賓客が参りました 我らの素晴らしい王朝に!
血の君主
忌み呪い、それを更に進行させた顔付きが悪鬼その物の異形のデミゴッド。壮麗な黄金と朱の装飾に彩れた法服も相まって、さながら伝説の魔王を思わせる。
元は女王マリカと王ゴッドフレイの間に生まれた由緒正しき血筋であったが、その呪い故に地下に兄モーゴットと共に幽閉され、生きながらにして死んだように扱われた。
しかしその深き場所で彼は”姿なき母”と呼ばれる存在と邂逅し、自らの呪われた血への愛に目覚めることになった。
そして狭間の地に自らを王とする新たな王国、血と腐敗に満ちた”モーグウィン王朝”の開闢者となるべく各地で暗躍することになる。
その神出鬼没ぶりは、円卓の頭脳たるギデオンですら、その詳細な居場所を把握できておらず、場合によっては彼からの言葉で主人公は、彼の王の座を目指すことになる。
モーグウィン王朝
狭間の地の地下深くにある血と腐敗に彩られた古代遺跡。その壮麗な白亜の神殿は、仄かに朱い光に彩られている。行くために二つの方法が存在するが、オフラインであるのならば巨人達の山嶺にある聖別雪原の奥地にある血みどろの転送門から行く事になる。
王朝の各地には赤く変質した第二世代しろがね人たちが多数巡回しており、被差別階級である彼らを王国の民として受け入れるモーグの度量の広さを窺える。
しかし狭間の地からは隔絶された場所にあるため、この地に訪れる資格を得た者の中には一時の避難所兼ルーン稼ぎ場として活用する不届き者も少なくない。
血の指
彼が来るべき王朝の一員として勧誘した選りすぐりの者たち。その証としてその顔には血の君主の三叉槍の紋章が現れる。
”血の指”と言う呪具を使って、各地に現れては、伝道と称して褪せ人たちに血の洗礼を齎す。各々の質の差はあれども、皆一様に他者を殺める術に長けている者たちばかりであり、一部の有望格は”血の貴族”として取り立て、モーグは自分の法服と似せた黄金と朱の壮麗な貴族服を下賜している。
・翁
狭間の地の外、隔絶されし葦の国からやって来た剣豪。顔に被る翁面は、その通り名の由来となり、同時に彼が修羅に落ちた証でもある。
かつてはイナバ衆と呼ばれる幾人もの門弟を従えていたというが、後に出奔。その手に持つ刃が屍山血河と呼ばれるまで斬り結ぶ内に狭間の地に至った。そして血の君主と邂逅し、更なる修羅の道を与えようと約束を交わしたと言う。
その後も闘いを求めては各地に出没しており、ラダーン祭りでは協力者として呼び出すことも出来る。巨人たちの山嶺、火の頂にある安息教会で侵入され、撃破後に彼の刀、屍山血河と彼の被っていた翁面を落とす。
・カラス山の凶手
夜の空を舞う死の鳥と何らかの関係を持つ、カラス山を根城とするならず者達の一人。その出立は自らを死の猛禽と見立てる呪装である。
霧の猛禽と言う特別な技を習得しており、不用意に飛び込むと回避された挙句、跳び攻撃で体勢を崩され、怒涛の連撃を叩き込まれることになる。
登場時には、血指の狩人であるユラに侵入されており、主人公はその補助として凶手を倒すことになる。
共闘後に落とす霧の猛禽は、一時的に自分の姿を消す戦技であり、通常なら回避不能の攻撃も避けることができる。
・純紫の血指、エレオノーラ
葦の地で鍛えられた双薙刀を得物にする強力な竜騎士の一人。彼らは声を発することはなく、ただ竜の恐ろしさと美しさを求め続けたという。
鉄笠の狩人ユラが密かに思っていた女性であり、呪われた血に穢されたその刃から彼女を解放するために、彼は血の指の狩人たるを自分に課したのだと言う。
彼女を倒すと彼女の振るった双薙刀と血の君主の洗礼を回避する特別な雫、”浄血の結晶雫”を落とす。
・白面のヴァレー
薄笑いの白面をつけた男。他の血の指とは異なり、彼は荒事ではなく言葉を使って血の指へと誘う。
詳細な説明は白面のヴァレーに譲る。
血の貴族たち
