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ジェシカ・エドワーズの編集履歴

2022-06-28 10:25:31 バージョン

ジェシカ・エドワーズ

じぇしかえどわーず

田中芳樹原作の小説『銀河英雄伝説』の自由惑星同盟サイドのキャラクター。

声優:小山茉美/木下紗華(Die Neue These)


概要

学生時代から、ヤン・ウェンリージャン・ロベール・ラップの共通の友人であり、後にラップと婚約を果たす。ラップの戦死後は反戦運動に力を入れていた。ハイネセンスタジアムにおいて、クーデターを批判する平和集会の最中に割り込んできたクリスチアン大佐に対し、痛烈に反論した結果、逆上され銃床で殴殺されてしまう。


略歴

学生時代

ジェシカは、士官学校時代のヤンとラップとの交友を持っていた。この際ジェシカは密かにヤンに思いを馳せていたが、その気のないヤンと、情熱的なラップの態度によってその後を運命づけることになる。


ラップの殉死

ジェシカは、アスターテ会戦において婚約者であるラップに先立たれた事から、トリューニヒト国防委員長の演説中継に乱入する。トリューニヒトに対し「兵士たちに戦争を命じる、あなたはどこにいるのですか?」と質問を投げかけたのちに退場させられる。

その後、路上でタカ派の過激派グループ憂国騎士団に襲われるが、中継を見て事件を知ったヤンに助け出される。襲撃をトリューニヒトの差し金と考えたヤンは、トリューニヒトに借りを作る形でジェシカの安全を約束させた。


テルヌーゼン選挙出馬

ジェシカは反戦団体「反戦市民連合」に身を投じ、惑星テルヌーゼンの代議士選挙にジェイムズ・ソーンダイク議員を擁立する。しかしヤンがトリューニヒトへの借りを返すために、対立候補と握手したことから、ソーンダイク議員が劣勢に立たされてしまう。激怒した反戦市民連合の参加者たちはヤンを襲撃し暴力を振るうが、ジェシカがそれを制止する。ジェシカは、ヤンが仕事として対立候補の支持をしなければならない事に理解を示した。

この夜、ヤンが憂国騎士団とみられる暴漢に襲われていた反戦市民連合員のを助けた事から、二人は再び再会する。ジェシカは学生時代のヤンに対する思いを打ち明けた。

この際、反戦市民連合員たちはヤンとソーンダイク議員とが写った写真を「主戦論者に一泡吹かせるため」に利用しようとしたが、再びジェシカに制止された。

その後、ソーンダイク議員が何者かのテロによって倒れ、ジェシカが支持層を引き継ぐ形でテルヌーゼン補欠選挙に出馬した。ジェシカは、劇的なテロ によって支持率を一気に押し上げ、有効投票数の80%を獲得して当選した。テロの犯人は最後まで分からなかった。

ヤンはテロに関するのメディアの取材に対し「共和政治への冒涜であり、主戦論者のはねっ返りの仕業だろう」という旨の意見を述べている。しかしジェシカ圧勝の報道を見た際のヤンは、ドワイト・グリーンヒル統合作戦本部次長との会話で、誰の差し金かを訝しがっている。

ジェシカの善戦の一方で、無茶な侵攻に反対した理性的な政治家として市民に支持されたのはヨブ・トリューニヒトだった。


スタジアムの虐殺

有権者がトリューニヒトなどを支持する状況に不満を抱き、このままで政治が腐敗してしまうのではないかと危惧した軍人たちが「救国軍事会議」を名乗り武装発起し軍事政権を立ち上げる。その際、ジェシカ・エドワーズら野党議員の呼びかけで、ハイネセンスタジアムにおいて平和と自由を回復する市民集会が開催される。参加者は20万人を超え、暴力によって社会を統制するクーデターを糾弾した。

