御無礼、ツモりました
概要
本名、出身、所在地一切不明の謎の男。
何処からともなく様々な麻雀卓に現れては、ほぼ確実に誰かしらを破滅に追いやる、化け物じみた強さを持ち、名の通り「鬼」のような男。
- 飲食・睡眠をするのを一切人に見せたことがない
- 追いかけたが次の曲がり角でもう姿が見えなくなっている
- トラックの荷台の中での対局で、豪雪のせいで排ガスが中に充満し対局者の3人は一酸化炭素中毒で激しい頭痛と眩暈に襲われたが(主催の元・玄人の老人は死亡)、傀だけは平然と打って立ち去って行った
- エレベーターに乗ったのを確認し階段を駆け降りて待ち伏せしたが、エレベーターはもぬけの殻だった
- 相手の考えや心を読める「サトリの術」を持っている雀士が、傀の心や考えだけ読めなかった
など、その常軌を逸した強さと合わせて読者やファンから「本当に人間なのか?」とまで疑われていたが、原作者の天獅子悦也氏はついに「傀は人間ではありません」とインタビューで答えた。(Vシネマ版作製の際にも、主役の袴田吉彦に『傀は麻雀の妖精のようなものです』と説明している)
傀(カイ)という名前は「人鬼」から来ており、名を問われた際は「傀と呼ばれています」と名乗り、一匹狼の真のギャンブラーを意味する「むこうぶち」の名で呼ばれることもある。
容赦なく対戦相手から金を毟り取るため、裏社会とも繋がりがある華僑の超大物・劉(ラウ)大人やその周囲は「暴虎」と呼んでいる。
彼が冷笑と共に「御無礼」と発した時、死神の鎌が振り下ろされる…。
人物像
丁寧な物腰で常に冷静で、極端に無口で表情に乏しいため一見冷静沈着に見えるが、傲慢な相手、イカサマをする相手は容赦なく潰す。
自分の思惑や相手の底を見抜いた時にニヤリとニヒルな笑みを浮かべるシーンは非常に多い。またたまにではあるが、相手を言葉で挑発することもある。
さらに女性が相手の場合、相手の腕前に関わらずサディスティックな態度を取る。
高レートの場で数億を賭けた勝負に平然と挑むこともあれば、病院や避難所、ホームレスたちの掘っ立て小屋などでの小銭を掛けたショボい掛け金の麻雀、さらには金を得られないはずの幽霊との対局にすら現れており、文字通りどんな麻雀でも打つ。
こうした事から人は言う。
「傀は金がほしいんじゃない。相手が負けて絶望する姿が見たいんだ」
しかし一方で、麻雀に対して真摯に取り組む者や、欲望に取り憑かれず引き際を知る者には、教訓を与えてくれることもある。追いかけてまで殺そうとはせずに時には敬意を示す一面や、プロ野球選手との対局では「勝負には押し通して勝ち残る一手もある」と教えて選手たちが後の試合でこの一言を役立てたこともあった。
手品麻雀で会の趣旨を尊重し、わざとイカサマを使って勝つなど案外ジョークを解する一面もある。
麻雀の前の場決めで言い争いに夢中になっていた橋場たちには苦言を呈して、去ろうとしたこともある。
このようにただ一方的に弱者を踏み躙ったり駆り殺したりするのを楽しんでいるわけではなく、彼なりの美意識を持っていることも窺わせる。
彼と戦った者は(命を含め)すべてを失うこともあれば、逆に何かを得たりする。傀が意図してのモノかどうかは不明だが、そうした点でも本質が全く見えない底知れぬ部分が多い。
作中では彼の強さに魅せられ、多くの人間たちが挑み、そして人生が(良くも悪くも)変わっていくこととなる。
中国語(台湾方面)やフィリピン語を操るなど、語学に堪能な一面も。読書家でもあるが、読む本は何でもいいらしく、『ぐりとぐら』や『近代麻雀』を読んでいる場面もある。
ネット等でも「麻雀漫画の最強雀士は誰か?」が良く議論になるが、哭きの竜、早見明菜(スーパーヅガン)、フランケン(根こそぎフランケン)、D・D(兎-野生の闘牌-)達と共に、傀も必ずと言っていいほど最強候補に名前が出る一人である。
雀風
基本的には流れを局を重ねるごとに引き寄せ、1度流れを掴みきったら2度と放さず、相手が音を上げるまで連続で大物手を和了り続けて圧勝するスタイルである。
