概要
フロムソフトウェア製のゲームをプレイする事によって断片的な情報から背景や設定を考察、深読みする事に慣れすぎてしまい脳の構造が変化してしまう奇病…あるいは適応。
端的に言うと重度の妄想癖を罹患した状態を指す。
また、物陰や罠、NPCを異様に警戒したり過敏に索敵したりしてしまう症状の報告もある。
元来、描かれる物語の中でも多くを語らず、プレイヤーの想像力に委ねるところが大きいのがフロムソフトの作風であるが……
フロム「基礎となる重厚な世界観、そこに存在するキャラクター、数々のアイテムにフレーバーテキストを作り込みました!」
ユーザー「この含みのあるセリフは…?何故あのキャラはあんな行動を…?意味深な場所にこんなアイテムが落ちている理由は…?プレイヤーがこの敵と戦う理由とは…?」
フロム「…」
ユーザー「言葉は不要か…」
解説
フロムソフトウェア作品は、登場するNPCやメールなどのテキストが最低限の情報や出来事を語るだけであり、「詳細(事件の発端・理由・それに伴う人の感情)の考察は受け手に大きく委ねられる」というスタンスを取っているものが多い。
もちろんゲーム内でヒントと思われる物語の断片が散見されるが、公式からの返答は全く期待できない。
その為、突きつけられた事実と少ない要素を元に背景を考察するしかなく、作中で謎が一つ出てくるたびにプレイヤーは「これはどういう事だろう?」と、頭を捻る事になる。
こうした考察行為がプレイ時間・プレイ作品数に応じて習慣化。
最終的には単純に雰囲気程度の設定しか存在しない(としか思えないような)キャラクターやアイテム、BGMに効果音さえも、ゲーム内の世界観や設定、要素を用いて理論的に考察したバックボーン(それも妙にあり得そうな範囲で面白そうな物)を与えるようになる。
これが、フロム脳の症状である。
作品の雰囲気、世界観は遵守しつつも、必要以上に肥大した妄想スレスレの過度な解釈を適用することに主眼が置かれるのが特徴。
そしてその他人の十人十色な解釈、考察を出し合い「ほう、そういう考えもあるのか」と見て回る異様な楽しみ方がある。
なお、ソウル系が評価されるまでフロム製で一番人気のシリーズが『アーマード・コア』であったので「フロム脳=ACネタ」と捉えるユーザーもいたが、フロムゲー始祖の『キングスフィールド』、今やフロムの代名詞として人気を博したデモンズ以下『ソウル』シリーズはもちろん『O・TO・GI』や『RUNE』や『九怨』、『エコーナイト』等の初期マイナー作品にもフロム脳患者は存在していた。
一応AC界隈ではAC4から生まれた『コジマ脳』というほぼ同じ意味のワードがある。
公式からの反応
幸いなことに、こうした一部のファン界隈の楽しみ方は単なる独りよがりなものでもなかったようで、2024年2月のエルデンリングのDLC発表に際して行われた宮崎英高社長兼ディレクターへのインタビューでは、
「もっと親切な方がいいのでは?」という話が出たときには、最終的には「ユーザーさんを信じましょう。きっと発見してくれるし、乗り越えてくれる」という、ユーザーを信じることも大きな指針になっています。」
「このアプローチでゲームを作るのは今回が初めてじゃないですけど、作るたびに驚かされています。プレイヤーにほぼすべてを発見していただいています。ゲームをリリースして、「ユーザーさんがしっかり発見してくれるんだ」という経験を積むたびに「ユーザーを信じて大丈夫だ」という信念を強くしているというのが実際のところですね。すごいな、といつも思っています。」
「ただ、ごくわずかですけど、発見されてないものも当然あって、そういった部分がいつどのように発見されるのかな、というのを楽しみにしながら、ユーザーの考察を見て回っている部分も、ほんのちょっとあります。」(記事)
との発言が掲載された。制作側もこの「症状」を大いに歓迎してくれているようである。
フロム脳的な考察の一例
・ダークソウルに登場するキャラのソラールは太陽信仰を強く捧げる戦士であり作風に似合わぬ快活で友好的な性格が目立つだけの脇役NPCとの印象を受けやすいが、太陽の光の神でもあるグウィン一族の長子が追放されており存在記録も抹消され僅かなテキストの言及しか無いという所からソラール=記憶を消された(転生した)グウィンの長子という説が一部で囁かれていた。フロム脳らしいちょっとありえそうで面白そうな塩梅かつ真面目な部類の考察だったが、後の作品の登場でこの説はおよそ否定される事になる。
