まあ、情けない。しっかり我慢してくださいね
奇妙な先達
おお...。貴方は...褪せ人ですね...
狭間の地に流れ着いた主人公が最初に踏む、始まりの地「リムグレイヴ」で、会話を交わすことが出来る初めての人物。まるでその来訪を予期していたかのように、最初の祝福の前に陣取り、待ち構えている。
二つ名である、微かに微笑む白面を付けており、白を基調としたその出立ちは何処か聖職の徒を思わせる。しかしその白い布地は、血飛沫が拭われることなくこびり付いている。
仮にも聖職ならば、そのような穢れを放っておくのだろうか?
怪しげな助言者
出立からして人に疑念を想起させる人物だが、その物言いは疑念をさらに掻き立てる物である。
こちらをいきなり「巫女無し」呼ばわりしてくると、慇懃な口調ながらも所々に蔑みが混じった言動で、幾つの助言と情報を教えてくれる。
目的が見えない謎めいた人物であるのだが、少なくとも此方に何かをさせたがっていることだけは確かであり、デミゴッドの一人、黄金のゴドリックに関する情報を提供した際、婉曲的な表現ながらも彼を殺せと此方を唆してくる。
彼の望み通りゴドリックを倒して戻ると、エルデンリングを攻略する上で重要な拠点である円卓の存在を仄めかし、その最奥にいる二本指なる存在に会うよう主人公に助言する。
そして主人公が円卓の一員となって戻ってくると、彼が立っていた場所には此方宛のサインが残されており、リエーニエの湖に浮かぶバラ教会まで来るように、と伝言が残されていた。
白面の伝道者
...おお、待っていましたよ、貴方
彼の言葉に従い、リエーニエの地で再び彼と再会すると、突然デミゴッドを倒し、大ルーンを得た際の感触について質問してくる。
違和感を感じたと答えると、その言葉を待っていたかのように、此方に爛れた血指と言う他の褪せ人の世界に侵入する呪具を五つ手渡してくる。
彼の言に従うのならば、この世界はエルデンリングが壊された時から、すでに狂ってしまったのだという。二本指ですらそれは例外ではなく、それ故にガタの来た老人の如き存在に義理立てする理由はない、と。
ここから彼の真意が少し見え始めてくるが、しかしここでオフライン状態だと基本的に彼との物語はここで終わることになる。
もしその先を見たいと思うのならば、オンラインに繋いで、彼から手渡された呪具で、他者の世界に侵入してみると良いだろう。
王朝の騎士
貴方にはとても、貴い血がお似合いです
計三回侵入した後、再びバラ教会を訪れると、その報せを待ちに待っていたかのように彼は自分の仕える主について語り出す。
来るべき王朝の開闢者であるその名はモーグ。力と、意志と、愛に溢れていると主を熱っぽく讃える彼は、答えは決まっているとばかりに主人公にモーグの騎士となるよう迫ってくる。
彼の言葉通り騎士になることを選択した主人公に、血の君主の宣布を手渡し、二本指の使いたる巫女の血で、宣布を赤く染めるよう言い渡してくる。
これは二本指の導きから外れる儀式であり、王朝への道その最後の試練となる。
そして試練を終え、ヴァレーの元に戻ると、彼から右手の指を差し出すように指示される。
その言葉に従い、右腕を差し出すと、彼の言う貴い血を体に注入され、晴れて王朝の一員となる証を永遠に宿すことになる。その表れは、主人公の両眼が血のように赤く染まることからも確認できる。
こうして身も心も王朝の騎士となった主人公に、彼は特別な計らいということで、純血騎士褒章を手渡してくる。
これを使えば、王モーグに謁見することが出来るのだが、騎士たちの主人であるモーグは、来るべき日に向けて伴侶と共に閨にいる。
その交わりを汚してはならず、今はただ待てと、ヴァレーは主人公に念を押してくるのだが....。
不届き者
…存分に後悔させて差し上げますよ、私の貴方
彼の忠告を聞かず、王の閨に飛ぶと、その道中の洞窟に彼の赤サインが置かれている。