救国軍事会議の首班ドワイト・グリーンヒル大将(査閲部長)は、集会を解散させるために向かったクリスチアン大佐に「くれぐれも穏便に」と念を押している。しかし会場に向かった大佐は、武器無き平和を否定し、「死ぬ覚悟もないのにデカい口をききやがって!」と叫び、クーデターを糾弾する市民を殴りつけた。命を賭して政治を正そうとする自負に基づくクリスチアンの発言に対して、ジェシカは痛烈な批判を投げかけた。


「死ぬ覚悟があればどんなひどい事をやってもいいと言うの? 信念さえあればどんなひどい事もどんな愚かなこともやっていいと言うの? 暴力によって、自ら信じる正義を他人に強制する人間は後を絶たないわ。銀河帝国を作ったルドルフも。そして大佐、あなたも!」


この反論に激怒したクリスチアン大佐は観衆の前にも関わらず、銃床を使ってジェシカの顔を何度も殴打、殴殺してしまう。これを機に、民衆は不満を爆発させ、世にいうスタジアムの虐殺が展開することとなる。


後にヤン・ウェンリーはこうした"信念"について考えを述べている。

「固い信念なんてもんはかえって信用おけんね。だいたい戦争なんてものは固い信念を持った者同士が起こすんだから」 - ヤン・ウェンリー


エドワーズ委員会

彼女の死後、反戦派の人々がジェシカの名を拝した民間団体「エドワーズ委員会」を結成する。

その中で彼らは、政界・財界・官界の人物の子息が徴兵適齢期にもかかわらず、軍隊に入ったのは15%、前線に送り込まれたのは1%以下であることを指摘した。表では戦争を賛美し、庶民を戦線に送り込みながら、政治家たちは特権を利用して徴兵逃れをしている事が明らかになったのだ。

委員会はこの質問状をトリューニヒト政権に正すが、政権は無視するばかりか、何とあらゆるジャーナリズムでこの事を取り上げなかった。

委員会は街頭活動とデモで訴えようとするが、集会を許可されたのにも関わらず警官隊が来て規制し、参加者は裏通りに向かうが、そこに憂国騎士団が現れ女子供関係なく次々と殴り倒される。さらに警官隊はその憂国騎士団の行為を黙認したばかりか、負傷した委員会のメンバーを「会員同士の内紛による騒乱罪」で逮捕した。そしてマスメディアは警官隊の発表通りに報道したのである。この事件はトリューニヒトが政府と軍部とジャーナリズムを完全支配した事を意味するのだ。

その後のエドワーズ委員会に関しては不明である。なお旧アニメ版では、帝国のハイネセン掌握後の一シーンにて、悲劇が起こったハイネセンスタジアムの前にジェシカの巨大銅像が建てられていた。その事から委員会の会員たちが生き延び、彼女の偉業を伝えるため建てたものと思われる。

ただその後、銀河帝国皇帝ラインハルト・フォン・ローエングラムが「アーレ・ハイネセンの巨大銅像の撤去」を指示した事から(同時に自らの銅像の建造も10年間禁止した)彼女の銅像も後に撤去されたのかもしれない。


「あなたは今どこにいますか?」

「私は権力を持った人たちに常に問いかけていきたいのです。兵士たちを死地に送り込んであなたたちはどこで何をしているのかと?」 - ジェシカ・エドワーズ


この言葉は死地に赴く兵士やその家族の立場から、戦闘を指示する政治家を批判したものである。自らを死地に置かない人間に戦争を行う資格はないとしたもの。

平和主義的な立場から発せられた思想ではあるが、しかし作中でこの思想を実践したのは、時に私的な感情から戦争を仕掛ける専制君主ラインハルトや、ジェシカを殺害した救国軍事会議であった。


そもそも、民主主義における軍とは「文民統制(シビリアン・コントロール)」が原則であり、軍事力と政治権力の剥離は基本中の基本である。

(「政治家が戦場に出るべきではない」と言うより「戦場に出る者は政治家になるべきではない」と言うのが正しいが)

