あらすじ
銃砲刀剣類不法所持、火薬類取締法違反で逮捕された漫画家ハナワ。拘置所から刑務所の雑居房までの実体験、そして個性溢れる囚人達との交流と刑務所内の生活が描かれる。大の大人が小学生のようなふざけ合いをしていたり、しょうもない事で話が盛り上がっていたらいたで時に看守に怒られてしょげたり、刑務所の食事に感動と不思議な世界があった…。
解説
1994年に銃砲刀剣類不法所持、火薬取締法違反で収監されていた花輪和一が自身が付けていた日記・メモ・記憶力(と、多少の取材)で克明に拘置所・刑務所の服役生活を描いたエッセイ風漫画作品(一応フィクション)であるのだが、これまで存在した獄中漫画のように極端なバイオレンスな事もサスペンスもない、ハナワ視点でどこか牧歌的な描写で描かれている。むしろ、花輪作品の中でも異質だとも言われている(花輪和一の作風は彼の項目を参照)。ハナワが主役ではない別の受刑者の話もある。
こういった作風の為か花輪作品を知る人にとっては意外なものとなっている。
山崎努主演で実写映画化もされている。
基本的には彼視点で語られる為、ハナワのモノローグも交えており食事の描写では特に「パン食での小倉とマーガリンにフルーツカクテル(フルーツサラダ)」では大袈裟じゃないのかってくらいの感動描写があったりする。例えるならばこれに近いか?
講談社漫画文庫版は青林工藝舎版をベースに描き下ろしが追加されている。
2018年4月28日にはWebコミックサイト・コミクリ!において18年ぶりの新作「刑務所の中2nd もっと願いま~す」の連載がスタートした。こちらでも北海道の刑務所を舞台にしており、前作では工場作業だったのに対して、農畜産の刑務作業の光景を描いている。
登場人物
エピソード「五匹の生活」「免業日」からわかる名前より。
- 128番・小屋:どこか純朴な顔つきの受刑者。早食い。
- 222番・ハナワ(花輪):作者(がモデル)
- 134番・笠山:博識であるが、シャバに娘がいる。彼をクローズアップした「おぼっちゃま受刑者」の回では何故か名前が伊笠になっている。綺麗好きで整理整頓派。
- 124番・田辺:2級受刑者であるらしく免業日の集会で映画鑑賞ができた。
- 62番・竹伏:話の中での描写ではシャバで覚せい剤をやっていた様子。
印象的なセリフ
- 願います! : 刑務作業において監督官に許可をいちいち得なければいけない時。例え机の下に鉛筆を落としても勝手に取ってはいけないのである。ハナワは懲役が終わり社会復帰した時に、つい癖で言ってしまうのではないかと内心思っている。
- ビューだね : 服役していた刑務所が札幌刑務所と函館少年刑務所だった為に北海道の方言で「すごい」の意味。(例:「あ!今日の春雨スープ、具が沢山入ってる!」「ビューだね(すごいね)」)
- アウトですう : 雑居房で同居する受刑者がふざけあってしまい、刑務官からテレビ視聴を1ヶ月禁止を申し付けられた際に用便中のトイレからハナワがそれを見てつぶやいたセリフ。
余談
この様に獄中エッセイ作品でありながら牧歌的ではあるのだが、花輪氏は「二度と行きたくない」とコメントしている。そりゃそうだ。
ちなみに花輪氏は懲役満了の出所ではなく、仮釈放だった為そのまま現在に至る。
作中に何の脈略もなく謎の女の子が何故か一コマだけ混じる事がある。これに関しては特に説明もないので何者かは不明。