ベンゼン
べんぜん
1.有機化合物の一種。本稿で解説。
2.オワタPによる鏡音レンオリジナル曲。ベンゼン(オワタP)を参照。
概要
化学式C6H6、分子量78の最も単純な芳香族化合物の1つであり。芳香族、ひいては有機化学の筆頭として多くの人に知られる(一部の人には有機化学のトラウマの対象とされる)。
化学的に安定しており、水素-炭素間の置換反応は受け付けやすいものの、炭素間の結合を崩すような付加反応は高エネルギー下でないと起こらない。
様々な芳香族化合物の原料として実験室や化学工業で使用される。しかし、ベンゼンには発ガン性の疑いがあり、有機反応の溶剤として使う場合はトルエンが推奨されることも。置換基をつけて誘導体にしないと少々危険な物質である。
尚、トップイラストのような構造式が広く知れ渡っているが、厳密には炭素間の結合は全て同等で1.5重結合とみなせるため一重結合と二重結合の混合で描くのは正確ではない。
構造的に正しく描くのなら六角形に○を埋め込むように描こう。
ベンゼンの構造の解明
ベンゼン自体はファラデーによって発見され、C6H6という分子式で表されることも分かっていたが余りにも炭素過剰なため構造の特定は困難を極めていた。
発見から約40年後、ケクレによって複数のヘビがそれぞれの尾を咥えて環状になった様子をイメージし、ベンゼンの構造に思い至ったと言われている。ただし、この逸話の真偽については常に議論がある。
芳香族化合物の仲間
芳香族化合物は一般的に芳香臭や特異臭がする物質が多い。
ベンゼンの誘導体
- トルエン:シンナー遊び蔓延の元凶。
- キシレン:3つの異性体がある。
- フェノール:複数のヒドロキシ基を持つものは健康食品として注目されている。
- 安息香酸:ナトリウム塩が食品に利用されている。
- サリチル酸:フェノールとカルボン酸の両方の性質を持っている。
- トリニトロトルエン(TNT):窒素を付加したベンゼンは爆発しやすい。
- アニリン:染料に用いる。ジアゾ化反応からのジアゾカップリングは学生実験の定番の一つ。
- ニトロベンゼン:これといった特徴のない化合物。学生実験ではよくアニリンに還元される
―ベンゼンスルホン酸:これといった特徴のない化合物パート2。ただし強酸性。合成洗剤の親水基としてその誘導体(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、LAS)が活躍している。
縮合多環芳香族
ベンゼン環が多数繋がった物質。
- ナフタレン:ベンゼン環を2個付けてみた。
- アントラセン:ベンゼン環を3個付けてみた。
- ペンタセン:ベンゼン環を5個付けてみたもの。有機半導体として有名。
この他にも、フェナントレン、ピレン、ペリレン、コロネンなどいろんな種類がある。
複素環式芳香族(ヘテロ環式芳香族)
炭素と水素以外の元素を環の中に含む物質。天然の物質として自然界にも存在するものも多く幅を利かせている。
- フラン:某吸血鬼とは一切関係のないのだが、その名前故ネタにされることが多い酸素を含む複素芳香族。反応性は極めて高く、危険。5員環。
- チオフェン:フランの酸素を硫黄に置き換えたもの。これをつなげると電子伝達の分子ワイヤーができたりする。
- ピリジン:炭素を1つ窒素に置き換えた複素芳香族。強烈な悪臭を放つことで有名。
- ピリミジン:窒素を2個に増やしてみた。DNAを構成する塩基、シトシン、チミンの元になる化合物。
- プリン:某ポケモンでもデザートでもないよ、有機化合物だよ。DNAを構成する塩基、アデニン、グアニンの元になる化合物。いわゆるプリン体はこれの誘導体たちのことでもある。また、いろんな人がお世話になるであろうカフェインはこのプリンの誘導体。
その他の芳香族化合物
- シクロヘプタトリエニルカチオン:ベンゼン環に炭素を一つ足してその炭素から水素を一つ奪ってカチオンにしたもの。カチオンの位置が動くことで共役が成立し芳香族性を発揮する。一般的にはトロピリウムカチオンと呼ばれ、トロポン誘導体の分極構造内に表れ、その安定性に寄与する。
- アズレン:某戦艦STGの略称…ではない。その名の通り、有機化合物とは思えないような美しい青色の化合物。実はナフタレンの異性体に当たるが、大学の有機化学の教科書の隅のコラムに登場する程度の扱いなのでその名を知るものは少ない。
反芳香族性の化合物
- シクロブタジエン:ベンゼンは炭素が6つあるが、こちらは4つの物質。ベンゼンと同じようなものに見えるが、反芳香族性という芳香族性と真逆の性質持ち。