解説
1.牛について
ウシ目の動物の内、ウシ科ウシ属に分類される動物、更に狭義にはその中でもアジアやヨーロッパなどに分布していた野生種(オーロックス)から改良されて作られた家畜。現在オーロックスは絶滅し、家畜種だけが現存する(再野生化している個体群なども多少はいるが、再野生化個体が世界各地で跋扈する豚に比べると極めて少ない)。
楔型の体型、短いが頑丈なツノ、毛の無い鼻面(生物学的には「鼻鏡(びきょう)と呼ぶ)、上顎に歯が無い事などが特徴。全て植物食(草食)。
家畜としては、ヨーロッパ系の品種とアジア系の品種(インド牛、ゼブ)の二系統に大別される。古くから乳用・肉用・使役用として改良され、現在はホルスタインやヘレフォード、褐毛和種などの品種が普及している。
イタリアのキアニーナは最大の種の一つでもあり最古の種の一つでもある。
飼育下での寿命は20年前後。経済動物であるため5~7年で屠殺される事が殆どだが、使役牛は比較的長く飼育される傾向がある。
普段の動きは緩慢で、基本的に温厚。ただし体格が大きいため、興奮状態になった時の突進は凄まじく、大型の肉食獣にとっても脅威となる。
社会性が強く、群れを成して助け合いながら生きている。
食べた草を第一胃から戻して再度噛む「反芻(はんすう)」という生態を持つ。胃が4つ(うち3つは食道が変化したもの)あり、細菌類・原虫類によりセルロースから糖質・たんぱく質・脂質の三大栄養素を得ている。
上顎の前歯は無く、歯茎がまな板のような歯床板に変化しており、長い舌で巻き取った草を下顎の前歯に当てて切っている。
角は雄・雌ともに生える(品種改良により無角の牛もいる)。頭蓋骨に角芯があり、その上に角鞘が被った状態で、鹿などとは違って生え変わらず一生伸び続ける。飼育されている牛は安全のため子牛のうちに切除し、さらに断面を焼き鏝で焼き潰して生えないようにされる場合が多い。
表情が読めずマヌケそうにも見えるが頭は良く、飼い主の意図を理解してくれる。
古来から肉・皮・(骨)・内臓・角と、あらゆる箇所が利用されてきた。
更に機械が発達する前は現在のトラックやトラクターのように使役にも重宝された。
肉・内蔵は食用、皮は革にして日用品、角は工芸品として利用される。
特に肉はヨーロッパ・アメリカ圏で常用され、日本でも西日本で牛肉文化が強い(牛を使役用に飼っていたのは特に西日本で多かったため。東日本では牛より馬が使役用としてメジャーだった。馬の方が牛より力は劣るが機敏に動けるため、西日本より春が遅く来る東日本では短期間で効率よく農作業を進めやすい馬の方が便利だった。明治以降、西日本では盛んだった牛飼育がそのまま牛肉文化へと発展。一方、東日本では馬よりも肥育がしやすい豚肉文化が強くなった)。
そして牛と言えば『牛乳』。
その乳汁からは多数の加工品が生成され、人間の暮らしを潤してくれている。
乳牛も、若い去勢オスと搾乳不能となった老メス(廃用牛)は食肉にされる。廃用牛の肉は「乳臭い」といわれる一方で、内臓は長年鍛えられただけあって美味になるとのこと。
なお、「赤いものに興奮する」という俗説が有名だが、本来には「ヒラヒラとたなびく物に興奮する」というのが正解。牛の目は色覚が弱く、色を判別することは難しい。
闘牛で牛が闘牛士の振る布に興奮しているのは、元々入場前から興奮状態にさせられているのと、ひらひらと動く布の動きに危機感を感じて攻撃的になっているのである。
好物は塩と鉄気のあるもので、落ちている古釘などを食べてしまうため、放牧してある牛は第一胃に磁石を入れておき、定期的に取り除いている。
2.ウシ目の動物一覧
蹄が4つの哺乳類(偶蹄類)。なお、現行の分類ではクジラも類縁だとわかったため「鯨偶蹄目」となっている。
ウシの仲間(鯨偶蹄目)
- シカ(鹿)、トナカイ、シフゾウ(四不像)
- ジャコウジカ
- アンテロープ
- キリン、オカピ
- ヒツジ(羊、未)
- ヤギ(山羊)
- カモシカ、レイヨウ、ガゼル、ヌー、オリックス
- プロングホーン
- ジャコウウシ
- ラクダ、ラマ(リャマ)、アルパカ、グアナコ、ビクーニャ
- ブタ(豚)、イノシシ(猪、亥)
- ペッカリー
- カバ
- クジラ、イルカ、シャチ