーカスの中心に座り、しろがねはおろか自動人形、その最高位足る最古の四人でさえフランシーヌニンギョウだと思われていた彼女は、本物のフランシーヌ人形が造った偽物だった。
90年前、百年以上も自動人形を率いて笑えるようになりたいと旅を続けてきたフランシーヌ人形は、造物主も見つからず、幾ら人間に苦痛を与える自動人形を見ても笑えぬ現状に対し、身体の動きや思考速度の遅延が起きたことでそれが人間における「疲れた」というものだと理解し、この世から消滅しようと考えた。
しかし、残される自動人形達が惑う事を憂いた彼女は影武者を作り、真夜中のサーカスの団長として彼らを慈しみ、労う事を託した。そして自身は壊してもらうため、そしてただ会いたくなってみた気持ちのまま、しろがねのマリオネットを作る東洋の人形づくりの一族へ赴いた。
影武者のフランシーヌは、ゾナハ病の治し方は本物のフランシーヌ人形しか知らない事、最古の四人をも打ち破り自身の前に人間が立った時、役目を終えた自分は停止する事を告げ、しろがねの激しい感情を目の当たりにして造物主の気持ちを理解し、「疲れて」しまった彼女は永遠にその動きを止めた。