哺乳綱鯨偶蹄目ウシ科ヤギ亜科ジャコウウシ属の哺乳類。1属1種。漢字では「麝香牛」と書く。
概要
カナダの北極圏、グリーンランドに分布。嘗てはユーラシア大陸の北極圏にも分布していたが、約3,000年前に絶滅した。
夏は10頭前後の小さな群れを作り水辺や湿原で、冬は20~30頭の群れになり山の斜面や高原の雪のひさしの下で過ごす。
体長194~246cm、肩高110~150cm、体重263~650kg。
ずんぐりとした頑強な身体つきで、被毛は暗褐色で粗く長い上毛と綿のような下毛(キヴィアック)のダブルコート。雌雄共に頭頂から下へ伸び、先端が上へ湾曲する長い角を持つ。
一年の大半は雌雄混同の大きな群れを形成し、群れの主導権は妊娠中のメスが握っている。オスの間には明確なヒエラルキーが存在しており、上位のオスは下位の雄に対し、突進のフリや交尾のフリをする習性がある。しばしば下位のオスによる下剋上が発生する。
しかしながら6~7月の繁殖期に限ってはオスに主導権が移行する。オスはメスをめぐって角突き合い激しく争う。興奮したオスは眼下腺から匂いのある分泌液を出し、「麝香牛」の由来となっている。
基本的には勝者のオスが独占したメスを集めて10頭弱+子牛たちのハーレムを作り、敗北したオスはオス同士で身を寄せ合うことになる。しかしながら徹底して拒絶されるわけでもなく、危険が迫ると合流して対処する場合もある。
肉食獣に襲われると頭を外に向けた円陣を組み、子を内側に入れて守る。
草食性で、ツンドラ苔、草、木の葉などを餌とする。