カトリックと異なり宗教において立体の像を用いることを避ける正教会では、
イコンが占める位置は大きい。信徒にとってイコンは大切な人がうつった写真のようなものであり、
それ自体は信仰の対象ではないが、極めて大切に扱われる。
基本的にイコンには作者の名前を記さない。
これは仏教における仏像に作者の銘を入れないのに似ている。
神の導きを受け入れて描かれるものとされ、作者が自分の名誉や利益のために
制作するのはイコン画家としてふさわしいとは言えない。そのため
正式なイコン画家として認められるのは敬虔な正教会信徒だけである。
イコンは宗教的に重要であるだけでなく、優れた芸術品・貴重な文化財でもあり、
ロシアでは骨董品、美術品、楽器とともに国外への持ち出しが禁じられている。
1945年以前に制作されたものを持ち出す場合、省庁からの認可が必要になる。