モーグの法服に似せた寵愛の証を纏う者たち。その肩に輝く豪奢な肩当ては、来るべき新王朝にて貴族の印を意味する。常に血に濡れている重刺剣”血のヘリケー”を携行し、その呪われた血を分け与えるために、フードを深く被り、狭間の地の各地に現れる宣教師でもある。
・ネリウス
主人公が最初に出会うことになる血の指にして、血の貴族。
異形の刃”レドゥビア”を得物にする手練れ。かつては彼もエルデの王となるために狭間の地に訪れた褪せ人の一人であったという。
ボスとして
血の君主という名前の通り、彼は血を操るデミゴッドである。
ストーリーの本筋と外れた、いわば”裏ボス”的立場であるため、他の強ボスよりさらにえげつない攻撃を仕掛けてくる。
手に持つ燭台のような三叉槍、『モーグウィンの聖槍』を武器とし、振り下ろし、振り回し、そして突き刺しの三つの攻撃を組み合わせた近接戦闘に、頭上に出現させた魔法陣を介して姿なき母から燃える血を取り出し、その炎をこちらに放つ遠距離攻撃を合わせた、所謂祈祷戦士に近い戦い方をする。
他のストーリーボスに比べると動きはシンプルで分かりやすいが、彼の扱う血炎は、被弾すれば通常ダメージに加え、スリップダメージがオマケについてくる。被弾しなかった血炎も着弾個所に一定時間着弾点に残りダメージを与えてくるという嫌らしい性能をしている。
また血に関連してか、彼の攻撃には出血属性が付いており、舐めてかかるとゲージが溜まって一気に大ダメージを食らうことになる。
彼にも二段階目が存在し、体力が減ると「トレース」「デュオ」「ウーヌス」(これはラテン語で3・2・1の意)と唱え出し、褪せ人を囲むように輪に似た紋章が三重に浮かび上がっていく。
そして体力が半分以下になると、突然槍を空中に向けて突き刺し、「ニーヒル!」(これもラテン語で0)と歓喜と共に3度唱え出す。
これは回避不能の全画面攻撃というとんでもないもので、問答無用に即死級のダメージを受ける。しかも詠唱に合わせた分の体力を奪われ、モーグはその分の体力を回復する。そして彼の背から漆黒の翼が生え、第二段階に突入する。
この形態に変化すると、空中を飛び回るようになり、ただでさえ面倒な血炎が四方八方からこちらに向けて放たれるようになる。
動きを見切らないと集中砲火を喰らってアボンになってしまう。
ここに第二段階に移行する前の二ーヒル三唱を、聖杯瓶がぶ飲みで乗り切ってしまうと更にジリ貧の戦いを強いられることになるだろう。
とはいえ、血の君主攻略には抜け道がない訳でもなく、忌み鬼マルギットと同じように「モーグの拘束具」は彼にも、第一段階という縛りはあるものの、一時的にその行動を2回まで止めることが出来る。
他にも強制出血は、ある結晶雫を霊薬に配合することにより大幅に軽減することができる。
血の君主に苦戦を強いられている褪せ人は、まずは血の指の狩人ユラと共にカラス山の凶手に挑み、アルター高原にある第二マリカ教会に行くといい。
余談
・彼を倒して得られる戦利品『血の君主の追憶』『モーグの大ルーン』、大ルーンは兄弟、モーゴットと同じ東アルターの神授塔で力を取り戻せ、装備者には効果が無い代わりに遺灰により召喚した霊体、あるいは侵入プレイ時に入手できる「大ルーンの幻影」を使用した侵入先のモブ敵に周囲で出血が発生した時、20秒間攻撃力がアップ、敵を倒した時、プレイヤーのHPを最大HPの10%分回復する血の祝福を与える効果を持つ。
追憶は指読みにより彼の振るった大槍『モーグウィンの聖槍』か祈祷『血授』と交換できる。祈祷は彼の使った燃える血を取り出し投擲する祈祷で着弾地点にスリップダメージ床を形成する。聖槍は出血効果の付いた筋力神秘戦士向けの槍であり、戦技『血授の儀』であのニーヒル!を放て、自分中心に円範囲で壁貫通効果を持った出血衝撃波を3度まで放ち、20秒間の血炎エンチャントまでついてくる文字通りの出血大サービスである。
ニーヒル!ニーヒル!!ニーヒル!!!
