『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』は漫画:天獅子悦也、協力:安藤満(後にケネス徳田)による麻雀漫画。掲載誌は「近代麻雀」。
概要*
1980年代を舞台に、高レート賭麻雀の世界で人外の強さを誇る美青年・傀と、彼に挑み、敗れる者たちを描く群像劇。
物語の多くは傀の対局者や傍観者の視点から描かれ、傀は正体不明の強者として登場する。
傀が相手に決定打を与える際に発する「御無礼」の決め台詞で知られる。
主な登場人物
- 傀
正体不明の麻雀打ち。人々が「人鬼」と呼ばれていたのが転じて「傀」となった。つまり本名ではないのだが、彼自身にも都合がいいのか「傀と呼ばれています」と名乗る。喫煙者ではあるものの、飲み食いをしているところを一度も見せたことがなく、強さと合わせて本当に人間なのかというところまで疑われている。
高レートのマンション麻雀や裏カジノ、代打ちなど非合法の賭場は当然として、一般的なレートのフリー雀荘で打つこともあれば、建設員の飯場に潜り込んだり、公園のホームレスの卓など安いレートでも卓が立つ場所であれば何処にでも現れる。そしてその全てに勝ち、誰も気づかぬうちに去っていく。
ローカルルール、特殊なハウスルールの麻雀(アンヘルの麻雀、横浜ブー麻雀など)、三人打ち、中国麻雀や台湾麻雀など様々な麻雀に精通する。
麻雀にかけては文字通りの「人の姿をした鬼」。信じられないような役満を連発して完勝することもあれば、一度もトップを取れなくても2着キープでトータルで勝つこともあるなど作中では無敵。それでいて場の空気を読み、気づきにくいお茶目をやらかす一面も。
- 安永萬
全雀連六段のプロ雀士。おそらく傀と最も多く卓を囲んだ人物で、同卓した傀の邪魔にならないよう2着キープに徹する。ただ、傀も「あなたは麻雀で沈む事はないでしょう」と彼の腕前を認めている。
作中時間で昭和から平成に移ってすぐ、癌のため死去。
- 水原裕太
むこうぶちにおけるもう一人の主人公。全雀連のビッグタイトルを掴むも「ラッキートップ」という陰口に激昂して暴力を振るってしまい、全雀連を追放される。その後同卓した傀に魅せられ、各地を転々としながら裏の麻雀に興ずる。定職にはついていない。登場のたびにチャラくなっていく。
傀とは何度も渡り合い、一半荘のみだが真っ向勝負で勝ったことがある。傀が唯一名前を訪ねた対戦相手でもある。
- 多河巧典
元暴走族で安永の後輩。中卒で漢字は読めなかったが、マメで筋がいいとして安永の弟子となった。若手プロが参加する勉強会「青龍會」の長を務める。普段は実家の中古車ディーラーを手伝っている。
- 及川勝依
大企業グループの会長にして自称「傀のタニマチ」。裏では政界のフィクサーとも噂される人物だが実態は傀を「儂のアイドル」と照れもなく言い切るキュートなお爺ちゃん。
- 巫藍子
裏カジノのディーラーを務める、車椅子のミステリアス美女。実は及川の盟友である鉢黒剛毅の娘。女版傀とも評される実力者だが、いつも傀には一歩及ばない。そんな彼に恋をしている。
- 劉(ラウ)
日本の中華人脈に多大な影響力を持つ大物華僑。高層マンションの最上階で数千万円単位の金が動く超高レートの場を立て、自身は振らず和了せずの見物麻雀に徹し、弱者が破滅する瞬間を見るのが楽しみ。
- 江崎明彦
悪徳不動産屋。劉の自宅での裏麻雀で傀と戦い惨敗したが、借金返済のための海上での不法移民引き渡し業を3年続け再び陸に上がってきた。また、劉への借金とは別に会社の金を使い込んでおり、業務上横領罪で指名手配されている。
傀との再戦後は劉の下で代打ちや不動産管理などの仕事を請け負っている。華僑(中国人)組織の中では新参かつ外様の日本人ではあるが、それなりの地位にあるようで中国人の部下がついている。
卓上でのツキの無さを精度の高い捨て牌読みで補うその実力は傀に匹敵する。
彼を主人公にしたスピンオフ漫画『むこうぶち外伝 EZAKI』も出版されている。
- 三橋秀俊
通称「上野(ノガミ)の秀」。赤牌入りの麻雀を得意とし、傀の領域に踏み込んだ数少ない人物の一人。倉庫破り・窃盗など生きるためなら何でもする小悪党だが妙な愛嬌があり、作中でも人気の高い人物。水原祐太とも交流を持った。平成に年号が移ってすぐ玄人業は引退、今は裕太を(妙に懐かれたためか)舎弟に抱えスナックのマスターに落ち着いている。
彼を主人公にしたスピンオフ漫画『レッドドッグ ノガミの秀』も出版されている。
- 日蔭
徹底した確率論と聴牌効率判断、優れた山読みを身に着け、しかもそれらを一瞬で判断しノータイムで最善手を打てる実力者。彼の聴牌速度に追いつける者は少ない。「俺はツモがいいんじゃない 捨て牌がいいのさ」は名言。
フィジカル、メンタルも強く、作中で「氷の男」と形容されていた。傀には一度冷静さを失い負けて全財産を失ったが、再起して以降は愚直な聴牌効率のみならず駆け引きも身に着け、水原祐太とも長時間対等に渡り合った。
- 石川さん
発達障害者で、麻雀のルールを完全に把握しているわけではないが、相手の待ち牌をなぜかわかってしまうという超能力の持ち主。その能力を活かし自身は滅多なことでは放銃せずに出上がりの多い独特の打ち筋を持つ。傀が初めて彼にロンをされたとき、今まで見せたことのないような驚きの表情を見せて動揺していた。
映像化作品
2018年12月現在、アニメ化はされていないが、Vシネマが16作作られている。
全16作に共通して出演するのは袴田吉彦(傀)とガダルカナル・タカ(雀荘「東空紅」のマスター)の2人、他に高田延彦(1~8)、及川奈央(1~8と12)や宮内こずえと言った実際のプロ雀士も出演している。
スピンオフ作品
- むこうぶち外伝 EZAKI(全2巻)
(原作)天獅子悦也 (作画)玉置一平
江崎明彦を主人公としたスピンオフ作品。
- レッドドッグ ノガミの秀(既刊1巻 未完)
(原作)天獅子悦也 (作画)近藤和寿 (監修)坂口大学
三橋秀俊を主人公としたスピンオフ作品。