それを考えればジェシカの主張は、民主主義の基本原則に反した、的はずれな批判と言わざるを得ない。

実際、ジェシカが厚い信頼を寄せていたヤン・ウェンリーでさえ、自らが政治権力を手にすることはついになかった。


にも関わらずジェシカの主張が評価され、一定の支持を得たのは、腐敗した同盟政府への反動勢力であったため、と言う面が大きいだろう。

劇中において、同盟政府の政治家は自分が戦場に出ないのを良い事に、軍を無謀な戦争に駆り立てると言う、文民統制を悪用するような政治を行っていた。

これを批判する上で政治家の特権を突くのは、民衆に訴えるには有効だった事だろう。

また、「政治に恋人を犠牲にされた美しい女性が、恋人の仇を取る」と言うドラマチックな展開が心に響きやすかった、と言うのも想像に難くない。


ジェシカは後に救国軍事会議に対し「死ぬ覚悟さえあればどんなひどい事をやってもいいの?」と述べているが、その救国軍事会議こそが彼女の望んだ「兵士とともに死地に身を置く政府」である。

もちろん救国軍事会議の行いは批判されてしかるべき物であり、ジェシカにとって受け入れがたいのは当然だが、そのためにこれまでの主張と正反対の言葉を口にせざるを得なくなった彼女の言葉に、すでに事態を変える力などなかった。

そうして彼女は殴殺され、死後に志を受け継いだエドワーズ委員会もトリューニヒトの弾圧に屈してしまったのである。


いくらマスメディアの情報統制があろうとも、それだけではネットワークの発達した時代において、そう簡単に情報をもみ消せる筈がない。

その状況下でもエドワーズ委員会があっさりと力を失ったのは、トリューニヒトが政権を掌握して情報統制力を強めた、と言うのも有るだろうが、民衆がもはやエドワーズ委員会を支持していなかった、彼らの政治活動に興味を示さなかった、と言う事の証左でもあろう。


恐らくジェシカ本人の思想の根底にあるのは「そもそも死地を作り出すような政治を行うな」という外交努力による紛争の回避であり、その意味としては彼女の「死ぬ覚悟さえあればどんなひどい事をやってもいいのか」という主張がある程度の正当性を持っているのは確かである。

彼女にとって不運なのは、そういった彼女の政治的思想を発揮できる政治的土壌が既に腐敗しきっていた事にあると言える。彼女が一時的にとはいえ得た支持は、本当の意味での市民多数の「平和を目指す政治」への関心ではなかったのだ。

この事については後にビュコック提督が「民主政治の制度は間違っていない。問題は制度と、それを支える精神とが乖離している事」、「市民ですら政治を一部の政治業者に委ね、それに参加しようとしなかった。」と語っているように、既に同盟の政治家は民衆からの意思を受けて国を運営する、導くという本来の目的から乖離し、政治を行うという仕事をして給料をもらうだけの業者に成り下がり、同盟の民衆は業者に政治という仕事を委託し、政治への関心も、政治へ参加する気も無くなっていた。これこそが彼女の理想が実現しえなかった理由なのである。

ヤンが政治権力を握らなかったのは、民主政治の腐敗は民衆によってこそ是正されるべきであるという民主政治の根本的部分の改善、つまり同盟市民の「自分は自由惑星同盟の政治を担っている」という個人レベルでの意識改革が必要であり、それは民衆によって行われなければならない(ましてや軍人がそれを先導してはならない)、という思想がヤンの根本だったからこそである。

ある意味、ジェシカとジェシカの理想は同盟市民にこそ殺されたと言えなくもない。


フレデリカはイゼルローン共和政府代表になった後に「ジェシカ・エドワーズ女史が生きていらしたら、いいお友達になれたかもしれないわね」と述べている。

ジェシカとヤンの思想の行き違いが、結果としてイゼルローンの政治代表となったフレデリカ・グリーンヒル・ヤン夫人を助ける事になるのは、ジェシカの女としての奇運であろう。


関連タグ

銀河英雄伝説 自由惑星同盟 ジャン・ロベール・ラップ

ヤン・ウェンリー ヨブ・トリューニヒト

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