概要
1962年、米海兵隊/アメリカ海兵隊がCH-37の後継となる機体の要求仕様を発表すると、シコルスキー社が既に空軍に採用されていたS-61ヘリコプターに、クレーンヘリコプターであるS-64の技術を持ち込んだ拡大版を提示した。
開発計画はボーイング・バートル社が持ち込んだCH-47の改修版との一騎打ちとなり、共通化による予算削減を目論むマクナマラ国防長官の押しによりCH-47に決まりかけるが、艦載運用のための改修の困難さが比較され、シコルスキー案が採用されることとなる。
予算等のリソース不足により開発計画は多少の遅延に見舞われるが、初飛行後のフェーズが順調に進んだために遅延はどうにか埋め合わされ、66年9月に最初のCH-53が完成した。
膨大な搭載量と長大な航続距離を誇りながら運動性能も高く、輸送、救難、強襲作戦まで幅広く用いられており、捜索救難作戦では時にパイロットのみならず「航空機」までも持って帰ってくる強靭な機体である。
海兵隊を皮切りに複数の国に採用され、組織の運用や時代に合わせて様々な派生型が誕生した。
派生型
米海軍・海兵隊
- CH-53A
最初期型。38名が搭載可能。
- RH-53A
より強力なエンジンを搭載した掃海ヘリ。米海軍が採用した。
- CH-53D
エンジンを換装し、キャビンを拡張して搭載人数が55名に。
- RH-53D
D型の掃海仕様。空中給油用のプローブが追加された。
- CH-53E
エンジンを1基追加して3発機とし、ブレードも6枚から7枚に増やされた。搭載量と飛行性能も大幅に向上し、外見が似ているだけでほとんど別物の機体。
給油プローブを標準搭載しており、赤外線監視装置により夜間運用も可能となっている。
掃海仕様のMH-53Eはスポンソンを拡大し燃料容量を増やしている。
- CH-53K
エンジンを換装しキャビンを拡大、これまで外に吊るすしかなかったハンヴィーを機内搭載できるようになった。
当初はE型から回収可能なアップグレードモデルとして開発する予定だったが、大幅な再設計を余儀なくされた。
設計変更は外観にも影響を与えており、顔つきがかなり変わっている。
米空軍
- HH-53B ペイブロウ
空軍が採用した特殊作戦支援、戦闘捜索救難仕様。
装甲が追加され、GAU-2ガトリング砲を3門搭載し、空中給油プローブが追加され、エンジンが強化された。更に増槽を装着し航続距離を延長できる。
試験的に全天候機能を持たせたものはペイブロウⅡと呼ばれる。
- HH-53C
より強力なエンジンに変更したもの。増槽は飛行性能が悪化するのでオミットされた。
- HH-53H ペイブロウⅢ
全天候モデル。前方赤外線監視装置と地形追随レーダーにより夜間、悪天候下での飛行が可能になった。
エンジンをまたも変更し、レーダー警戒装置とチャフフレアディスペンサーの搭載により生存性が向上している。
- MH-53J ペイブロウⅢ エンハンスド
GPSと慣性航法装置を搭載し各種アビオニクスをアップグレードすることによって本格的な敵地低空浸透が可能になった。
- MH-53M ペイブロウIV
IDAS/MATTが搭載され、障害物や敵の脅威に対する感知性能が向上し、防御システムの自動化によって反応速度も大幅に上がった。
余談
実写版トランスフォーマーに登場するトランスフォーマーの一人ブラックアウトは、MH-53ペイブロウに変形する。