そして彼の世界に侵入すると、王朝に刃向かう不忠者を排除すべく此方に襲い掛かってくる。
血にたかる肉食い蝿の呪術と、薔薇の花束を模した鋭い刃を持つメイスを駆使した「出血」異常を積極的に狙ってくる絡め手に特化したビルドであり、不用心に近づくと一気に体力が削られてしまい、また距離を取ったとしても厄介な血蝿によって無惨に食い荒らされることになる。
しかし単体としての能力は唯の褪せ人の域を出ないため、厄介ではあるが倒せない相手ではない。
彼を撃破すると、赤サインがあった場所の近くに息も絶え絶えな彼が蹲っており、自らが劣等と蔑む主人公に敗れた事実を受け入れられず、かつて交わした約束を果たしてほしいと主に懇願する。
しかし主はその願いに応えることは無いであろうことを察した彼は、最期の力を振り絞って王朝に対する愛の言葉を遺し、息絶えた。
死後爛れた血指と共に、彼の愛用の武器である「ヴァレーの花束」を残すが、血に濡れた薔薇の刃、その有様は彼の本性を端的に表している。曰く、
大袈裟に華美だが、危険極まりない
その正体
彼のお話をただ進めるだけだと、彼については意外なほどに分からないことだらけだが、しかし狭間の地に残された断片を拾っていくと、その正体について垣間見ることができる。
モーグウィン王朝にて侵入してくる闇霊「名もなき白面」は彼の元同僚であり、彼らは従軍医師と呼ばれ、戦場で傷つき倒れた兵士たちを適切に処置する医療者であった。とはいえ処置とは言葉の綾であり、実態は戦えなくなった戦士たちの始末を担当する介錯人であったらしい。
実際彼らが使った慈悲の短剣は、致命がそれほどの威力を発揮しないエルデンリングにおいてその補正が全武器で最高値であり、一撃で命を刈り取る優れた殺人者として彼らは恐れられていたことが窺える。
しかし彼らはある時、姿を消した。血の君主に攫われた彼らは、その貴い血を体に入れられたのだが、その血に耐えることは、血塗れの戦場医師である彼らですら難しく、一人また一人と命を落としていった。
そしてただ一人だけが残ったのだという。
それがヴァレーであり、選ばれた唯一人という優越感は、慇懃でありながらも劣等と見做し、周りを見下す現在の性格に結びついていったことは想像に難くない。
そんな彼が忠告を破った不届き者に敗北した挙句、床に這いつくばりながら応えぬ主に懇願する様は、哀れを通り越して、変な興奮を覚える褪せ人諸氏も少なく無いようである。
因みに彼らの装束、特にその酷薄な薄笑いの白仮面は、血の君主の呪われた血の影響を受けており、一度周囲で誰かが血を流すと、わずかに攻撃力が高まるという呪具と化している。
余談
・王朝の騎士となる上で彼から課せられる試練はどれもこれも絶妙な難しさを持っているが、特に最期の試練である宣布を巫女の血で染めるは、そもそも「巫女無し」である主人公には殺せども、相手がいないという問題が立ちはだかる。
とはいえこの問題には、別に生きている巫女でなくとも、”死体でも”構わないという少し意地の悪い回答が用意されている。
狭間の地には二人おり、一人は闇霊指爛れのヴァイクが侵入してくる「鎮めの教会」で椅子に腰掛けたまま死んでおり、もう一人は最初の目覚めの場所である「王を待つ礼拝堂」に横たわっている。「王を待つ礼拝堂」は狭間の地から隔絶された場所に存在するが、リエーニエの東にある四鐘楼から転送門を介して行くことが出来る。
勿論死体を使わずとも、生きている巫女を殺しても良いが、あまりやる価値はないと言える。
関連項目
血の君主モーグ...彼の仕える主。絶対の忠誠を捧げる。共にデカダンな雰囲気を漂わせる夢想家。
教会の刺客ヴラドー...Bloodborneに登場する血の槌を得物にした血みどろ男で、秘密を破る者を殺害する暗殺者。ヴァレーは所々で彼と共通した要素を含んでおり、その人物像の発想源になった見ることも出来る。