概要
2018年11月、オンライン小説投稿サイト『小説家になろう』にて連載を開始。作者は天野ハザマ氏。
後にツギクルブックスから書籍化。2020年8月現在既刊1巻。イラストは三弥カズトモ氏が担当。
ガンガンONLINEから漫画版が出版。2020年8月現在既刊1巻。月島さと氏が作画を担当。
落ちぶれ者の見習い冒険者の主人公が、たった1枚の金貨を受け取ったことで運命が大きく変わり、一流の冒険者を目指して仲間達とダンジョンで冒険するファンタジー作品。
なろう小説では比較的珍しい主人公が特別な能力も秀でた能力も無く、出自も貧乏農家(転生も無し)と至って普通の人物で、如何にして強敵や難所を乗り越えて成長するかが見どころの正統派な冒険譚。
あらすじ
フィラード王国の迷宮都市エルトリアにいる落ちぶれ者の見習い冒険者の少年・イストファ。
一流冒険者になる夢を見ながら薬草採りで小金を稼ぐも、それを無法者に掠め取られ路上生活から抜け出せない日々。
それでも腐らず諦めず真面目に生きるイストファ。そんなイストファの目の前に現れたのは1人のライトエルフの冒険者・ステラ。
差し出されたのは、1枚の金貨。そのたった1枚の金貨で、イストファの冒険者生活は大きく変わる。
登場人物
- イストファ
主人公。13歳。
元は農家の四男で、口減らしで追い出されて迷宮都市に流れ着いた落ちぶれ者。一流冒険者になることを目指している。見習い冒険者として薬草採りなどでお金を稼いでいたが、すぐに他の落ちぶれ者達に奪われるため落ちぶれ者から抜け出せずにいたところをステラと出会い、彼女から1枚の金貨を受け取ったことで冒険者として歩み始める。
真面目で優しい上に謙虚な性格。悲惨な境遇でも腐らず向上心を持って働いている姿から、迷宮都市では意外と多くの人々に知られていた。その生い立ちから無学で世間知らずな上、純粋過ぎるため心配されてもいる。また、本人の人柄もあって周りから好かれやすい。
短剣を主要武器として扱う。当初は特別な力を持っているわけではなかったが、戦いの中で急成長を遂げるなど天性の才能を開花させている。一方で作中では珍しい魔力が一切無いため、魔法は全く使えない分、身体能力が通常よりも向上する。
初めてのダンジョンの冒険から帰還後に最下級の青銅級冒険者となり、ステラと冒険者パーティー「グラディオ(エルフの古い言葉で「大いなる大地」という意味)」を結成。後に出会うカイル、ドーマ、ミリィとともに力を合わせてダンジョンを冒険する。
- ステラ
金級冒険者のライトエルフの女性。
薬草採りをしているイストファを偶然見かけ、彼に金貨1枚を与えてチャンスを与えた。その後、イストファの人柄を気に入り、婿にならないか(魔力が高いエルフ同士では子供が生まれず、魔力が低い種族でないといけないため)と尋ね、保留されるが彼のお願いで師匠となる。だが、基本的にダンジョンを一緒に冒険することはなく(実力の差があり過ぎる自分と一緒では成長しないから)、最低限の助言はするものの見守るスタンスを取り、精神的な面で冒険者として大切なことを教えている。
イストファからは落ちぶれ者から抜け出すきっかけをくれた恩人として慕われているが、カイル達からは性格の悪さもあってあまり好感を抱かれてない(特に種族的に相性が悪いドーマやフリートなど)。
実は王国でも屈指の実力を持つ最強クラスの冒険者。
- カイル
魔法士の赤髪の少年。
誰に対しても強気で偉そうな性格だが、根は悪いわけではない。
大魔法でも短期間で習得するほどの天才であったが、それに反して魔力がかなり低いため、脅かす程度の威力しかなかった。そのため、「玩具の魔法士」と呼ばれて嘲笑されており、自分を馬鹿にした者達を見返すために冒険者となる。魔法に関しては天才だが、体力が恐ろしいほどなく、少し走っただけでバテるほど。
第一階層で偶然イストファと出会い、成り行きで協力し合ううちに意気投合しパーティーに加わり、イストファと親友になる。イストファのことを気に入って以降、事あるごとに親友であることを強調し、彼に対する独占欲と優越感を露わにしている。
その正体はフィラード王国の第四王子、「カイラス・フィラード」。「カイル」は愛称。
王子であるためあらゆる知識は豊富だが、世間知らずな面もあり、金銭感覚も一般からかけ離れている。また、王子ゆえに金銭面は恵まれており、装備の質は非常に良い。
- ドーマ
神官のダークエルフ。後に神官戦士に転職する。
迷宮都市に訪れ、ダンジョンに入るために色んなパーティーに組もうとお願いするが、ダークエルフのお自分に気後れしたのか次々と断られてしまう。仕方なく一人でダンジョンに行こうとするが、ヒーラーだけでは入れてもらえず衛兵に止められていたところ、たまたま近くにいたイストファに強引にお願いして一緒にダンジョンに入り、そのまま行動をともにし、後にパーティーに加わる。
中性的な見た目で、性別は不明。一度、イストファ達に尋ねられるが、はぐらかされて結局答えなかった。神官らしく回復魔法を使え、メイスを主要武器として扱う。単純な技量ではイストファよりも上だが、体力が劣る。『迷宮武具の神』ニールシャンテ(カイル曰く「ドマイナーな神」)を信仰している。イストファのことは気に入っている一方、カイルとはやや反目しあっているが仲が悪いわけではない(イストファ関係だとより顕著に出る)。
- ミリィ
呪術士の男の娘。本名は「ミド」。女の子と見間違えるほどの見た目をしている。
呪術士は一部で差別対象とされており、ミリィは特に差別が酷い子爵領出身。子爵領から逃げ出して迷宮都市に辿り着き冒険者になる。しかし、たまたま誘われたパーティーに同行してダンジョンに入るが、第四階層で負傷してそのまま見捨てられたところをイストファ達に保護される。
その後、自分を追ってやって来た子爵領の私兵を欺くためにカイルの提案で自分がダンジョンで死んだこととし、そのため女装する羽目になり、「ミド」から「ミリィ」に改名される。もっとも、事情ゆえに仕方が無いとはいえ、本人はあまり乗り気ではなく、いつか「ミド」として活躍したいと思っている。
- フリート
鍛冶師のドワーフ。
頑固な職人気質で、気に入った相手にしか装備を売らない。イストファとも顔見知りで、落ちぶれ者の身でありながら腐らず頑張っていたイストファを気に掛けていた。彼が金貨1枚を持って装備を求めた時は、出来るだけ最良の装備を与えた。また、彼の懐具合を考慮してメンテナンスがいらない「迷宮鉄」で作られた短剣を与えた。
- ケイ
フリートの娘。
フリートと同様にイストファを気に掛けており、彼が冒険者として歩み始めたことを喜んでいる。イストファが冒険者として成長しているのを見て、次第に好意を寄せるようになる。