概要
「お前の肋骨見せてみィ! スペアリブゥゥゥッ!」
「豚足もろたぁ!!」
「小峠、親っさんのいうことは絶対。そう教わったんじゃねぇのか」
『ヒューマンバグ大学』のシリーズ作品『アラサー中堅極道・小峠華太』に登場する極道の一人。初登場は2021年11月2日付の動画『【漫画】狂人極道…アーミーナイフ小林の戦闘力。拳銃も特殊部隊レベル。』である。
小峠華太の所属する武闘派極道「天羽組」に、ある日突如として組長の天羽により迎え入れられた老齢の極道。小峠は彼の世話係にあたる。
一見すると、うだつの上がらない老人という容貌に見えなくないが、元々は今は亡き暴力団「徳島組」に所属していた武闘派の極道であった。そして、組長である天羽とは同い年の同僚である他、お互いにシノギを削る関係にあった。しかし、ある時何らかのヘマをやらかして警察に捕まり、38年もの間刑務所へと閉じ込められていた。
組内では、シマ(縄張り)の見回り等の基本的な業務を教えられているが…?
人物
容姿
灰色の短髪(若い頃は黒色のオールバック)と茶色いスーツ(若い頃と現在で共通)が特徴である。
また、若い頃は武闘派なだけにそれなりに良い体格を誇っていたが、出所後は極道という生きがいを失った為か、覇気の抜けた様な窶れた印象となっている。
性格
徳島組に所属していた頃は、忠義心に熱く荒々しい性格であった。そして抗争の際には、自前の長ドスで豚を捌くように人間を解体する、という現在の天羽組の武闘派兄貴達に勝るとも劣らない狂人振りも持ち合わせていた。
しかし、38年間もの刑務所生活を経てからは極道という生きがいを失った為か、すっかり覇気を失い物静かな性格となり、業務においても足を引っ張ってしまう部分が有った(これは、全てが管理された刑務所生活が生む「ムショぼけ」によってこうなったと考えられる)。それでも、小峠に極道の生き方を改めて説いたり、大敵に闘志を燃やす等、極道としての信念は失われていない。
能力
極道として現役であった頃は長ドスの使い手であり、勢い良く敵の胸を斬り裂いたり、敵の両足部分を一瞬で斬り落とす等、卓越した技術を持っていた。
年老いた現在のカチコミにおいては、拳銃を用いて相手を迎え撃つ。しかし、若手の組員よりは能力的に衰えてしまった為か、普段の業務や敵との抗争において、結果的に足を引っ張ってしまう部分も少なくない。
それでも、ここぞという場面においては全盛期の頃の覇気を放ちながら、死地へと赴く事が出来る胆力を持ち合わせている。
活躍
元々は、今は亡き暴力団「徳島組」の一員であり、組織の忠実なる一員として敵対者の排除を初めとする仕事を行っていた。そして、抗争では豚を捌くように人間を解体できる狂人振りを見せていた事から、裏社会では名前の知れた極道であった。
しかし、ある日の活動で下手を打った為か、警察に御用となってしまい、刑務所暮らしを強いられる事となる。38年後に漸く釈放されるも、娑婆に出た時には居場所であった徳島組は解散されており(その38年という月日の間に内部抗争が起きて組織自体が崩壊した事が判明)、身寄りのない彼は途方に暮れる事となった。
そんな折、彼は飲食店にて、嘗て同じ徳島組の一員であった天羽と再会し、彼の温情により天羽組の一員となる。そして、天羽は小峠を福留の世話係に任命する。小峠は突然の申し出に困惑するも、天羽は何時になく強い口調で「なんか文句あるか? いずれヤツは役に立つ」と彼を世話係へと決定した。
その後、小峠は福留の世話係として、ヤクザの基本的な業務であるシマの見回り等の業務を教えていたが、福留は業務において足を引っ張ってしまっていた。それに耐え兼ねた小峠が天羽にその事を伝えるも、天羽は「黙ってやれぇ小峠、いずれ分かる」とやはり強い口調で押し切った。
そんなある日、小峠は縄張りである空龍街において、極道を舐めた半グレ達が囲い屋(ホームレスに住居等を提供し、生活保護を申請させた後にその資金を奪う悪徳業者の総称)を営んでいるという情報を掴む。そして、彼らへのカチコミには、小峠とアーミーナイフの小林に加え、福留も同行する事となる。小峠自身は福留の同行に乗り気では無かったものの、天羽の命令により仕方無く連れて行くこととなった。
