概要
「コイツは六文銭替わりだ! 迷わず成仏せぇよ!」
「この伊能、殺せるもんなら殺してみい!!」
『ヒューマンバグ大学』のシリーズ作品『天羽組の武闘派・小峠華太』に登場した極道の一人。初登場は2021年12月3日付の動画『【漫画】伝説のドス…龍王刀「紫蘭」。ヤクザ小林が…至高の領域へ。』である。
小峠華太の所属する武闘派極道「天羽組」に、ある日突如として組長の天羽により連れてこられた老極道。年齢は60過ぎで、年代的には組長の天羽よりひとつ前。
若い頃は「人食い伊能」と恐れられた伝説のヤクザであったが、老齢という現実に極道を続けることが難しいと悟って裏社会から足を洗おうとするも、所属している「宝華組」の組長はそれを許さなかった。話し合いが進まない事に困った伊能は親交のあった天羽に相談し、少しの間だけ天羽組に身を置く事となった。
人物
容姿
片方に切れ込みがある坊主頭と、口元にある黒子が特徴。服装も灰色の上着と赤色のシャツ。
一見すればくたびれた老人にしか見えない風貌であるが、若い頃は黒色のオールバックで、体格は武闘派らしくそれなりに体格は良かった。
また、幾多の抗争をくぐり抜けた証と言わんばかりに、両腕に切られたような傷跡が多く残されている。
性格
若い頃は「誰でも彼でもブッ刺した狂人」(言ったのは天羽組で一番の狂人であったが)、「狂気の殺戮者」と形容される通り、雨の日に歌を口ずさみながら敵幹部を仕留めていた。また天羽も昔彼に「借り」があり、以後も宝華組と共に懇意にしていた。
老齢を迎えたのか、若い頃から想像がつかない程穏やかになり、天羽組に身柄を預かった時には若い衆の悩みを聞いてアドバイスをする等、面倒見も良い。一方で所属していた「宝華組」への忠誠心も熱く、代替りしても勤め続けていた。
深い恩義がある「宝華組」の足を引っ張らないように裏社会から足を洗おうするなど、組を思う部分を強く見せていた。
能力
若き日の彼はドスの扱いに長けており、名刀工である光圀が打った短刀「龍王刀・紫蘭」を愛用して何十人と敵組織の幹部を殺していた事から裏社会では「人食い伊能」と恐れられていた(また、カチコミする際には銃も用いている)。
何より標的を殺す時は雨の日の闇の中から現れている他、ヒットマン(鉄砲玉)として活動した時には一度も失敗することなく敵の幹部の命を奪っていたり、単身で敵対組織にカチコミを掛けて潰したという逸話もある。
そんな彼も、年老いた今では極道を続ける事ができないと度々語っており、能力的にも全盛期と比べると衰えている。
しかし伊能の名が小規模の極道組織である「宝華組」にとってかなり大きなものであり、繁華街でのシマが守られていたようだ。
活躍
数々の武勇伝を打ち立てていた彼も、寄る年波には敵わず若い頃のようにカチコミができなくなり、宝華組の組長が代替わりしたのを機に引退を申し出たが、二代目組長から強く反対されたため知人である天羽に仲裁を依頼し、一時的に天羽組に身を寄せる。
天羽組内では若手組員の相談役を買って出ており、その中で一騎当千の最強戦力にして若い頃の自分にどこか似ている小林に無限の可能性を見出すと彼に愛刀として長年を共にしていた「龍王刀・紫蘭」を譲り渡した。受け取った小林はことのほか喜んでおり、またこの場面を語った北岡隆太は、「このドスを手に入れた小林の戦力はいずれ最高の領域に達するだろう」と評価した。
「一騎当千の最強戦力。小林さんならこのドスも喜びますから…」
小林「マジで?超ラッキー、一騎当千やっててよかったー。」
一方で天羽が宝華組の二代目組長と話し合いがうまくいかず、それを見かねた伊能は宝華組からの報復を受ける事を覚悟した上で向かう事を決心した。
