加藤鳴海
かとうなるみ
CV:小山力也
「からくり編」の主人公。
中国武術・形意拳の使い手。直情的な熱血漢。18歳(作中で誕生日を迎え、19歳に)だが、年の割に見た目が老けており、年齢を言うと誰もが驚く。
海外を股にかける商売を営む裕福な家庭に生まれ、幼い頃は今とは似ても似つかない些細なことで泣いてはいじめられていた軟弱な少年だった。しかし、母の出産を期に兄としての自覚が芽生え、生まれ変わるべく中国武術を習い出す。
しかし、そんな出産への期待も流産で終わり、母も二度と産めないという最悪の結末を迎える事となる。
その事に絶望して武術をやめようとするも、師からの教えと激励でいつか生まれ変わってくる弟を守れるよう、武術の継続を決意する。この経緯から、子供を守り、命を軽く扱うことを許せない人格を形成。
彼の武術の実力は絶やさない鍛練の成果の「努力の天才」であるが、彼の場合、強くなるためにきつい鍛練を耐え抜くのではなく、努力や鍛練の意図の先の技や技術の理を理解し、必要なときに確実に取り出せるよう習得する事を目的に正しく努力を成し遂げるタイプである。
開幕初期は、人を笑わせないと生きていけない「ゾナハ病」に罹っていた。
鳴海自身は全くもって人を笑わせる事に向いていない為、作品連載当初は無理に人を笑わせようとして空回りする姿が度々滑稽に描かれた。
才賀勝の遺産相続にまつわる事件にたまたま勝を助けたことで巻き込まれ、しろがねと共に奮闘した。
しかし倒壊する建物に巻き込まれ、左腕を遺して行方不明となる。
その際、部分的な記憶喪失に罹り、ゾナハ病患者になって日本に帰国してから左腕を失うまでの記憶を失う。
その後、「しろがね」のギイに命を救われ、「生命の水(アクア・ウイタエ)」で「しろがね」となる。
ギイより、左腕には折りたたみ式大型仕込み刃「聖・ジョージの剣」を備えた義手が取り付けられ、自動人形との戦いでは強力な武器となった。(アンゼルムスに聖・ジョージの剣は折られたため、射出可能な鎖に繋がった小型ブレードになった)
しかし「しろがね」になっても熱血漢のままだった鳴海は、感情を出さず冷淡な「しろがね」たちに嫌悪感すら覚えていた。
だがレイ疫病研究所に訪れた際に、ゾナハ病に苦しむ子供たちの悲惨極まる現実を目にした鳴海は子供たちに何もできない自らの無力さを嘆く。
そして全ての元凶たる自動人形にとっての「悪魔」になると誓った。自らの心を殺し、真夜中のサーカスを壊滅させるまで。
その後経験する多くの犠牲を出した戦いが無駄だったと知り、鳴海は人の心を失っていく。
しろがねが少しずつ人の心を獲得していくのとはまるで正反対に。
鍛え込まれた肉体と中国在住時に学んだ形意拳という拳法を駆使した肉弾戦を得意としている。他のしろがねがマリオネットを使って自動人形と戦っていることを鑑みると異色とすら言える存在だが、これには理由がある。
自動人形はその製造理由から観客(≒武器を持っていない者)の前では目にも止まらない速度で動くことが出来ないことに加えて、ゾナハ病の元凶であるゾナハ蟲を液状化させた疑似体液によって活動しており、これに中国武術などで使われる発勁のような”気”をぶつけると体液が沸騰し機能停止に追い込まれてしまうのである。
サハラ砂漠での「しろがね」と「自動人形」との最終決戦において、激闘の連続によって大量失血した際に手足が崩壊してしまったが、彼に感銘を受けた他のしろがね達の手によって救命され、失った手足は彼らの使用していたマリオネットの手足に置換された。
この結果四肢の全てを機械に変えたサイボーグ戦士となってしまったが、鳴海本人はしろがねたちの思いのこもった絆の証として大切にしており、しろがねの一人であるフウに生身に近い義手の装着を提案されたが断り、寸法の調整程度の改修で済ませている。
左腕 | あるるかん | 聖・ジョージの剣(射出可能なブレード) |
---|---|---|
右腕 | マンバ | 内蔵されたピストンによるパンチの加速 |
左脚 | スレイプニイル | 車輪による走行 |
右脚 | ペンタゴナ・ノッカー | 高い跳躍力と強力な蹴り |
勝率は高く鳴海が戦った相手は殆どが敗北している。鳴海が勝てなかった(倒せなかった)相手は、”気”が通用しないコロンビーヌくらいである。
そのコロンビーヌとは対決というほど戦っていないので、どちらが強いとは安易に言えない。
読者の間で「鳴海はラスボスに勝てるのか?」というのが度々議論される。というのもラスボスは機械を分解する特技を持っているためサイボーグの鳴海では不利という考察があるため。
しかも作者によれば「鳴海はラスボスを倒せても改心させられない」という発言がある。
言ってしまえば鳴海が欲し、持ち得た『力』は所詮腕力であり、歪んだ精神性に起因するラスボスの悪事には正対する類のものではない。また鳴海の言動を見る限り戦術的な洞察力を除いて人間観察力など(ギイの揶揄いを抜きにしても)の知性があるとは言い難く、熱血で直情的な彼の性格を考えても鳴海の最終的な解決法は論戦にも知略にも寄らず、結局拳が飛び出す羽目になっていたであろう。
そして元は只の一般人でしかなかった鳴海は残酷な戦いに耐え得るほど精神力が無く、しろがねやゾナハ病の子供たちに対する反応を見ても、ゴツい外見に反して非常に繊細で感じ易い心の持ち主である事も判明している。
作中で見せた怒りや憎しみ、自責の念や虚無感といった負の感情にも染まり易く、本来修養を目的とする武道を学んだ身ながら作中時点では未熟な精神を克服できていなかった、あるいは勝と違って天井が見え始めた大人に近いキャラ故に、事を柔軟に考えることができなくなっていたとも考えられる。
とはいえ最終的にラスボスの暴走を食い止めるためには、罪を重ね犠牲者を出し続けた相手を憎まず共感出来る者でなければならなかった。白銀の記憶を得て憎しみ以外の感情を抱けた勝自体が主人公補正の塊みたいなキャラなので、あまり責められない事情もあることは考慮されたい。
ストーリーを俯瞰すると、からくりサーカスの最終目標の1つはエレオノールの幸せであり、そのためのフラグは『鳴海を救う』ことなのだが、中盤以降で殆どの登場人物はエレオノールを優先してしまい、鳴海は最後の最後まで救われることはなかった。
女性よりも先に男性を救わなければならない、恋物語のセオリーに反した盲点にエレオノールを救いたかった者は誰も鳴海の傷に眼を向けられていなかった。たった1人、鳴海のことをエレオノールと等しく大切に想い、彼が救われなければ耐えられないほどに慕った少年以外は。
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