福留は拳銃を携えてカチコミへと向かうが、不意を突かれたのか半グレの一人に人質とされてしまう。しかし、小林の特殊部隊並みの射撃術によりその半グレは倒された為、何とか一命を取り留めた。
囲い屋との抗争は小林の一方的な殺戮により呆気無く片付いたものの、構成員の半グレが死に際に放った一言により、彼らのバックには新進気鋭の暴力団「山岡組」が付いている事が明らかになった。
老兵の真の役割(ネタバレ注意)
カチコミを終えて組事務所へと戻った小峠一行は、早速組長である天羽から山岡組への襲撃の許可を得ようとする。しかし、天羽からは「今の山岡組は手強い。お前ら主力に万が一のことがあれば、組は崩壊する。」と襲撃を取り下げられた。そして、彼は襲撃の代わりにヒットマン、すなわち鉄砲玉を用意すると言った。
鉄砲玉は、敵対する者の命を捨て身で奪う役柄であり、実行者は必然的に刑務所へと入る事となる。そして、法が厳罰化された現代で特攻を仕掛けようものなら、確実に無期懲役と成り得る。只でさえ少ない天羽組の若い組員が減ると死活問題になる、と小峠は鉄砲玉に異を唱えるも、天羽はそのリスクを理解していた。彼は焦る小峠を制すると、声色を変えて呟いた。
天羽「福留…お前、いけるな」
小峠「…え?」
福留「……おう」
何と天羽は、福留に鉄砲玉の任務を一任したのであった。
天羽が福留を組に誘い入れた本当の理由は、彼を「鉄砲玉」として起用する為であった。
天羽組にとっては、山岡組の組長を殺せば彼らへの大打撃に繋がり得となる。しかし、福留は鉄砲玉の役目を終えれば間違いなく刑務所へと送られ、そこで一生を終える事となる。
小峠は福留の身を案じ説得を試みるも、彼自身は
「小峠、親っさんのいうことは絶対。そう教わったんじゃねぇのか。俺にはもう失うものは何もねぇ。こんな老体になっても半年も俺に食わせてくれた天羽には感謝しかねぇ。最後ぐらい役に立たせてくれや」
と鉄砲玉の役目を全うする道を選んだのであった。
そして翌日、小峠と福留は山岡組が贔屓にしている中華屋の前で彼らの組長を待ち伏せていた。任務を目前にして福留は初めて殺気立った表情を見せ、「山岡の野郎…絶対に逃しはしねえ」と闘志を剥き出しにした。その顔は紛れもなく、小峠も認める本物のヤクザの顔であった。
暫くして、店から頬を赤らめた山岡組の幹部達が姿を現した時、福留は彼らの元へと走っていった…「強く生きろ、小峠。俺みたいになるな」と言葉を残して──
一気に彼らの元へと向かった福留は、「山岡ァァァ! 死に晒せえぇ!」と啖呵を切り、山岡組組長である山岡の額を一瞬で撃ち抜いた。
しかし、福留は山岡の首を討ち取った次の瞬間、たちまち他の幹部に刺殺され、その人生に終止符を打ったのであった──
この様子を見ていた小峠は、彼への申し訳無さを噛み締めつつも、静かにその場から去ったのであった…自分も何時かは組の為に心臓を捧げる瞬間が来るのかを考えながら──。
小峠
「(シマのため、組のメンツのためだ)」
「福留さん…すまない…」
「(しかし…彼の顔が脳裏から離れない。俺もこうして組のために心臓を捧げる瞬間が来るのだろうか)」
余談
- 後の2021年12月5日付の動画においては、福留と同じく年老いた極道である人食い伊能が登場している。彼は高齢である自分が組に居てもお荷物になるという理由で、所属していた組である宝華組による保護の申し出を拒否して引退し、最終的に里崎会の組員に殺害されている。シチュエーションは違えど、両者は共に老兵の極道らしい潔い最期を遂げたと言えるかも知れない。
- また京極組の天才・久我虎徹でも、2022年1月20日付の動画においては、かつては凄腕だったが、刑務所暮らしでふぬけてしまった京極組の組員である菱山が登場している。彼もまた京極組の組長である日下から半グレ組織のトップを仕留める為の鉄砲玉の役目に指名され、そして命を賭して任務を全うしたという共通点がある。
関連項目
福留親政…戦国時代に実在した人物で長宗我部元親の家臣。『荒斬りの福留』という異名を持つ勇将。人を太刀で簡単にバラバラに斬ることが得意で、高齢になっても前線で戦い続け討死したことから、福留のモデルになった人物と考えられる。