流れを確保した時の和了り(和了りでない場合もある)では「御無礼」と発声するのがお決まりの勝利宣言で、以降の連続和了りも全て「御無礼」と言い続ける、言うなれば「御無礼スタイル」が彼の身上である。
しかし「御無礼」までの持って行き方は状況によって様々で、まさに自由自在。
最初からアクセル全開で行くこともあれば、序盤の数回戦は見(ケン、様子見のこと)に徹して最下位になってでも相手の戦術やイカサマを見抜くなどして場の流れを形成。相手が策を弄して先切りや理牌、現物待ち、フェイクの癖、場を乱す鳴きなどで傀を出し抜いた!と思った矢先に、それを逆手にとって一気に流れを掴み、御無礼無双にまで持っていく。
積み込みやブッコ抜きといったイカサマが横行する場では、イカサマをやっている者の手を読んでいるような描写が多いが、自身も積み込んでいたかは不明。
ただし手品麻雀回での鮮やかなイカサマツモから、技術自体は高いレベルの物を会得していることが窺える。相手の運を奪い、自分の流れをつかむまでのパターンは様々だが、いったん自分が優勢と見るや徹底的に攻め続け、一気呵成に叩き潰す。
そのため、鈍い者は「バカヅキ麻雀にたまたま負けただけだ」と勘違いすることも多い。
中には傀相手に流れやバカヅキを掴み取り、勝利寸前までいった者も少なからずいたが、いずれも傀の安目差込みやシャンテンを落とす鳴きなどのセオリーから外れた揺さぶりに屈し、流れを手離して敗北している。
単純に麻雀が強いだけではなく、ローカルルールや特殊なハウスルールの"天人麻雀"、三人麻雀まであらゆるルールに即座に適応できる。
加えて自動卓から発せられる異音を察知して卓に不正な改造が施されていることを完全に見抜いたり、複雑な通しをすぐに解読したりなど、五感と頭のキレそのものが常人離れしている。
巫藍子との初対決では、麻雀の前に彼女がディーラーをしている裏カジノに行き、バカラで勝利するなど麻雀以外のギャンブルも相当に知識があるのが垣間見える。
さらに前述のトラックの荷台の中でイカサマ・すり替えなんでもありの手積み卓での瞬間記憶能力を持つ元・玄人の老人との戦いでは、それを上回る瞬間記憶能力を持っているのが判明している。
上記のエピソードに加えて「ノガミの秀」こと三橋秀俊との初対決では相方の高利貸しの必要牌を全て止めた上で、七対子でトドメを刺していることから、読者からは牌が透けて見えているように錯覚することもある。
ただ、待ち牌が分かるという超能力じみたカンを持つ発達障害者の石川さんにロンされたときは、周囲も分かるくらい驚き、動揺する表情を見せていた。(傀が対戦相手に対しこのような表情を見せたのは2023年時点で石川さんのみ)
また、その場のノリで理牌(牌の並べ直し)をせずに打った安永もかなりのところまで傀を追い詰めたことがある(ミスを犯し結局逆転されたが)。
ノガミの秀との3回目の対決でも、赤ドラも切った秀のド引っ掛けリーチに見事に振り込んでしまっている。
そのため傀のしていることは、超人的で誰も真似できない鬼のレベルとはいえ、あくまで「予測」「読み」の範疇であることが分かる。
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※以下の文章には傀の正体に関するネタバレかも知れない情報があります。 |
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上記のように正体は全く不明だが、近代麻雀の2021年1月号に阿佐田哲也の『麻雀狂時代』を漫画にした『アガらずの九翻手』という天獅子氏がデビュー当時に描いた読み切りが掲載され、そこに笹木という髪型や黒づくめの服装、煙草の吸い方やニヒルな表情など傀そっくりな麻雀打ちの青年が登場する。傀より口数は多いものの、必要最低限な事しか言わない部分も傀に似ている。最後は夜の街に消えていく笹木を見送る阿佐田哲也の「その後…彼(笹木)の名を表舞台で聞くことはなかった」の台詞で締められている。
天獅子氏からは断言されてないが「むこうぶちの、傀の原点ともいうべき作品」とのコメントを載せており、この笹木が何かしらの理由で傀になった可能性もある。