概要
昔、沖縄県の西原巻間切嘉手苅村(現:西原町字池田)に、五郎(グラー)という相撲好きの男が住んでいた。この男は琉球王である尚円の密偵であったとも伝わっている。
祭りで神にささげる相撲があると聞くと出かけていき、どこへ行っても負け知らずだった。
西原間切の五郎といえばとても有名で、単に力自慢で粗野な男ではなく三味線や唄も得意とした非常に男前で人気がある人物であったという。
しかし、そんな五郎も人の常として亡くなり御茶多理山(ウチャタイマ)という場所の墓地に葬られたが、五郎の墓では不思議なことが起きるようになった。
亡者たちを呼び集める声や、相撲をとっている声、歓声、三味線や唄が墓の中から聞こえてきたのだという。
人々は「あの五郎のことだから魂が簡単に消えることはなく、亡者たちを集め相撲や三味線、唄で楽しんでいるのだ」と噂し合い、それを恐れて墓に近づかなくなった。
それから年月が経つとさすがの五郎の魂も還るべきところに行ったのか静かになったという。
沖縄では旧暦12月8日をムーチーの日といい、厄払いとして月桃(サンニン)の葉に包んで蒸した鬼餅(ムーチー)を食べるが、西原町安室ではウチャタイマグラーが供物をねだると伝わるため、1日早い旧暦12月7日をムーチーの日とするという。
北中城ではウーシヌハナマグラーと呼ばれ、海岸近くの村を巡ってムーチーを腐らせるといわれるのでやはり日にちはずらされているという。
御茶多理山とは現在の沖縄カントリーゴルフ場手前の丘で、墓の所在は不明になっている。