概要
20世紀後半、スペインその他でたびたび起こった、怪文書・怪電話事件の主。UMMOという惑星から来て地球に住んでいる宇宙人を自称していた。「王」の字に似たマークをシンボルにしていたことで有名。
後述のとおり、現在では地球人によるイタズラであったことが判明している。
90年代に、UFO研究家でもあるフランスの物理学者、ジャン=ピエール・プチ博士の本で肯定的に紹介されて注目を浴びたこともあり、スペインの事件だが、フランスのUFO研究家に人気がある。ウンモ星人は「宇宙人ユミット」と呼ばれることもあるが、「ユミット」とは個人名ではなく、UMMOという言葉をフランス語の形容詞にしたもの(ummite、「ウンモ星の・ウンモ星人」の意)で、プチ博士の本の邦題でもある。
独自の言語や物理理論まで登場する手の込みようから、UFO愛好家の間では一時期、信奉者団体が生まれるほどの人気を誇った。また、1989年の旧ソ連のUFO事件「ヴォロネジ事件」との関連も示唆された。デマと判明した現在でも強烈な印象を残す宇宙人である。
経緯
1965年頃から、スペインを中心に、「UMMO」という星から来たと自称する奇妙な人物から手紙をもらったと主張する人々が現れた。
撮影された彼らのUFOには漢字の「王」かキリル文字の「Ж」(ジェー)に似たマークがでかでかとあしらわれている。
このマークはウンモ星人から送られたという数千にものぼる手紙にも記されていた。
手紙を書くだけでなく電話をかけてくることもあったらしい(いきなりかけてきて、長時間宇宙の真理などを一方的にまくし立て、一方的に切るというかなり迷惑な遣り方ではある)。
しかもご丁寧に、手紙をもらったと主張する人々が会合を開こうとしたら、わざわざそこの電話番号を調べて、会合を中止するようお願いの電話すらかけてきた。
しかし・・・
ウンモ星人からの手紙に記された、彼らの故郷であるUMMOという星のこと、遥かに進んでいるはずの科学技術についての記載を検証すると、内容がデタラメであることが明らかになってしまう。
1967年6月1日にマドリッド郊外のサンホセで撮影されたとされるUFOの写真も、大勢の人が目撃したという割にその人々が写りこんでいる写真が一枚もなく、シチュエーションにも不自然さが指摘されていた。
この写真をアメリカのUFO研究団体“GSW”がコンピューターで解析した結果、UFOを吊るす糸が見つかってしまった。
ちなみにこの時、UMMO星人は予め手紙で伝えた通り、撮影現場から4kmほど離れた場所に一旦着陸していずこかへと飛び立っていった。
しかし、自分たちの正体を知られたくないと言う理由で、手紙をもらったと主張する人々が開く会合をわざわざ電話をかけてまで中止させるほどの用心深さを見せる割には、大勢の人の目に触れそうな場所を飛行し、しかも予め手紙で伝えた通りに着陸してみせるなど行動に整合性が取れていない。
ロシアでの目撃例(?)
1989年9月21日〜10月2日に、ゴルバチョフ政権下の旧ソビエト連邦のヴォロネジ市で、UFO・宇宙人を目撃したという人々が現れ、同国TASS通信がこれを報じた(ヴォロネジ事件)。
この事件は西欧の「ウンモ星人」事件とは直接関係がないが、この時目撃されたとされるUFOに、キリル文字の「Ж」に似たマークがあしらわれているという符合がみられた。
が、こちらは目撃者が少なくとも37人もいるにもかかわらず、写真がなくイラストがあるだけで、しかも目撃された円盤の形状や宇宙人の容姿も人によってまちまちである。
当時はヴォロネジ事件だけでなく、UFO目撃談が旧ソビエトにおいて頻発していただけでなく、目撃談に統一性がないことなどから、国民の不満を逸らすため、もしくは当時のソビエトで行われていた情報公開(グラスノスチ)の先進性をアピールするためのデッチ上げと見る向きもある。
ただし、上記の「ウンモ星人のマーク」の符合は、依然として情報規制の厳しかった当時のソ連の人々が西欧のUFOニュースを見て真似した可能性が低いことから、懐疑派を含む多くの研究家の興味を惹いた。
食玩シリーズ「宇宙大作戦チョコベーダー」など、宇宙人図鑑的な商品には、ツナギのような服をきたずんぐりした三つ目の宇宙人が「ウンモ星人」として登場することがある。Pixivでもこのデザインが人気である。この図像はヴォロネジ事件の目撃情報をもとにしたものであり、怪文書事件の「ウンモ星人」ではない(ウンモ星人の手紙によると、彼らは地球人に化けて人間社会に潜伏しているが、本来は3メートル程の昆虫型宇宙人らしい)。
ナムコのアーケードゲーム「宇宙大作戦チョコベーダー CONTACTEE」では全てのミニゲームをパーフェクトにクリアし最後のボーナスゲームもノーミスクリアすると、評価の上限が解除され達成度が100%を超えた真のスコアが表示される。
そしてウンモ星人はミニゲームに出演するのみならず、人間離れしたプレイヤーを銀河連邦の代表として「地球に不法滞在している宇宙人」と見なし強制退去勧告を出す場面で出てくる。
でも、強制と言う割には「ジキニ キミヲ ムカエニ イク… ソウ…コンヤアタリニネ…」とかなり寛容。そしてこの発言だけカタコト。それまでは流暢に喋れてたのに。
犯人
身も蓋もない話だが、ウンモ星人の正体は割れている。
手紙を研究しているグループのメンバーであるホセ・ルイス・ホルダン・ペニャ(José Luis Jordán Peña)である。
彼の描くイラストはウンモ星人の手紙にあったイラストとそっくりであるだけでなく、UFO写真もアマチュア写真家でもある彼が偽造したものであった。
前述のアーケードゲームの「宇宙大作戦チョコベーダー CONTACTEE」の評価シーンに於いても
「嘘はいつかバレるもの…覚悟したまえ!」とこの真相を知っているとなかなか自虐的なセリフがある。