注意
※この記事は重大なネタバレを含みます |
---|
概要
『鬼滅の刃』作中において、ある意味で全ての元凶と言える存在。
平安時代、生まれついてのその病弱さ故に、二十歳になる前に死ぬといわれていた鬼舞辻無惨の治療に当たっていた医師である。
自分で新しく生み出した薬剤を処方するなどして懸命に彼の治療を続けていたのだが、一向に体が良くならない事に癇癪を起こした無惨によって、背後から頭部を鉈で割られて死亡した。
無惨が医者の薬の効果が出て体が良くなっている事に気付いたのはそのすぐ後の事で、さらに事実上の不老不死、さらに肉体そのものの変化といった予想外の異能力まで獲得できたが、代わりに人を食いたいという衝動に加え、日光を浴びると死んでしまうという欠点を抱える事になり、無惨はこの中で致命的な日光への耐性を得るべく、彼の残した資料から自身に投与された薬剤の材料と思しきある植物を追い求める事となる(食人衝動の方は、人を喰えば収まるという理由から、本人は問題視していなかった)。
「鬼舞辻無惨」というおぞましい怪物に力を与えた張本人であると同時に、そのおぞましさの根源である頭無惨の被害者第一号でもあるとも言える。
その扱い
ナレーションで「善良な」と明言されていたのだが、平安の世において「人を鬼にする薬」による人知を超えた治療法を確立していた事から、多くの読者から
「『鬼滅の刃』におけるすべての黒幕なのではないか?」
「無惨の死後に現れる新たな敵、人食い鬼をも食らう柱の医者の一人になるのではないか?」
と疑われていた。
しかし、特にそういった事は無いまま無惨を打倒して鬼は絶滅し、『鬼滅の刃』は無事完結。
彼は本当に、偶発的に“悪魔の薬”を作ってしまっただけの“善良な医者”でしかなかったのである(そもそも無惨に処方した薬はあくまで試作品であり、どのような副作用が出るのか本人も把握しきれていなかったようなので、彼が黒幕とするのは最初からいささか無理があったと言えるだろう)。
前述したように、無惨を怪物へと変え、全ての悲劇の引き金を引いたとも言える善良な医者だが、
彼のした事は、「病弱な患者に決して匙を投げずに、最後まで治療を続けようとした」という、医者としてこれ以上ない程に正しい行為である為、あまり責めるのは酷であろう。
ただし、この医者本人が自分の製作した薬物が、副作用として人を怪物に変えてしまうリスクを孕んでいたという事実について、上記の通りそれをどこまで把握していたかは定かではなく、例え無惨を完全に治療できて生き延びさせる事が出来たとしても、そうとは知らずにあくまで善意でこの治療法を繰り返す、あるいはこれに基づく知識と情報を広めてしまった場合、彼自身が関与していようがいまいが、いつかどこかで無惨とは別の鬼が誕生していた可能性も決してゼロだったとは言い切れない。
彼が使用したという件の植物に関しても同じことが言え、そのことを考えると、むしろ“そこで彼が死んでくれてよかった”という理屈さえも成り立ってしまうのも事実である。
また、無惨が癇癪を起して彼を殺した事で結果的に自分の患者を人喰いの怪物に変えてしまった事実知らずに死ぬ事が出来た事は僥倖と言えなくも無い。もし、無惨が癇癪を起して彼を殺さなくてもいずれ人食い鬼になった無惨に食い殺されていただろう(その場合人を助けるはずの医者が患者を怪物に変えてしまった事実に絶望しながら死んでいただろう)。
そんな訳で無惨が彼を殺害した事については、結果的には「無惨様のおそらく生涯初の(そして唯一の)善行だった」と、一部の読者の間では囁かれているとかなんとか。