次世代AKライフル
2010年代、ロシア国防省では次世代歩兵計画「Ratnik」に基づきロシア軍の正式採用小銃であるAK-74Mに代わる、新型小銃を採用しようとする動きがあった。
コッキングレバーが右側に固定されている点やリアフロントのサイト間の短さ、セレクターをグリップした右手で操作できるようにしたいといったAK-74Mにおける不満点の一部はカスタムパーツや小改造によって解決できたが、特にコッキングレバーとセレクターは内部構造に及ぶため、正式な仕様としてこれを解決した突撃銃が求められた。
そこで2010年ごろからロシアの主要工業メーカー"イジェフスク"(現カラシニコフ・コンツェルン)は新型AKの開発を開始、2012年にAK-200を開発した。
AK-200での変更点
- ハンドガードにピカティニー・レールを追加。
- サイトを脱着式の物に交換。
- 短銃身化
- グリップ・ストック変更。
であった。
しかし、図面を見ただけでもメーカーのやる気のなさを感じさせるこの銃の採用に国防省は難色を示し、AK-74Mの改良モデル(AK-200の試作品に近い。ハンドガードとレシバーカバーにレールを搭載したモデル)を採用することを決定。
次世代AK計画はお流れとなった。
このことを受け、やけくそになったのか、開発チームが海外の最新型銃を参考に新型モデルを試作。
2013年春一般報道に完成したAK-12を公開した。
次世代AK"AK-12"誕生
AK-12は今までの外観を一新。
制式採用前の試作型は細かいバリエーションが多岐に渡るものの、AK-12の特徴は次のとおりである。
- AK特有の「ただの蓋」でしか無かったデッキカバーをヒンジで精密に取り付けられるように改良し、光学照準器が載せられるピカティニーレイルを搭載。
- リアサイトをレイルオプション化、フロントサイトと十分な距離を取れるように。
- ハンドガードにもレイルを標準搭載。
- ストックを折り畳みに加え伸縮可能なものに変更。
- セレクターをアンビー(両側)に変更、右側のセレクターも小型のものに変更されている。
- マガジンを透明なポリマー製に変更。
- ピカティニーレイルを介してNATO規格のグレネードランチャーを使用可能。
- AN-94で不評であった複雑なバースト機構に変わってシンプルな3点バースト機構(試作品であるため個体によって2点バースト)を採用。
また未確認情報として
- 旧来のAKシリーズとのハンドガード共用。
- ホールドオープン機構の導入とそれに伴うボルトリリースの設置。
- 銃身の製造方法の改良による射撃精度の向上。
このようにいささか旧式感のあったAKを一気に近代化させることに成功した。
ただし試作品であるため、試作年や個体によって
- セーフティおよびセレクターの順序
- バースト射撃の一度あたりの発射数
- フロントサイト、ガスポート、ガスシリンダーの形状
- 初期はガスポート上にショートレールを設置するなど意欲的なものもあったが、最終的にフロントサイトとガスポートが一体形状のものに落ち着いた。
などが異なっていた。
使用弾もメインの5.45mm弾に加え5.56mmNATO弾、39(AK)・51(NATO)の両7.62mm弾と豊富で、バリエーションも短銃身のAK-12カービン(AK-105に相当])とAKU-12(AKS-74Uに相当)、軽機関銃型のRPK-12、散弾銃型のAK-12/76(サイガ12Kに相当)、企画段階だが狙撃型のSVK-12が開発されている。
またブルパップモデルとしてAS-1(5.45mm)、AS-2(7.62mm)も平行して開発されている。
豊富な使用弾のバリエーションは輸出を意図したもので、メーカーの並々ならぬ期待ぶりが見てとれる。
2013年9月、ロシア国防省はAK-12を2014年度から採用すると発表。ソビエト時代から主力ライフルであったAKが姿を大きく変えることになる。(筈であった)
一方で、AK-74M等の既存の銃火器が需要の数十倍にあたる数の備蓄があるとの事で、新規の銃火器を採用できない状況であるとも言われていた。
2016年量産型、衝撃の登場
その後も毎年マイナーチェンジしてきたAK-12であったが、2016年にそれはおきた。
2016年6月ごろにAK-400という、特殊部隊向けにAK-74Mを再設計したライフルが露見した。
リアサイトブロックアッセンブリーを小型化し、リアサイトをレシバーカバー後方に移動したAK-105のような小銃で名称からAK-200のようなAK-74Mの改良モデルという考察が各方面された、当然AK-12とは別企画で進んでいる開発だと皆は思っていた。
同年9月ロシアの軍事製品見本会においてカラシニコフ社が量産仕様のAK-12を発表したのだが・・・その外観はAK-400に酷似しているではないか、もう一度言うAK-400に酷似している。
そう、ここに来てAK-12は、AK-74Mの改良モデルに逆戻りしてしまった。つまり、これまでのAKの弱点を補うために開発されていたAK-12の新機構の多くが水泡に帰してしまったのである。
どうしてこうなった
(一説によればロシア政府が調達価格に難色を示していたとも言われていたが、因果関係は不明である)
ただし、一応この銃は
- 銃身にハンドガードが触れないフローティングバレルで射撃精度が向上
- ストックはM4に似た調整式のパイプストックで左側に折り畳み可能
- 残弾確認が出来る新設計のマガジンが使用できる
- バースト射撃が可能
- 但しセレクターは従来型に似たもので、従来のAK同様左側にセレクターは無い
とされている。
2017年3月にドミトリー・ゴロージン ロシア副首相によって「AK-12とAEK-971(A-545)の配備を決定。部隊へは17年度後半より配備される。」と発表された。
当時、既に配備決定と延期の発表が何度も繰り返されており前途が懸念された。また導入の遅れから、既存の銃に改修を施したものを使用する部隊も現れている。
2020年現在では、報道写真でまとまった数が使用されているのが確認できるため、それなりの数が配備されていると考えられる。
量産型改修
実際に連邦軍に配備されたAK-12であるが、実践配備後に次々問題点が指摘された。
- ストックの折りたたみが完全に行えない
- ストックのショルダーパッドを完全に下げた状態にするとクリーニングキットが落下する
- グリップ内部のクリーニングキットも衝撃を加えると落下する
- ハンドガードを固定するピンのロックが甘く、力を掛けなくても動いてしまう
- ストックに20kg以上の物をぶつけると折れてしまう
と開発段階で問題の洗い出しが出来ていなかったのか、細かな問題点が報告された。
これに製造メーカーのカラシニコフ社も問題だと受け止め部品の変更が行われた。
2020年8月にロシアで開催された兵器見本市アルミヤ2020において、AK-12の新型モデルが公開された。
新型と言っても現在配備中のAK-12の一部部品を変更した改修品であり、基本は同じである。
- ストックを2015年までの試作品と類似した設計の物に変更
- グリップをトリガーガートと一体型の新規設計品に変更
- リアサイトをダイアル式に変更
今後はこれらの変更を行ったものがロシア連邦軍に供給されるものと思われる。
派生モデル
- AK-15
AK-12の使用弾を7.62×39mm弾に変更したモデル。
- AK-19
AK-12の使用弾を5.56×45mm弾に変更したモデル。
AK-12をベースに開発された軽機関銃型。
- AK-308
AK-12をベースに7.62×51mm NATO弾に対応する様に設計されたライフル。インド向けに売り込み