エンキドゥ
えんきどぅ
曖昧さ回避
+エンキドゥを元ネタとしたFateシリーズのサーヴァント⇒エルキドゥ
+フランスパン及びアークシステムワークスが開発販売する格闘ゲーム「アンダーナイトインヴァース」の登場キャラクター。⇒エンギドゥ(UNI)
+アニメ天元突破グレンラガンに登場するガンメン(メカ)⇒エンキ(エンキドゥ/エンキドゥドゥ)
+ファイナルファンタジー5に登場するモンスターでギルガメッシュの相棒。FF6(GBA版)やFF9でもそれぞれ姿や名前だけ登場。
概要
古代メソポタミア、現存する中で最古の英雄譚『ギルガメッシュ叙事詩』に登場する人物。
楔形文字の誤訳により、かつてはエアバニ(Eabani)と読まれていた。
ギルガメシュを罰するために創造の女神アルルによって作られたが、逆に彼の親友となってしまう。それ以降、ギルガメシュと共に活躍するが、神々の怒りに触れ、病に罹り命を落とす。
彼の死は、ギルガメシュに大きな衝撃を与え、不死を探す旅に出ることになる。
古代アッカドでは、毛むくじゃらの男、または2本足で立った牛、あるいは角の生えた男として描かれることがあった。
ギルガメシュ叙事詩
古代シュメール文明の神話、英雄譚で作られた時期に2000年の開きがある。
初期に作られたもの、「ギルガメシュ」の名前を見つけることが出来る5つの詩文があるが、これらは単一の詩であると考えられ、現在知られている物語は、後年に作られたと見られている。
もっとも古いバージョンは、ウル第3王朝(紀元前2100年頃)~古バビロン王国(紀元前1800年頃)でこれが古バビロン版タブレットである。これは、不完全でほとんどが欠落している。
他にイシュチャリタブレット(フンババを倒すくだりのみ)、シッパリタブレット(不死の探究に出るギルガメシュなど)が残されている。
現在知られる物語は、アッカド版タブレットがもとになっており、欠落部分を他のタブレットから補完している。
これは、ニネベのアッシュールバニパルの図書館から発見され、紀元前1300年頃~紀元前1000年頃に作られたとされている。
12枚の粘土板から成り、その内の11番目の粘土板は後から付け足されたと見られており、12番目の粘土板が本来の11番目であり最後の場面であったと考えられている。この付け足された部分に特に意味はなく、物語の前後に影響はない。
また特徴として他のバージョンが「他のすべての王を越える」から始まるのに対し、「深いものを見た人」があり、ギルガメシュが不死の探究の過程で得た知識について触れている。
エンキドゥは、このうち、1番目の粘土板から7番目の粘土板に登場する。
誕生
ウルクの王ギルガメシュは、3分の2が神で残る3分の1が人間であった。
彼は、暴君でアヌ神は苦しむ民の願いに応え、彼を諌めるべく創造の女神アルルに命じて粘土よりエンキドゥを生み出させる。
ところが誕生したばかりのエンキドゥは、知性を持たず、全身を毛に覆われた姿の野獣そのもので森の獣たちと暮らすようになってしまう。ある日、狩人が罠にかかった動物をエンキドゥによって解放されているのを目撃した。
この狩人の訴えで、ギルガメシュにより送り込まれた神聖娼婦シャムハトと七日六晩の間、床を共にした結果、エンキドゥは、毛むくじゃらだった体の毛が抜け落ちて力を失う事になるが、知性を得て、容姿は毛むくじゃらの大男から人間の男の姿に変わる。
またシャムハトの香りが身体に着き、獣たちが自分に怯えて逃げてしまい、その言葉も聞こえなくなったことから自分が別の存在になったことを悟る。
その後、シャムハトから様々な知識を与えられ、自身の使命であるギルガメシュとの対決へと向かった。
別のバージョンでは、狩人はギルガメッシュではなく太陽神シャマシュに訴え、シャムハトとエンキドゥが出会い、彼が誘惑させるように手配する。またシャムハトと性交した後、エンキドゥは羊飼いたちのキャンプに行き、そこで人間の習慣を学び、そこにやってきたギルガメッシュと対決する。
一方、ギルガメシュは、夢の中で自分を探し回る怪物を見る。
彼は、母である神ニンスンに訴える。ニンスンは、夢の内容からギルガメシュに答える。
「王よ、それは良き報せに御座います。その者こそ、王の友人で絶対の味方となる者です。」
ギルガメシュとの出会い
ウルクに到着したエンキドゥは、市民の結婚式に割り込み、他人の花嫁への初夜権を行使しようとしていたギルガメシュに青褪めながら怒り、そうはさせないと道を妨害し、彼に決闘を申し込む。
両者の戦いは、三日三晩に及ぶ決闘の末にも決着がつかず引き分けとなった。
このことで自分に並び得る者がいる事を知ったギルガメシュは、エンキドゥを友人として迎え入れた。
ギルガメシュは、更なる名声を得るため、杉の森の番人、半神フンババ(フワワ)を倒すことを計画する。ウルクの長老議会とエンキドゥは反対するが、ギルガメシュは聞き入れなかった。
