ズートピア
ずーとぴあ
そこは、動物たちの〈楽園〉……のはずだった。
概要
ディズニーの長編CGアニメーション映画。
2016年3月4日公開(日本は4月23日公開)
第89回(2017年)アカデミー賞「長編アニメーション映画賞」受賞作。
ゴールデングローブ賞、アニー賞など受賞歴多数。
監督は『塔の上のラプンツェル』のバイロン・ハワードと『シュガー・ラッシュ』のリッチ・ムーアが共同でつとめ、脚本家が7人という超団体作業で制作にあたっており、『ベイマックス』『アナと雪の女王』『ボルト』などを手がけたディズニーを代表するクリエイター達が全員結集し、新たなテーマに挑んだ意欲作である。
企画段階でのタイトルは『Savage City(残虐な街)』または『Savage Seas(残酷な海)』で、まるでシン・シティのようなかなりシリアス調でバトルや冒険色もあった。
とくに後者は、海底二万里の影響がみられる。その時に、既にニックとジュディの案はあったが右往左往した。
当初の方が完成版に近い。その後、少しキャラクターが変更されたときの二名の画像はこちら。
タイトルは『Zoo(動物園)』+『Utopia(理想郷)』。
多種多様な動物たちで構成された「ズートピア」は、多民族国家である「アメリカ合衆国」の比喩となっている。
種族の異なる動物たちで成り立っている社会を舞台に、アメリカにおける人種問題や差別(レイシズム、性差別)、ステレオタイプな偏見による「決めつけ」を行うことの危険性、無知からくる誤解、政治の実情などをエンターテインメントを通して描き出し、高い評価を受けている。
すべての登場人物がいわゆる「ケモノ」として描かれていることから、ケモノ愛好者たちを瞬く間に虜にしたのはもちろん、かわいらしい見た目とシリアスな舞台設定が織り成す奥行きのある世界観でさらに多くの人々を魅了中。
キャラクターのしぐさや振る舞いは、モデルとなった動物の生態・行動学を忠実に取り込んだもので、時には思わぬギャップに驚かされることも。動物同士のサイズの違いや形態も注目すべき点であり、これは以前より、例えばドリームワークスの『カンフーパンダ』シリーズでも描かれてきた特徴である。
主役であるウサギとキツネは本来、獲物と捕食者という関係であることから、欧米では知恵比べのライバルのように扱われており、そんな二人を台頭なバディとして描いたバディ・ムービーであるという点を考えて観てみるのも面白いかもしれない。
あらすじ
かつて動物たちは弱肉強食のオキテに縛られ本能に任せて生きていた。
しかし時を経て動物たちは高度な文化と文明を手に入れ、様々な種類の動物が共存する〈楽園〉ズートピアを作り上げた。ここでは肉食動物も草食動物もみな等しい市民として受けいられている。
だがその共存の建前とは別に、実際のところはどんな種類の動物かによってこの街ではライフスタイルが決まってしまっていた。肉食動物は荒々しい仕事がふさわしいとされ、草食動物は地味な仕事が当たり前と言うように…。
ウサギとして初の警察官になったジュディもそんな理不尽な現実にぶち当たっていた。
この街では、警察官になるのはクマやカバのように、大きくてタフな動物ばかり。小さなウサギである彼女は半人前扱いで、いつも命じられるのは駐車違反の取り締まり。
しかし落ち込んでいたジュディにも、ついに本格的な捜査に参加するチャンスが到来する!
ただし、事件の解決までに与えられた時間はたったの48時間。失敗したらクビになり、「よりよい世界を作りたい」という幼い頃からの夢も消えてしまう。
頼みの綱は、事件の手がかりを握る詐欺師のキツネ、ニックだけ。
相棒と呼ぶにはあまりにチグハグな二人は、互いに騙し騙されながら、連続する行方不明事件の捜査を開始する。
だが、その事件の背後にはズートピアを狙う大きな陰謀が隠されていた……。
ズートピア
肉食動物と草食動物が共存する大都会。高度なテクノロジーで構築された文明社会である一方、そこに暮らす動物たちを縛りつけるような偏見やステレオタイプも残っている。
- 人工樹木による高温多湿の熱帯雨林を形成するレインフォレスト地区
- 壁のような降雪装置で極地の環境を作り出すツンドラ・タウン
- 装置から生じる熱を利用した砂漠のリゾート地であるサハラ・スクエア
- ズートピアの中心地であるダウンタウンのサバンナ・セントラル
- 高いフェンスで囲われたネズミたちの街であるリトル・ローデンシア
からなる複合都市。
現市長が提案したスローガン、「誰でも何にでもなれる」という理念を掲げた夢の楽園だが、このところ肉食動物ばかり行方不明になる連続失踪事件が起こっている。
「ズートピア」と「アメリカ」
上述のようにズートピアはアメリカ合衆国の内情(さらには多様な人種で構成された街・ニューヨーク)を描いているため、アメリカ人から見ると「アメリカあるある」ネタが満載となっている。
英語では「キツネのように狡賢い(sly as a fox)」という言葉があるため、キツネは信頼してはいけない動物と言われる。
これは、その人種は「全員」がそうである(例として、「アジア人=数学が得意」「黒人=歌とダンスが上手い」「日本人=真面目」「ドイツ人=勤勉」「イギリス人=紅茶が好き」など)という人種に対する決めつけ=レイシャル・プロファイリング(Racial Profiling)に通じるが、ニックが「詐欺師のキツネ」であることはこの問題の比喩にもなっている。
刑事問題
実は、(他のディズニー作品にも言えるが)ズートピアにも盗作疑惑がある。
ゲイリー・ゴールドマン(ゴールドマンはこれまでディズニー作品にも携わっている)が2000年代に企画してディズニーに売り込んだ作品も、複数の動物の種類こそ違えどやはりズートピアと呼ばれる擬人化された動物の社会を描いた作品である。
実際に裁判問題に発展したが、世界最強の弁護団の一つともいわれるディズニーの弁護団相手には敵わなかったのだろうか・・・(逆に言えば、だからこそ今まで数々の盗作疑惑問題が上がっても問題にされてこなかったかもしれない)。
登場キャラクター
ズートピアの登場人物一覧を参照のこと。
関連動画
『ズートピア』特別映像
予告編
『ズートピア』主題歌「トライ・エヴリシング」/Dream Ami PV
類似する作品
BEASTARS人間社会に置き換えた動物が登場する作品としてはよく似ている漫画・アニメ作品。