・Bloodborneでは血に酔う獣が徘徊するヤーナム市街で出会ういたいけな少女が作中後半で行方不明になり、同じ市街に居た人食い豚の体内から少女が身に着けていたとされるリボンを発見するというショッキングなイベントがある。しかし今作は素手を敵のはらわたに突っ込み引き抜く〝内蔵攻撃〟というアクションがあり、少女はリボンで拳を固め人食い豚の臓物に叩き込み撃退に成功したという説が一部で囁かれた。これはネタ(と救済の願い)に振り切った珍説ではあるが、妙に肯定材料が揃っておりこれはこれでフロム脳らしいとも言える。
近年では
「考察」というコンテンツはそれなりにメジャーな部類になってきており、漫画やアニメなどの伏線探しや展開の予想を行い披露するブログや動画が多く再生される事もある。(例として処女作キングスフィールド発売翌年放映のエヴァンゲリオンや、初代ACと同年代の漫画ワンピースは今なお考察が盛ん)
この事によりフロムソフトウェア以外の作品についても、作品内で描写されない部分についての考察、妄想が掻き立てられることを「フロム脳がうずく」などと表現する者が居る。フロム脳の概念を理解する者同士であれば非常にわかりやすい表現であるが、あくまでフロムネタであり、他作品でこの言葉を多用すると不快感を抱かれる可能性もあることに注意されたし。なのでフロムと関係無い場合は単に「考察脳」と呼ばれたりもする。
また、どちらにせよ作品外の要素(他作品や神話など)を盛り込み過ぎたり字面のインパクトを求めすぎたりと、行き過ぎれば「考察」を通り越して「二次創作」や「こじつけ」、「陰謀論」、「中二病」、「ただの妄想」等とも捉えられかねない事にも注意
注意すべき点
前述でフロムとは関係無い話題で「フロム脳」という単語を使う事に注意と書かれるが、他にも
・考察という前置きなく個人が考察した内容をさも公式設定かのように話を進める事
や…
・そもそも回収されない謎が多すぎる説明不足なゲームの内容そのもの
といった点を批判される事がある
前者は二次創作や考察が盛んなコンテンツで「○○が実は○○って設定、公式だったか妄想だったか忘れた」的な事はそこそこある事で(東方Project界隈など)単純に気を付けてもらえば良いのだが…
明らかに合っているだろう推察でも公式は答え合わせをしてくれるわけではないので(AC4の世界の延長がどう考えてもACVな事など)フロム作品のストーリーを語る上で多少の主観はどうしても入ってしまうのかもしれない
後者はそういう意見もあって仕方ない程に多くを語らない作風だが、最早25年以上続くフロムゲーの特徴として受け入れられており
その意味不明ポイントでプレイヤー同士が共感したり、考察が起こりぶっ飛んだ物はネタとして昇華されたりとこの作風が求められている部分は多分にあるだろう
同じ調子で多くを語らないSEKIROですら敵と戦う理由が明白な点で古参からは親切と評価されがちである
ただし、説明不足過ぎてゲーム攻略に支障が出る場合もあるのでフロムの非の部分もある(ダークソウル2のステージ、土の塔のギミックなど)
難易度的な意味でのフロム脳
フロム脳という言葉が使われ始めた当初はフロム特有の『ギリギリ理不尽ではない(かも)な高い難易度』に慣れてしまい、辛口な難易度のゲームでないと満足できなくなってしまった状態をフロム脳と呼ぶ事もあった。
これが深刻化すると「フロムのゲームは別に難しくはない」と完全に感覚が麻痺状態な事を言い出してしまう。
近年は両方の意味を含むという意味でもSEKIROがピックアップされた。エルデンリングもこちら寄りかもしれない。
口だけだろ!と言いたくなるが、イレギュラーという者は居るものである。
超速クリアを競うRTA界隈でソウル系ゲームはすっかり常連となっている
また、フロム作品のお約束的なトラップ系や隠し通路、いやらしい伏兵配置や裏切り等の要素にどっぷり浸かり、様々なゲームでもプレイ時に常に周囲を警戒したり行き止まりにも入念に探索を続けたりと一般的とは言い難いレベルに疑り深くなってしまう事もフロム脳と言われ現在はこちらの用途のほうが使われやすいだろうか。
考察にしろ難易度にしろ、わかる人には『脳がそういう風になってしまった』と例えるに相応しい言葉ではないだろうか。
AC6発売後には、ランクマッチに明らかなチーターが発生するも、すぐにチートの仕様に僅かな隙があることが判明したため、多くのランカーがチーターを狩るチャレンジに興じる目的でチーターを捜索し始める(もちろん通報もするが)という他のゲームではまずありえない形の盛り上がりが起こることとなった。