概要
ツインスター・サイクロン・ランナウェイは、ハヤカワ文庫より刊行されているSF小説シリーズ。キャッチフレーズは「ガス惑星巨大ロケット漁業百合」。著者は天冥の標などで知られるSF作家の小川一水。既刊2巻。
初出は2019年6月に刊行された百合SFアンソロジー『アステリズムに花束を』(早川書房)に掲載された同名の短編小説で、この短編版に加筆修正のうえ書籍化したものが長編版として2020年3月に刊行された。
2022年2月に続刊となる『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2』が刊行された。また、このほかSFマガジン2022年8月号と10月号に前後編の短編として「ツインスター・アピアロンザ・プラネット」が掲載されている。
物語としては、そのキャッチフレーズの表す通り、遠未来のガス惑星を舞台に巨大な可変式ロケットを用いて宇宙漁業に携わる二人の女性主人公の活躍を描く、百合SF作品である。
あらすじ
人類が宇宙へ広がってから6000年。
辺境の巨大ガス惑星では、都市型宇宙船に住む周回者(サークス)たちが、大気を泳ぐ昏魚(ベッシュ)を捕えて暮らしていた。男女の夫婦者が漁をすると定められた社会で振られてばかりだった漁師のテラは、謎の家出少女ダイオードと出逢い、異例の女性ペアで強力な礎柱船(ピラーボート)に乗り組む。体格も性格も正反対のふたりは、誰も予想しなかった漁獲をあげることに――。日本SF大賞『天冥の標』作者が贈る、新たな宇宙の物語!
(単行本第1巻裏表紙内容紹介より引用)
主な登場人物
テラ(テラ・テルテ)
主人公の一人。24歳の女性。本名テラ・インターコンチネンタル・エンデヴァ。
礎柱船の運航においては、全質量可変粘土で出来た宇宙船の船体を精神連結を通じて変形・成形(「精神脱圧(デコンプレッション)」)させ、また昏魚漁のための巨大な網を生成する役目である「デコンパ」を務める。
巨大ガス惑星ファット・ビーチ・ボール(FBB)を周回する宇宙移民集団の氏族の一つ「エンデヴァ氏」の漁師の家に生まれ、両親を亡くしたあと遺産のほとんどが「全質量可換粘土(AMC)」で構成された宇宙漁船「礎柱船(ピラーボート)」を譲り受ける。
しかし、一隻の礎柱船は必ず男女一組の夫婦で操縦しなければならないという船団の因習のために、あらゆる状況や昏魚に対応可能な高い技量を持ちながらも、操縦作業が苦手な事もあり配偶者の居ないテラは長いこと漁に出ることが出来ないでいた。そんな時に偶然ダイオードと出会うことになる。
とても背丈が高く、また空想家で夢想好きな性格から「作り話(テル・テール)のテラ」という不名誉なあだ名を持つ。
ダイオード(ダイ、DIE-Over-Dose)
もう一人の主人公。18歳の少女。ダイオードは通名。
女性としては珍しい「舵取り(ツイスタ)」、すなわち礎柱船の操縦や船体推力の制御を担う役目を務める。
技量はテラの見立てによると「あるときは驚くほど暴れんぼうで、あるときは異様なほど慎重」(1巻75頁)「いまだかつて見たこともないほど貪欲でハイレスポンスでぶっ飛んでいて」「異次元の技量」(同上78頁)。
船団の別の氏族である「ゲンドー氏」の氏族船から訳あって家出してきた。テラの漁をたまたま見掛けてその「網」打ちの見事さにほれ込み、一緒に漁をしたいとテラのもとを訪れる。
銀髪で青い瞳を持ち、人形のような佇まいをした小柄な人物。
書誌情報
早川書房〈ハヤカワ文庫JA〉、既刊2巻(2023年1月10日現在)。
- 『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』(2020年3月18日刊行)
- 『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2』(2022年2月16日刊行)
関連イラスト
関連項目
小説 SF小説 ハヤカワ文庫 百合 遠未来 漁業 SF 宇宙
望月けい...装画を担当。