・ギデオンにモーグウィン王朝の場所を伝えると「王朝復古をうそぶく誇大妄想家には相応しい穴倉」「ずっと潜み続けていればよい。そうすれば妄想は見果てぬ甘い夢のままだ」などとモーグとその王朝に対しかなり辛辣な評価を下している。
しかし忌み子として産まれながらも、自らの血を愛し、地下の奥底で自らの王朝を築き上げんと暗躍したその精神力の高さは見上げる物があるだろう。
ただ、彼の行動原理には、アイテムテキストや彼に従うヴァレーの発言を顧みるに「愛」が中心に存在するらしい。そのため、時にその行動はある種の変態性を帯びた物になっていったのは仕方がないのかもしれない。
つまり彼が弄られるのは、運命だったのだろう。
上記したラテン語でのカウントダウンと「ニーヒル!」と三度ハイテンションで繰り返す様は、一部で「催眠音声」などと呼ばれており、モーグのASMRなる謎のブームとなっている。
「ニーヒル♡ニーヒル♡ニーヒル♡」
・ゲーム本編においては、ミケラに直接関わるキャラクターは裏ボス的な扱いとなる。
モーグ以外では、ミケラの妹にして本作の看板キャラであるマレニアも本作の最強ボスでありながらも裏ボスとしての扱いとなる。この辺りの設定に関しては、いわゆるフロム脳的な考察に足を踏み入れることになるので確かな事は言えないのだが、黄金樹に並ぶ巨大な樹木である聖樹にその名を刻み、マリカとラダゴンの息子という生まれを持つミケラが、裏ストーリー的な扱いを受けているのは中々に示唆的なものを感じる要素である。
・彼はミケラを自身の伴侶にしようとしているが、ミケラは男でもあるとされ、また彼の父違いの弟である。
そのため彼はペドフィリア&近親相姦野郎扱いされ、ネットではその手のネタがわんさか登場し始めている。
だがミケラはその存在そのものが謎に包まれている。男であるのか、女であるのか判然とせず、それどころか成年でもない。
永遠に幼いこの神は、誰からも愛され、そして愛することを強いることが出来たのだという。
謂わば生ける「幻惑」。モーグが伴侶として見做したのはそういうカラクリもあったのかもしれない。
しかしミケラは劇中では、「恐ろしい」神であると度々言及されており、後に分かることだが、女王マリカの次代を継ぐに足るほどの力を生まれながらに持っていたという。
見方によっては、その能力に惹かれてからの所業だったのかもしれない。
ちなみにではあるが、彼の母にしてエルデの女王であるマリカ自身は、より業の深い、あるいは性的に最も倒錯した所業を行っているが、作中のネタバレに当たる為、当該記事を参照するか実際にゲームをクリアして見てほしい。
ただ、ミケラという血の近い存在と婚姻を結ぼうとした彼の思惑は、エルデンリングの物語のみならず我々の世界でも決して珍しいものではない。
自らの血統を維持するために、近親間で婚姻を行ったのは古今東西を問わず、所謂貴族や王族と呼ばれた者たちには等しく見られた慣習であった。一般大衆ではそれほど見られなかったものの、中には近親相姦を積極的に推奨する宗教もあったらしい。
とはいえ、そうした婚姻は基本的には互いの意向は無視されがちな側面がある。ミケラがどう思っていたのかは詳らかではないものの、モーグの呼び掛けに一切応えなかった所を見るに、どうやら彼らの契りは失敗したらしい。
それを示唆するかのようなテキストも存在する。
黒布に、豪奢な金意匠が施された
血の君主、モーグの装束
来たるべき新王朝、モーグウィンの
王にして大祭司たる者の証
あるいは、その見果てぬ妄想の証
血の君主の装束より
影の地について明らかになった真実
DLC『SHADOW OF THE ERDTREE』にて、モーグとミケラの結婚について明らかになった。
ミケラは優しい世界を作る為に、自らの持つ力や、半身、大ルーンなどの多くのものを捨て去り、新たな神になろうとしていた。そして同時に、自らを支える約束の王を迎えることを目論んでおり、その為にモーグの肉体を手に入れようとしていたのだ。
モーグの肉体を手に入れ、その亡骸に自らが選んだ約束の王の魂を入れる事で、新たな神と王を生み出す事。
それこそがミケラの目的であり、その為にモーグを誘惑し、自らを拐わせたのであった。
つまりモーグは、ミケラを力づくで連れ去った加害者ではなく、ミケラに魅了の力で徹底的に利用された被害者だったのだ。モーグウィン王朝の位置もラダーンが拠点とするケイリッド(赤獅子城)に近く、彼の思想が殆ど操られたものなのではないか?といった考察もなされるようになった。モーグの忠臣だったアンスバッハも、本来モーグは人格者であり、ミケラを誘拐した後から性格が変わったと言っている。ヴァレーのイベントの結末もこのことを知るとまた異なる見方ができるだろう。
この「肉体を奪われた」という点は本編時点で伏線が張られており、長兄ゴッドウィンは陰謀の夜の結果埋葬され、モーゴッドはゴッドフレイに抱かれて消え、ゴドリックは接ぎ木の果てに足蹴にされ、ライカードは不滅を謳い食され、マレニアは戦いの末に開花し、ラニは陰謀を巡らせ肉体を捨て去った……といった調子に主要なデミゴッドは末路がハッキリと描写されている一方、モーグに関しては兄弟であるモーゴッドのような細身な体を遺すことなく消滅している。
(他はラダーンのみアレキサンダーが一部を回収したような描写に留まる)
モーグの登場演出「枯れた腕より垂れる血の中から出現する」で死体が残らない状況も違和感が薄れており、この碌でもない犯行は悟られることなくDLCまで伏せられていた。ソウル系のゲームのボス敵は悉く撃破時に粒子のように消滅するような演出があるため、プレイヤーにも違和感を感じさせなかったこともこの犯行が誰にも悟られなかった原因だろう。
総評するとミケラに操られて愛する事を強いられてしまい、意図しない変態のレッテルを貼られてしまった人物という