「”先ず与えよ”だ」
「・・・強ぇの? そのタグ付き」
「黄昏種(おれたち)は生き残れない」
概要
相棒であり契約主でもあるウォリック・アルカンジェロと共に便利屋を営む男。
「黄昏種(トワイライツ)」という、過去の戦争で使用された生体強化薬により身体能力が異常発達した人間を祖先に持つ人種の一人。
その能力を活かし、便利屋における対黄昏種との戦闘など、荒事を得意としている。
外見
物語の舞台であるエルガストルムにおいて、黄昏種の中では珍しいとされるアジア系の男性。作者曰く、「中華系タイ人とアメリカ人のハーフ」をイメージしてデザインされている。
黒髪に黒い瞳の三白眼を持ち、また169cmという日本人並みの低身長。戦闘中は動き回っているため分かりづらいが、他の人物と並ぶと比較的低いためよく目立つ。度々それをネタに弄られており、本人も気にしている様な描写が見られる。
非常に目つきの鋭い強面であり、戦闘中はよく狂気を感じる独特の笑みを浮かべる。
飛び道具やナイフが主流な街において、現在作中で唯一日本刀を得物とし、常に持ち歩いている。また、黄昏種の証であるドッグタグも身に着けている。
衣服や上着はウォリックとよくお互いの物を無断で拝借し合っている。
背中にはウォリックとお揃いのトライバル(刺青)を入れており、全身には大小様々な古傷が残っている。より特徴的なものとして、腹部には逆袈裟の大きな傷、右掌に小さな切り傷がある。右掌の傷は、過去の事件(後述)の際に負ったもの。
尚、少年兵時代には「AIB069」という型番のようなものが肩甲骨付近に彫られていたが、現在は消されている模様。
人物
彼の一番の特徴として、先天性の全聾(ぜんろう)つまり聴覚障害である事が挙げられる。
「黄昏種」の殆どがその身体能力と引き換えに、短命に加え何らかの「代償(障害)」を負っており、ニコラスの場合は「聴覚」が機能していない。
このため周囲とは手話と読唇によりコミュニケーションを取っている。発声も可能だが少々たどたどしいものであり、また疲れる事を理由に進んで会話に用いることはあまりない。ただし聴力を補うかのように視力が非常に優れているため、遠く離れた場所に立つ相手の唇の動きなども視認できる。
その外見の印象に反し、テオ医院の看護師ニナには「ニコ」と呼び慕われており、よく懐かれている。お遣いに来る彼女と時々一緒に遊んだりしている(からかっていじめることも多いが)。ニコラスはよく炭酸水を飲むが、そのたびに彼女の飲み物も一緒に買ってきてあげるらしい。
そして、なぜか街中の猫という猫に好かれている。特にベティという黒猫は便利屋やテオ医院の近辺を縄張りにしている様子で、彼女もやはりニコラスにご執心である。かつてウォリックとともに所属していたモンローファミリーの弟分からは「ニコ兄」と慕われており、手を貸したことも。
性格としては少々ぶっきらぼうで、いつも大体無愛想かつ無表情。ただしお世話になっている人物や敬意を払っている人物にはそれなりの礼儀を見せる。非常に好戦的でもあり、強い相手を見つけると不敵な笑みを浮かべる。
能力
戦闘時には日本刀を振るい、容赦なく敵を切り刻んでいく。黄昏種において「上級黄昏種(ハイカテゴリ)」と呼ばれるランクを持ち、その身体能力や戦闘技術は高い。
前述した視力に加え、銃弾を刀で捌く反応速度・建物を飛び越える跳躍力など、他の黄昏種と比べても秀でた能力を有している。
それだけでも驚異的だが、彼の戦闘の特徴としては、「自身を顧みない戦い方」が非常に多い。強敵相手に無茶をして、ボロボロになりながらも時間稼ぎに徹したり、相手の刃物を素手でつかんで投げ飛ばしたりと、まるで恐怖がないかのような行動をとる。前述した古傷の多さも、このような行動が原因である。
過去
元はエルガストルムを囲んでいる市のひとつウエストゲートを拠点とする「ウエストゲート傭兵隊」に所属していた少年兵である。任務としてアルカンジェロ家の次男ウォレス・アルカンジェロ(のちのウォリック・アルカンジェロ)の護衛を任されたのをきっかけに、彼と徐々に打ち解けていったが、後にこのアルカンジェロ邸内で大規模な惨殺事件を起こし、ある命令とともにウォレスと主従の契約を結ぶ事となる。
現在もこの契約関係は続いており、ウォリックは複雑な心境ながらニコラスを「相棒」・「ニック」と呼び、「ダチだと思っている」と語る一方、ニコラスはウォリックの”命令”には絶対服従の姿勢を随所で見せ、従属する者として一定のラインを越える様子がない。普段はお互いに軽口や憎まれ口をたたく二人だが、時々言いようのない緊迫感や沈黙が訪れることも。
かつての事件や二人の関係は、あまり単純に言い表せるようなものではなく、契約は二人の間に大きな溝を残している様である。
手話表現
原作では、発声なしの手話は黒く四角い吹き出し、発声ありの手話は白く四角い吹き出しでそれぞれ描写されており、さらにニコラスが発声する場面では級数が異なる写植により彼の声の特徴的な部分も再現されている。
また、本来であれば英語手話(エルガストルムの公用語は英語である)で描かれるべきところを、作者のこだわりによりあえて吹き出し内の言語にあわせ「日本語吹き替え版」として日本語で表現されている。
ネタバレ注意
彼の能力の高さは薬物の使用による強引な身体強化によるもの。本来黄昏種の生命維持に不可欠な投与剤「セレブレ」のうち、身体機能を爆発的に高める「促進剤(アッパー)」の「過剰摂取(オーバードース)」を日常的に行っている。彼のランクはこの状態で格上の黄昏種を強引に倒して得たものであり、本来の彼のランクはB/5級ほど(それでもそこまで低くない)。
そのためそれを知っているものからは「偽物(フェイカー)」と呼ばれている。また、彼の生来の性質である「自信を顧みない性格」に加え、過剰摂取による「痛覚の麻痺」により、戦闘の際には常に傷が絶えない。恐怖すら麻痺しているかのような描写も。
逆に活性化した身体機能を鎮静化させて負担を減らす「抑制剤(ダウナー)」には弱く、たった一発打ち込んだだけで動けなくなってしまう。
黄昏種の薬物を取り扱っているテオ医院は便利屋のお得意先だが、実はテオの新薬の実験にニコラスが協力することで、セレブレの支給をしてもらっている。
そのためニコラスが戦闘で使用する薬物は、本来の濃度や成分を弄ったテオのオリジナルであり、高い効果と引き換えに肉体に多大な負荷がかかる。両者合意の上での協力関係だが、ニコラスの肉体への影響は確実に現れてきている。
テオ医院の看護師であるニナはニコラスの身を本気で案じており、テオのニコラスに対する心ない言動に怒りを見せることもある。