概要
史実においては、現代にも残る小笠原流の開祖であり、小笠原流は弓術、馬術、礼法と言う武士としての基礎教養を伝えるものである。
つまり、後世における『武士の規範』となった人物。
人物
魚のごとく常に見開かれた大きな目が特徴。
性格は高氏に対してこそ恭しいものの、主人公サイドである北条に与した者など、敵に対しては傲岸不遜。諏訪頼重への挑発として『耳の裂けた鹿がいると縁起がいい』とされる諏訪大社の言い伝えを引き合いに出し、非戦闘員である巫女の耳を自ら弓で打ち抜き傷をつけて『耳の裂けた雌鹿』と嘲笑し、主人公である北条時行から『目玉一杯に性格の悪さが詰まった男』と称された。
武士としては相手を見た目で判断して油断する所はあるが、追い詰められればすぐに冷静さを取り戻し、たとえ負けたとしても次の手段があれば即座に動くことのできる豪胆さを秘めている。
一方で、同盟者の市河助房が妙に馴れ馴れしい態度で接してきた時には表面上は冷静さを保ちながらも、内心では思いっきり困惑していたりと、変に常識的な所もあったりする。
反乱成功の恩賞として足利尊氏(高氏を改名)によって信濃国守護に任じられ、諏訪頼重に匿われている北条時行の捜索および抹殺のため諏訪大社に派遣される。
能力
視力
高氏が手に持ったダニの雌雄も見抜くほどの優れた視力の持ち主。
それ以外にも妙に目に関するスキルが豊富で「目からの振動で会話できる」とか「目からは涙だけじゃなく胃液も流せる」という人間離れした特技も有している。
弓の腕前
当代随一の弓の名手であり、その腕前たるや当時の帝である後醍醐天皇からも讃えられ、彼の弓の射ち方は現代における弓術の基礎にもなったという。その弓をつがえる様は時行ですら思わず息を呑むほどの洗練されたものとなっている。
活躍
諏訪に派遣されてから、尊氏から下された任務を果たすべく、頼重から長寿丸(という稚児に扮した時行)と犬追物(乗馬しながら弓を射合う勝負)の試合を行い、もし長寿丸が勝てば諏訪に手を出さないことを条件にした賭け試合に臨む。
しかし、この賭けは諏訪を守るための策と言うだけでなく、時行に彼の弓の技術を盗ませるという意図も含まれていた。
乗馬戦では当初こそ時行を圧倒していたが、相手側の策に嵌って点差を付けられてしまう。一度は焦りを見せたものの、すぐに頭を切り替えて時行の死角に付き、そこから逆転の機会を狙うが、その中で時行が導き出した「逃げながら攻撃」こと「パルティアン・ショット」を受けて敗退。
まさかの逆転負けを喫したことにより、貞宗は約束を守らざるをえない状況に置かれ、一度はその場を退いた。と、思われたが、「諏訪大社領を小笠原領にせよ」との後醍醐天皇からの綸旨を盾に再登場、諏訪一族に屈服を迫った。
これに対して時行一行は綸旨の奪取を画策し、盗賊の風間玄蕃を郎党に加え、彼の協力の下に小笠原の邸宅に侵入。助房がそれに気づいたことで賊を捕らえに出るも、闇夜ゆえ目が利かず苦心していた所を助房が支援に入り、時行と玄蕃の二人を追い詰めるが、この時既に玄蕃に綸旨の入った蔵に火を付けられており、蔵ごと綸旨を焼失させられてしまう。
その後の綸旨の再発行を待つも、後醍醐は尊氏の反乱の後処理に追われてそこから先の領地整理を「めんどい」と放棄したことで綸旨の再発行も無くなり、信濃の領地没収の命令は事実上無効になってしまった。
余談
登場当初から、松井作品にお馴染みの変態的な狂人キャラとして描かれたが、かませ犬のような登場からは考えられないほどの活躍ぶりを見せ、読者から凄まじく愛されるキャラクターとなった。
また、元となった人物の所でも書いてある通り「武士の模範」となった人物であり、今も弓術と礼法の家元の一つである。そのため読者からは「抗議が来るのでは?」という声があげられた。
上記の巫女に対する暴力も当時の武士は血気盛んで暴力的ということを考えればあまり不思議でもない。