ギルガメシュは、長老たちの助言を受け、不在中の政治方針を固め、太陽神シャマシュの加護を求め、そしてエンキドゥを母のニンスンに紹介する。
二人は、エンリル神が定めた杉の森の守護者フンババの退治に向かう。
ギルガメシュは、道中で見た夢のお告げを友人であるエンキドゥに訴える。
エンキドゥは、夢の内容からギルガメシュに答える。
「王よ、それは良き報せに御座います。王は、他の王を越え、何者も勝ることはできません。」
しかし、土砂崩れ、雷雨、落雷などの困難が彼らを襲う。
フンババは、エンキドゥがギルガメシュの味方になったことを「裏切り」と罵ったがシャマシュ神が風を起こし、フンババを動けなくしたしまう。フンババは、二人に命乞いし、ギルガメシュが望むだけの木を伐り出すことや彼の奴隷となることを提案するがギルガメシュは、永遠の名声のためにフンババを殺すと宣言する。
フンババは、二人を呪ったが首をギルガメシュに切り落とされる。二人は、エンリル神の神殿の門を作る巨木を伐り出して筏を作り、ユーフラテス川に乗せて帰還する。
イシュタルの姦計とエンキドゥの最期
フンババ討伐より戻り、盛装したギルガメシュの姿に惚れ込んだ女神イシュタルは、彼を自分の恋人にしようと誘惑する。
しかし美人の妻に頭が上がらず、イシュタルの浮気を許して困窮するドゥムジ神の一件を思い出し、彼女のあらゆる奔放さを聞き及んでいたギルガメシュは、彼女が破滅させたかつての夫たちへの悪行を並べ立ててこれを罵り、手厳しく振ってしまう。
これに腹を立てたイシュタルは、報復のため「天の雄牛」をウルクに送ることを父たる天の神アヌに要求する。はじめ諌めるアヌだったがイシュタルが「地獄から死者を生き返らせる」「地上は、生き返った死者の数が生きている人間より勝るであろう」と恫喝したためアヌは、天の雄牛をウルクの市中で大暴れさせる。
天の雄牛により、ユーフラテス川の水位は下がり、田畑が荒廃し、地に300人を一度に落とす大穴が開く。市中に居合わせたエンキドゥは、これを見過ごすことができずに雄牛と戦い、援護に来たギルガメシュとともに神々の助力なしに天の雄牛を斃してしまう。
二人は、天の雄牛の心臓を切り取ってシャマシュに捧げ、首をイシュタルの神殿の前に投げ出した。
これにイシュタルは叫び、民衆は喝采する。
市民の祝福の中、その夜にエンキドゥは、不吉な夢を見る。
神々が集まり、エンリル神の定めた守護者たるフンババ及び、神の所有物である天の雄牛を殺した罪により、英雄たちを殺さねばならぬという。シャマシュ神のみが反対するが、神々は天の会議においてエンキドゥに死の運命を定めることとなる。
エンキドゥは、これまで自分の人生に関わった者たちを憎んだ。森の狩人、神聖娼婦のシャムハト、そしてエンリル神と彼のために作った巨大な神殿の門に後悔した。
エンキドゥの元にかつて自分を導き人間の男にした神聖娼婦シャムハトが現れるが、悲嘆にくれるエンキドゥは彼女を呪ってしまう。
しかしこれを聞いた太陽神シャマシュは、彼に「もしシャムハトがいなければお前は、永遠に毛むくじゃらの野獣のまま、森の中をさまよって虚しく死んでいっただろう。」「彼女が引き合わせたギルガメシュは、お前の親友になり、また死んだお前を立派に弔うだろう。」「彼女の施した優しさを思い出しなさい。」と説き、エンキドゥは、シャムハトを呪ったことを取り消し、彼女の幸福を祈った。
しかしエンキドゥが2度目に見た夢は、死後の世界の光景で彼は、その恐ろしい様子をギルガメシュに訴えた。
やがて神々の呪詛で死の病にかかり、日々弱っていく死の間際、エンキドゥはギルガメシュに自分の存在を忘れないで欲しいと願う。そして12日後、ギルガメシュに看取られつつこの世を去った。
ギルガメシュは、エンキドゥの死体を抱き、蛆虫が這い廻っても放そうとしなかった。
また人間だけでなく動物や植物に至るまでエンキドゥの死を悼むよう命じ、巨大な像を建て、死後の世界で安楽に暮らせるよう神々に宝を捧げ、有らん限りの財産を出費した。
解釈
エンキドゥは一般的にギルガメシュの「友人」とされているが、役割は諸説わかれる。
一説によると彼らは友人ではなく、主従関係であり、エンキドゥはギルガメシュの「お気に入りの奴隷」や「従者」であった。
エンキドゥと出会う前のギルガメシュが、天から降る星(kisru≒kezru男娼)と斧(hassinu≒assinu神聖男娼)を抱く予知夢を見た、エンキドゥの亡骸に「花嫁のようにヴェールをかけた」描写など度々女性として扱われる事から、エンキドゥは「男娼」であり同性愛的関係にあったとか、実は「男装した女性」であったとする説もある。
また、神殿の門番を務める一対の神々になぞらえ、1人の人物の「二重身(=ドッペルゲンガー)」ではないかと推察する研究者もいる。
どれにせよ、人間的なギルガメシュに寄り添い常に行動を共にするエンキドゥは一心同体のように描かれている。