概要
2012年に導入された制度である。これを保有していないと、たとえトップチームの競技成績が良くてもJリーグに参入出来ないことになっている。
クラブライセンス制度の発端はドイツサッカー界であり、それがUFEA→FIFA→AFCと波及していき、遂にはJリーグでも同制度を導入することになった。ACL出場において必要不可欠となったためである。一方、折しもJリーグでは、Jリーグに居るのに経営危機に瀕するクラブがいくつか出たこともあり(※どんなクラブがあったかは書くと長くなるので省略しておく)、そういうのを喰い止めるためにもこの制度の導入タイミングはある種の渡りに船とも言える。
当初は厳しい内容であったが、各クラブの事情と摺り合わせた結果、現在は比較的緩くなっている。それでもJ1やJ2に居るためのライセンスを取れないJリーグ在籍クラブは普通に居るので、取得までの過程が厳しいことには変わりない。
なお、JFLクラブについてもJリーグ参入を目指すクラブ限定でJ3ライセンスのみ付与される対象となっている。
審査の流れ(2023年現在)
審査内容
競技/施設/人事体制及び組織運営/法務/財務の5分野に分かれており、これらを項目にすると、クリアすべきものが56項目もある。そしてこの56項目は3つの等級基準に区分される。
- A等級基準 - ライセンス交付のために無条件に必須とされる基準であり、これが最多で44項目もある。
- 「多すぎるー!やめてくんろー!(懇願)」と思うJリーグファンも居るだろうが、寧ろビジネスでもある以上、この多さは普通だと捉えたほうがいい。というか『健全な経営をしつつ最高峰で戦いたいならこのぐらいの量は対処しないといけない』という現実を突きつけられているのである。まぁ、実務に当たる各クラブのスタッフからしたら血反吐モノかもしれないが。
- B等級基準 - 達成しなかった場合に処分が科せられた上でライセンスが交付される基準であり、3項目のみ。
- C等級基準 - 必須ではないが推奨される基準であり、B等級と比較して9項目もある。
各基準の内容と値する等級
3つのライセンスの内、J3ライセンスだけは内容が異なる部分があるので、そこを含めた解説する。(簡潔に書くので、詳細を知りたい人は元ソースなりWikipediaなりを観ること。)
競技基準
- J1及びJ2
- 育成組織チーム(U-18/U-15/U-12/U-10)を保有していること。【A】
- これはクラブ直営でなくても関連法人が運営している場合もOKである。
- 女子チームを保有していること。【C】
- 保有しなくてもいいのは、まず、第1種区分のサテライトチームや女子区分のチームの保有自体がお金がかかりすぎる為で、故に持っててへっちゃらなJリーグクラブは極端に少ないためでもある。
- 育成組織チーム(U-18/U-15/U-12/U-10)を保有していること。【A】
- J3
- 育成組織のチームは最低でも1つ以上は保有すること。
施設基準
- J1及びJ2
- ホームスタジアムの収容人数はJ1は15000人以上、J2は10000人となっていること。【A】
- ホームスタジアムの観客数1000名あたり、洋式トイレ5台以上、男性用小便器8台以上を備えていること。【B】
- ちょっと難しいところだが、実際のところはトイレの数については、本来の規定数を充足していなくても、「収容人員数の60%」を実態の観客動員数と見なし、これを母数とした場合に基準を満たしていればOKとなる。
- スタジアムに観客席の3分の1以上を覆う屋根を備えること。【B】
- スタジアムに観客席の全てを覆う屋根を備えること。【C】
- 「いやこっちはA等級だろ」とツッコんだ人は多いかもしれない。
- クラブが年間を通じて使用できる天然芝、ハイブリッド芝もしくは人工芝のピッチ1面・屋内トレーニング施設・クラブハウス・メディカルルームがあること。【A】
- なお、J1ライセンス取得に関しては、専用もしくは優先的に使用できる天然芝もしくはハイブリッド芝のピッチ1面と、隣接するクラブハウスや観覧エリアがあることが必要条件となることが明らかになっている。これを逆手に取って飲食店やグッズ販売店を併設して、ファンの来訪をしやすくしているクラブもある。取り敢えず、国内最高峰リーグに属するクラブの練習施設に人工芝は許されないのである。
- 年間を通じてアカデミーのトレーニングに利用できる天然芝もしくは人工芝のピッチ1面・屋内トレーニング施設・クラブハウス・メディカルルームがあること。【A】
- J3
- ホームスタジアムの収容人数は5000人。なお、芝生席がカウント対象外であるJ1及びJ2と異なり、Jリーグが安全性について審査を行い問題がないと判断された場合に限り芝生席もカウント対象となる。ただし、メインスタンドに関しては必ず座席にしないといけない。
- ホームスタジアムの照明の明るさは1500ルクス以上の照度を持つこと。
人事体制及び組織運営基準
- 指定された資格を保有する財務担当・運営担当・セキュリティ担当・広報担当・事業担当・マーケティング担当を置くこと。【A】
- 指定された資格を保有するトップチームの監督及びコーチ、アカデミーのダイレクター及び監督及びコーチ、メディカルのドクター及びスタッフを置くこと。【A】
- 上記2つについてだが、一部の資格についてはクラブライセンス事務局から「適性証」が発行される。これには特定の適性証を付与されるための提出書類が存在する。
- 専任もしくは外部の顧問弁護士(リーガルアドバイザー)を置くこと。【B】
- 指定された資格を保有するテクニカルダイレクター、トップチームのGKコーチ・フィジカルコーチを置くこと。【B】
法務基準
- 同じ競技会に出場している他クラブの経営等への関与を行わないこと。【A】
財務基準
- 年次財務諸表(監査済み)を提出し、Jリーグの審査を受けること。【A】
- その際、3期連続の当期純損失(つまり赤字)を計上していないこと及び債務超過でないことが必須条件となる。
- J1及びJ2に関しては、3期以上連続の当期純損失(赤字)を計上しても、「前年度の赤字額が純資産額を上回っていないこと」を満たせば財務基準を満たすと判断される。これはクラブに財務体力に応じた投資を促すことが狙いである。
- その際、3期連続の当期純損失(つまり赤字)を計上していないこと及び債務超過でないことが必須条件となる。
- 移籍金や給与の未払いが生じていないこと。【A】
- Jリーグに限らず、日本のリーグ構成における上位カテゴリへの参入にはこれが出来て当たり前であってほしいのである。競技面にしか興味のJリーグファン的には経営面なんてどうでもいい故にライセンス制度の存在に反発する者も中には居るが(※"競技成績は良いんだから昇格させろー!"などの意見(というか抗議内容)が実際にJリーグファンからは挙がっていた)、直下のカテゴリであるJFLにおいてはそれをやらかしたJリーグ参入を目指すクラブがあるので、そういう事例も踏まえた上で競技面だけで参入を許すわけにはいかないのである。