宝華組はもともと伊能の名声・武勲だけで威厳を保っていた小規模の組織であるため、二代目組長はその看板を惜しんで引退に反対していると思われていたが、組長から放った言葉は小峠が想像したものとは全く違っていた。
二代目「お前引退した極道がどれだけ惨めかわかってんのか!?職も何もなく国も手を差し伸べてくれない!待ってんのは野垂れ死にだけだ!!」
そう、二代目が伊能の離脱を認めなかったのは、引退した極道の現実があまりにも過酷だからであった。極道から足を洗ったとしても、暴対法により5年は所属した組の関係者と扱われる為、銀行口座や生活保護を始めとする多くの生活に必要なサービスを受けられない。そんな厳しい措置の為に現役時代に資産を蓄えた組長か大組織の幹部でない限りは、貧困者として生活の保証もなく野垂れ死ぬしかない。
おまけに、現役時代に何十人と敵組織の幹部を殺していた以上、周りから多大な恨みを買っている。そんな彼がカタギに戻れば、敵対するヤクザに殺されるのは明白であった。
二代目「組の功労者を……親父も大事にしたお前を放り出せるわけねーだろ!!」
「坊ちゃん、アタシのことを考えてくれてありがとうございます。でもね、アタシは組のお荷物になりたくはないんですよ」
二代目は伊能の老後を心配して、組の保護下で伊能が安全に余生を過ごせるよう配慮していたのであった。しかし、伊能は二代目の真意を知ってもなお組のお荷物になりたくないとする意志は変わらなかった。
なおも二代目は組の後ろ盾がなければ殺されると引き止めようとするが、伊能は「それもアタシが蒔いた種です。 男なら自分で刈り取るのが筋でしょう」と覚悟を見せた事で、最終的に二代目が折れる形で伊能の離脱を認めた。
組の為に身を引いた漢の最期、愛刀を授かった漢の怒り
それから数週間後、伊能は愛刀を小林に譲ったため丸腰の状態で歩いていたところを里崎会の梶谷と小嶋に襲われる。
梶谷「伊能!今日が命日じゃあ!」
小嶋「おどれは畳で死なさんぞ!」
その時の彼はすでに命を捨てる覚悟ができており、「やっとお迎えが来たな……」と言いながら、特に抵抗することもなくその場で刺殺された。
組の為に働き、組の為に身を引いた男の最期は、売名行為を目的とする二人組のヤクザに襲われて路地裏で野犬のように死ぬ、という因果なものであった。
後に小峠が、伊能を殺した犯人が里崎会の梶谷と小嶋である事を掴んで小林に伝えた。
しかし、伊能は天羽組の身内ではないため、本来なら天羽組が動く道理はないのだが、小林は梶谷と小嶋をたまたま殺したくなったと言いながら動き出し、小峠もたまたま彼らを粛清する予定だったと言いつつ、二人で報復に向かった。
小林「君ら、里崎会の梶谷と小嶋だな?伊能って男、殺したな……」
小嶋「誰だてめぇは!?人食い伊能のことか?」
梶谷「ハッ!あのバカジジイは丸腰だったぜ!」
小林「丸腰の人間を売名で殺したか……お前らは明日生きなくていいわ……!」
小嶋「おわああ!小林!」
梶谷「小峠もいる!」
小林「初めまして……永遠にサヨウナラ……!」
小林「お前は特別にダブルグリングリーン!この世に生きる悲しみ~」
小嶋「ギャアアア!」
小峠「下衆が!死に晒せええええ!」
梶谷「グエエエエ!」
こうして伊能を殺した梶谷と小嶋は、雨の中に現れた小林と小峠に報復されたのであった。
梶谷と小嶋の粛清が終わった後、小林は伊能の形見である紫蘭を手に問いかけた。
小林「伊能さん、襲われるのわかっててなんで俺にドスくれたんかねぇ」
小峠「……わかりません。 もう死ぬとわかってらっしゃったんでしょうか」
その後の小林は紫蘭とアーミーナイフの二刀流で数多くの敵を屠り続けており、北岡の予言は現実となった。